元リーダー
すいません、遅くなってしまいました。
ミストライフに入ってしばらくが経ったが、まだまだ知らないことが沢山あった。
主要人物ですら、まだ会ったことのない人が数人いるらしい。
まず名前が挙がっていたイルミアという人物。俺と同じく調査班のメンバーなんだそうだが、タイミングが悪くまだ会えていない。
予定通りならもう少しで帰ってくるらしいので、焦ることはないだろう。
そしてもう1人。目の前にいるフィオンが告げた人物。
「ミストライフの元リーダー? ミストライフは最初からフィオンがリーダーじゃなかったのか? それともミストライフが出来たのは実はかなり昔とか」
「いや、ミストライフが出来たのはここ数年の話だ。その間にリーダーが変わっただけの話だよ」
「まあ無くはない話だろうけどさ。何せ現リーダーは19歳だし」
「なんだー、文句でもあるのか? ラクリィは18だろう、少しは年上を敬ったらどうだ?」
「フィオンは年上って感じしないんだよな。別に見た目がどうこうとかじゃなく」
「なんだそれ。まあいいが、それよりも早く行くぞ」
若干呆れ顔のフィオンの後についていく。
ミストライフの拠点は階層ごとに役割が違ってくる。上の方は各メンバーの部屋になっていて、そっから下に食料確保のためのエリアになっていて、最下層の方は研究施設になっている。
今向かっているのは下の方、つまりは研究施設だ。
「最初のリーダーってことはフィオンと同郷なのか?」
「そうだ。本当の初期はレホラ王国の一部の研究員から始まったんだ。私も今から会う人もレホラの研究員でな」
「そういえば直接聞いたことはなかったが、フィオンも元は研究員だったんだな」
「まあな」
てことは、フィオンと初めて会ったときに聞いたレホラ王国の研究員粛清の話は、フィオンも当事者だったんだろう。妙に達観して見えるのはこういった悲惨な経験もその理由なのかもしれない。
フィオンはその敵と対面したとき何を思ってどんな行動を取るのだろうか。復讐心に駆られるか、いずれにしろフィオンが壊れないように支えてやるのも仲間としての務めだと思った。
――――――――――
独特な匂いのする研究施設の中を抜けて1つの部屋にたどり着く。
フィオンが扉をノックしてから部屋に入る。部屋の中はかなり散らかっており、元の広さよりも狭く見える。
その中にあるベットの上に、堅牢そうな雰囲気の老婆が横になっていた。
こちらに気が付き体を起こすとベットに座る。寝ている姿に老婆という印象だったが、筋肉もまだ衰え切ってはい無さそうで、その辺の年寄りとは比べ物にならない覇気を感じる。
「やっと来たかいフィオン。そいつがラクリィだね?」
「ああ、こいつがラクリィだ。1度リレンザのと顔を合わせさせておきたくて」
リレンザと呼ばれた老婆はこちらに目を向けてじっと観察するように見てくる。
全てを見透かされているようなその瞳は、出会ったばかりに向けられたフィオンの瞳によく似ていた。
「初めまして。ミストライフのメンバーになりましたラクリィです」
「ふむ・・・・・・、良い目をしている。私はリレンザだ。元ミストライフのリーダーであり、このフィオンの育て親だ!」
「育ての親は余計だ・・・・・・」
フィオンがリレンザの言葉に少し恥ずかしそうにしている。
先程感じたこともそうだが、しぐさや、話し方などフィオンと酷似しているところが多く、育ての親だというのは間違っていないということがわかる。
「さて、フィオンは顔を合わせておきたいと言っていたが、私が会ってみたいと言うほうが正確かな。確認したいことと聞きたいこともあったというのもあるが」
「確認したいこと・・・・・・ですか」
「ああそれと、敬語はいらないぞ。別に私はお前に敬意を払われるような存在ではないし、気持ちも悪いしな」
「わかった。よろしく頼むリレンザさん」
豪快というか、人間関係で細かいことは気にし無さそうなところもフィオンとそっくりだった。
ここにきてからフィオンと話すことが多かったが、その時に他の誰かもいたりしたが、皆フィオンには心を許している様子で距離も近く感じた。
ミストライフのメンバーは色んな国の人がいて、争ったりはしないが、まだまだぎこちない感じだ。
その中でリーダーをやるには、こうした人付き合いのスキルも必要なのだろう。
「挨拶もほどほどにしてさっそく話に入ろうか。フィオンも残っててくれ、お前も聞いておいたほうがいいだろう」
「わかったよ。それで、その内容は?」
「まずはラクリィの能力についてだ。1つ心当たりがある」
「それはどういうことだ?」
「まあゆっくり説明してやるからとりあえず座れ」
言われた通り俺とフィオンは適当に置いてある椅子に座る。
この後話される内容は、俺の根幹に深く関わってくる重要な内容だった。