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ミストライフ  作者: VRクロエ
ミストライフ加入編
33/226

VSアロマ2

 アロマと最後に模擬戦をしたのは、もう3年も前のことだ。勿論それだけの時間があれば、お互い成長もするし強くもなる。

 戦うものが違えど、戦場は人を強くし、心を無くさせる。

 俺とアロマはそんな環境下でもお互いの心を支えあっていたのだろう。

 初めてだった、こうして本気で戦うのは。

 だが何故だろう、こうも思う。


「なんだか、少し懐かしい感じだね」

「奇遇だ、俺も同じことを思った。まるでサレンさんに鍛えてもらっていた頃のようだ」


 話しながらもお互い斬りあっている。余裕なんて無いが、これは殺し合いではない。ちゃんと向き合わなければ。

 上段からのアロマの剣を受け止め、それを押し返し俺も剣を振るう。アロマは受け止めずに受け流すことが多いので、続けて何度も攻撃を仕掛ける。


「アロマ、俺達は何のために戦っていた」

「そんなの、人々が平和に暮らせる世界を目指してだよ! あの日だって、2人でそんな世界を目指すって」


 そう俺達は夢見た、平和な世界を。ただ考えていなかったのだ、どうすればいいのかを。本当にただの夢で、考えや行動は一切起こせなかった。

 それをしっかりと実現しようと行動に移し、そして俺に道を記してくれたのがフィオンだ。


「俺は他国の兵士と戦っていた。それで本当に俺達の目指す世界になるのか? 霧魔獣と戦い続けているだけで、本当の平和が来るのか? 違うだろ!!」

「だったら! だったらわたしはどうしたらよかったのよ!!」


 俺達の今までを全て否定するような言葉にアロマは声をあげる。

 全てが間違っていたとは思わない、真実を知らなかったのもはっきり言えば、仕方がない。だがもう少し考えることは出来たと思う。


「そもそもの原因は霧だって忘れちゃだめだ、戦っているだけでは何も変えられない」


 大口を叩いているが、俺もあまりアロマのことは言えたものではない。ただ、運のいい出会いをしただけだ。


「だったらミストライフとかいう犯罪組織のフィオンさんになんで協力するの? もし霧のことをどうにかするのなら相談してくれればわたしも全力でらっくんを手伝った! それとも、わたしじゃ力不足だった?」


 アロマはとても悲しそうに言って攻撃の速度を上げてくる。そろそろ喋ってる余裕が本格的に無くなってきそうだ。

 魔法を織り交ぜたアロマの攻撃は、昔よりも変則的で読みずらい。対人ならば俺に分があると思っていたが、相手が1人ならやはりアロマは強い。

 そして、そろそろあれがきてもおかしくないだろう。

 お互い剣の打ち合いで埒が明かず、俺は仕切り直す意味も込めて後ろに跳んだ瞬間、アロマの姿が消えた。

 モメントジャンプによるアロマの攻撃は、移動先を確認してからの迎撃ではほぼ間に合わない。

 俺は考えるよりも先に振り向いてガードした。

 多少体制を崩したが捌くだけなら何とかなる。俺は次に来る攻撃も何とか捌き、事なきを得た。


「わたしじゃ、力不足かな?」

「違う! そうは思わない」

「ミストライフは霧を廃そうとしてるのかもしれない。らっくんの話から何となく想像は出来る。でも、それなら何で国に許可を取って成そうとしないの!? 何か国にとって害のあることをしてるからでしょう!」


 アロマの言い分はある意味ではあっている。国というよりは王だが。

 いっそのこと話してしまうか? だがアロマを巻き込みたくはない。


「悪いアロマ、ここからは本気でいく」

「!? もう、あの頃に戻れないんだね・・・・・・」


 悲しそうにつぶやくアロマ。

 そんな顔をしないでくれ、俺だって悲しい気持ちはあるんだ。

 頭を振り気を引き締める。もう手加減はしない本気でいく。

 俺はこれまでで1番早く突撃する。しかしアロマならばこのくらい反応してくるだろう。


「フラッシュレイ!」


 剣で受け止めてくるかと思ったが、魔法を放ってきた。これは流石に予想外だった。

 咄嗟にブレーキを利かせ回避する。

 まだ間合ではなかったが、アロマは目の前にいた。モメントジャンプだ。

 不意は突かれたが、正面からなら捌ける。そのまま何度目かの剣の打ち合い。先程までの生ぬるいものではない、お互い殺す意思すらありそうな剣戟の嵐。

 しかし先程までと違うのはこれだけではない。俺は攻撃にソードミストも混ぜていく。

 アロマとの模擬戦でもソードミストは使ったことが無い、あまり有効だとも思えなかったからだ。

 それでもアロマは意識を割かれることが増えたため、徐々にこちらの攻撃の手数が増えている。アロマが回避を増やしたからだ。


「負けるわけには、いかない!!」


 アロマの速度がさらに上がった、これは流石に想定外だ。

 徐々に捌ききれなくなってきた。さらにモメントジャンプまで搦めてきた。

 ――――――アロマ、ここまで強く・・・・・・、だがまだ捌ける。

 モメントジャンプ後の攻撃を何とか掻い潜り、遂に決着が着きそうな1撃を放つことが出来た。


「わたしは、負けない!!」


 アロマが再び消えた。

 これは流石に焦ってしまう。モメントジャンプは1度使うと10秒は使えないはずだった。まだ、どう考えても10秒経っていない。5秒くらいだろう。

 まさか、フィオンが言っていた異能の変化か!?

 反応が遅れたせいで、回避や迎撃は間に合わない。

 後ろに現れたアロマの瞳には、涙が浮かんでいた。





4連目!!

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