イルミアの帰還
新章開幕です!
最近は何もなく落ち着いた日々が流れていた。
だからといってのんびり過ごしていたわけではなく、俺とアロマの異能についての確認などはしっかり行っていた。
俺の全身霧化には制限があるのは、ヨルムンガンドとの戦いで分かっていたので、それを細かく確認する作業を繰り返していた。
まず分かっていたことだが、霧化はどんなに頑張っても10秒維持するのが限界だ。
そして色々と確認しているうちに、徐々に霧化出来る時間が減ってきて最後には全く出来なくなってしまった。
「どうなってるんだ・・・・・・」
何度試してみても全身霧化を行うことが出来ない。
いつものように武器だけ等であれば問題なく出来た。
どういった制限に基づいてこうなっているのか分からなく、頭を悩ませていると同じく考えてくれていたフィオンが口を開いた。
「一度外に出てみないか? もしかしたら解決するかもしれない」
「どういうことだ?」
「なに、簡単な話だ。ラクリィの異能は霧に由来する異能の中でも特殊なものだ。なら霧に触れればもしかしたら解決するかもしれないだろう?」
「・・・・・・なんというか、フィオンにしては結構浅いというか普通の考えだな」
「お? 喧嘩でも売ってるのか?」
「いや・・・・・・そういうわけじゃないが・・・・・・」
「ふふ、冗談だよ。だがなラクリィ、別にいつも深く物事を考えることがいいとは限らないぞ。今は切羽詰まった状況でもないしな、試せることは浅い考えで出た事でも試してみるべきだ」
「それもそうだな。分かった行ってみることにするよ」
「そうこなくてはな。私も付いていこう」
そうしてフィオンを伴って外にやってくる。
結果からすると全身霧化出来た。
フィオンの言った通り、深く考えていた俺が間違っていたようだ。
それからせっかく外に来たということで色々と試していることにした。
分かったことは外では全身霧化が出来なるということは無いということだった。
今まではあまり気にしたことは無かったが、フィオンの言う通り俺の異能は何かこの世界の霧に由来したものなのだろうか。
流石にここまで来てしまうと到底無関係だとは思えない。
そもそも異能なのか自分でも疑問に思えてくる。
この疑問は直ぐには解けそうになかったが。
もう確認出来ることは無いとなり帰路にこうとした時だった。
「っ!?」
突然背後に殺気を感じて咄嗟に剣を振った。
その選択は正しかったようで、斬りかかられたのを受け止める形になった。
「嘘・・・・・・今に反応するんだ」
冷や汗が出たが、初撃を防げたのは大きい。
「誰だお前は!」
不意を打たれても受けとめることが出来たのは相手が女で筋力的に大きく勝っていたのが1番の理由だろう。
フィオン程ではないが小柄なので力があるタイプではないはずだ。
そこそこ長い髪を後ろで束ねており後ろに下がった時に揺れている。
顔は幼い感じだが、表情は無く感情は読み取りにくかった。
何者かは分からないが瞬時に気持ちを戦闘にシフトして剣を構える。
相手もかなり警戒しているのか剣を構えてはいるが、直ぐに斬りかかってくることはなかった。
「2人ともやめろ!」
「? フィオン?」
攻めるタイミングを伺っていると、フィオンが止めるように声を発した。
先に歩いて行っていたはずだが、戦闘音を聞いて戻ってきたようだ。
フィオンの声で相手は剣を下す。
どうやら2人は知った顔のようだが、何者なのだろうか。
「剣を下せラクリィ。こいつは仲間だ」
「仲間・・・・・・ということはミストライフのメンバーか?」
「フィオン説明」
「落ち着け、同時に来るな」
同時に話しかけてこられたフィオンは少し面倒臭そうにしている。
「こいつはラクリィ。新しいミストライフの仲間で調査班の1人だ。そしてこっちが調査班のイルミアスネ・ラフィナだ」
「あー、皆が言ってたイルミアってのは君だったのか」
調査班のメンバーで唯一会ったことのないイルミアという人物が彼女だったようだ。
「新しい仲間だったんだ。攻撃してごめんね」
「仕方がないさ。お互い怪我もなかったし気にしないでくれ」
実際拠点の入り口の近くで知らない奴がいたら俺だって警戒する。
「ん、ラクリィはいい人」
「いや、まだ断定されてもな・・・・・・、俺としては嬉しいけど」
顔に感情があまり出てこないのに加え、声にもあまり抑揚が無いので本当にそう思っているのかも分かりづらかった。
ただ俺にこういう対応をしているわけではなく、フィオンと話しているのを見ると元からこういった子なのだろうと分かる。
「まあ詳しい話は戻ってからしようか。とりあえずお帰りイルミア」
「ただいま」
元々やり残したことはなかったので、イルミアを早く休ませてあげるという理由も含めて足早に戻ることにした。