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ミストライフ  作者: VRクロエ
ミストライフ加入編
35/226

もう一つの戦い

 とりあえず分断することは容易に出来た。

 レイラはメリユースの軍人の中ではかなりの大物だ。実力に知恵と双方を兼ね備えた出来る人物という情報を持っている。サレンも戦場に出てこなくなったとはいえ、かなりの実力者だ。

 この2人を同時に相手にするなど本来は自殺行為だ。

 私には当てはまらないが。


「さて、私を倒せるかな? 自分でいうのもなんだが、強いぞ私は」

「あまり舐めるなよ? 強者とはこれまでも戦ってきた、それに数の有利というのは思っているよりも響いてくるものだ。――――――やれるなサレン」

「もちろんです。負けるわけにはいきませんから」


 私は冷静に戦力分析をする。

 パワーの面では確実に負けているだろう。こればかりは対格差もあるから仕方がない。であれば、小柄な私らしく速度を生かした捉えにくさで勝負をするところだ。

 最も警戒すべきはサレンの抜刀風迅閃だろう。あれは盾ごと貫いて来る威力がある。

 まあ、色々と考えてみたが圧倒は出来るだろう。


「それじゃあ行くぞ」


 剣はまだ抜かない。というよりも剣を抜くと、どうしても速度が若干落ちてしまう。

 私は素早く接近し、レイラの懐に潜る。剣による攻撃が来るが、そんなものよりも早く私の攻撃は到達する。

 至近距離であれば、わざわざ身を使って攻撃しなくても、地面を弄って針山を作ればいいだけだ。

 何の脈絡もない真下からの攻撃がレイラを襲う。回避など咄嗟に出来る訳がない、サレンは無数の傷を負って苦虫を噛み潰したような顔をして、後ろに下がった。


「気を付けろ、異能だ。大雑把に物の形状を変える能力と聞いている」


 おいおい、そんな適当な説明しかされていないのか。まあ、常人に理解するのは難しいかもしれないが。

 私は攻撃の手を緩めない。距離が開いたならその距離を詰め、走りながらもその上の形状を変える。


「魔法で迎撃します!」


 サレンが得意の風魔法でかまいたちを飛ばしてくるが、そんなもので足は止めない。

 ある程度の予測を立て、土壁でガードする。

 魔法と入れ替えでレイラが前に出てくる。既に私の異能の間合いを見切ったようで、1撃離脱のスタイルに切り替えている。

 それでも全てを避けられるわけではない、レイラには徐々に傷が増えていた。


「くっそ、ちょこまかと」

「小柄なのも捨てたものではないだろう?」


 距離を詰め1歩私が踏み出せば何も出来ない、ラクリィ程の反射神経があれば別だが、あんな奴はまあいない。

 そして、そろそろ出来上がる。


「さて、そろそろ私の有難い話をおとなしく聞いてもらおうか」


 私達3人を囲うように土で出来た刃のフィールドが出来上がっていた。走り回っていたのはこのためでもある。


「もう逃がさないぞ」


 私は勝ちを確信して、静かに微笑んだ。






 ――――――――――






 初め見たときは、こんな小娘が犯罪組織のトップだと驚いた。ラクリィがどうして、こんな奴についていこうと思ったのかも、申し訳ないが理解が出来ないでいた。

 しかし、戦ってみるとそんなことは頭にはなかった。


「くっそ・・・・・・」


 また傷が増える。異能者とは本当に厄介なものだ。

 ラクリィとアロマが味方でよかったと、今では心から思える。いや、ラクリィは今は若干微妙だが。

 だが、ふと思う。もしこいつに異能が無くても、自信をもって勝てると言えるのか、今よりも勝負になっているのかと。

 こいつは剣を抜いていない。何か考えがあるのかもしれないが。

 異能の間合いは読めたが、動きを捉えられない。

 サレンの魔法も先読みされたかのように防がれている。それどころか、こちらの動きを全て読まれているようにも錯覚してしまう。

 こいつは・・・・・・。

 どうやら侮っていたようだと気づくが既に遅かった。

 レイラもサレンも、フィオンに翻弄されすぎて、それ以外の狙いに気付けなかったのだ。


「さて、そろそろ私の有難い話を聞いてもらおうか」


 フィオンからの声が掛かってようやくふと気づいた、回避するためのスペースが既になくなっていることに。

 3人全員を囲うように生み出された刃。

 こいつ、ここまで考えて!?

 サレンの抜刀風迅閃であれば突破できるかもしれないが、フィオンがそんなことを容易に許すとは到底思えなかった。


「もう逃がさないぞ」


 どう考えても負け、出来ることは何もなかった。


「降参だ、これ以上は何もできん。殺す気が無いならもう勘弁してくれ」

「レイラ!?」

「ここからではどう足掻いても勝てん、諦めろサレン。それにこいつが最初から殺す気で来ていれば、私達はもう死んでいる」


 殺意は終始感じなかった。間違いでなければ殺されはしないはずだ。


「潔いいじゃないか。ではここからはゆっくり話でもするか」


 本来ならばここで話など聞きはしないが、何故だろうか聞いてみる気になった。

 レイラ自身は気付いていないが、これこそがフィオンの持つカリスマが成せる技なのだろう。

 後に、この2人がフィオンの話を聞いて起こす行動が、先の長い戦いに大きな転機を起こすことになる。


とりあえず毎日更新はこれで一旦区切らせていただきます。

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