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ミストライフ  作者: VRクロエ
ミストライフ加入編
21/226

フィオンの本気

 攻めに出たフィオンは一言でいえば強かった。

 剣自体の腕ではこちらに分があったが、魔法を織り交ぜた変化の多い攻撃だけでもかなりの脅威だったが問題はそれだけではない。

 剣を弾き不意に来る魔法を掻い潜りながら一撃を加えようとするが、フィオンの振るった()によって距離を詰め切れない。

 若干間合いが離れたところで魔法による追撃。何とか回避するが、回避先に()()による重たい一撃が待っている。

 足だけでなく、体全体を使って無理やりに交わして体制を整える。


「本当にやりにくいな・・・・・・」


 フィオンは自身の異能を使い状況に応じて武器を変えながら戦ってくる。剣と打ち合っているつもりになっていると、唐突に槍で間合いを変えられたり、体制が崩れると戦斧に攻撃で確実に狙ってくる。

 他にも双剣や戦槌、特殊なものだと連接剣なんかも使ってくる。


 さて、どう崩したものか。


 フィオンの周り1メートルは完全に相手の土俵だ。何度か踏み込んだが地面から飛び出てきた無数の刺に串刺しにされそうになったり。地面が陥没して体制を崩されたりと、とてもではないが戦える環境ではない。

 幸いにも、俺が持っている剣は刀身が1メートルを超えているので攻撃事態は届かせることが出来る。


 どれだけ考えても俺がとれる行動は1つだった。

 全ての攻撃を掻い潜りフィオンが反応しきれない速度で攻撃を加える。


 考えるのは辞めて体全体の神経を研ぎ澄ます。

 俺からの攻撃をフィオンはまず双剣の手数で捌いて来る。

 魔法の発動は意識を一瞬でもそれに向けなければならないらしいので、そんな暇がないくらいの速度で打ち込む。


 自力と反応速度ではラクリィが勝っているので、魔法が使えないフィオンは徐々に押され始めている。


 ここでフィオンは槍に持ち替える。

 変わる間合に即座に対応して横薙ぎを食らわぬように弾く。

 フィオンは薙ぎ払いでは攻め切れないと判断したのか突きの構えをとった。


「――――――待ってたよ」


 フィオンの高速の突きを体を回転させて大げさに避ける。回転に合わせて足を組み替えながらフィオンの真横をとることに成功する。


「っく!」


 手に持つ武器での迎撃は間に合わないとフィオンは判断したようで、咄嗟に魔法を放ってきた。

 しかしそれも予想はしていた。至近距離で飛んでくる氷の刃を、持ち前の反射神経で掠る程度に抑えて、そのまま斬りかかる。


「まだだ!」


 フィオンは自分の周りの地面を盛り上げると、ドーム状に自分を覆った。


 冷や汗が出る。

 この程度ならソードミストで関係なく斬れるが、問題はフィオンの姿が目視できていない状態だと誤ってフィオンに致命傷を与えかねなかった。


「止まれない!!」


 既に発動していたソードミストは解除できたが、勢いの止まらない剣は、フィオンの作り出したドームの中腹まで深々と突き刺さった。

 血の気が引く俺の前でドームが崩れ去っていく。

 だが、そこに見えたのは思っていたのとは全く違う光景だった。


「フィオンがいない・・・・・・?」


 疑問と同時に安心感がきて気が抜けてしまう。

 だからこそ気付けなかった。突然背後に現れたフィオンの存在に。


「私の勝ちだな!」


 振り返ると首元に剣を突き付け勝ち誇ったような顔をしたフィオンが立っていた。勿論その体には傷1つない。


「何がどうなってるんだ」

「簡単なことさ。自分の身を守ったように見せかけて内部で地面に穴を掘って脱出した。そのまま地面を掘り進んでラクリィの背後をとったのさ。それよりも―――――」


 フィオンは手に持つ剣を只の棒に変えると、俺の頭を叩いた。


「痛ってぇな!」

「最後に気を抜いたなラクリィ。戦っている最中なんだから最後まで気を抜くな!」

「いや、味方を斬ったかもしれないと思って、大丈夫だとわかったんだ。というか普通に心配したんだぞ!」


 俺の言葉にフィオンは呆けたような顔をした。


「はぁ、全く。そんなことを言われたら怒るに怒れないじゃないか」


 呆れたようにフィオンはそっぽを向く。若干耳が赤くなっていた。


「まあ私達がフィオンと模擬戦をするときは、ぶっちゃけ殺す気で相手してるしねー」


 遠くで見ていたトアンとミシェが終わったのを見てこちらによってきた。


「フィオンも照れちゃって可愛い。普段フィオンの心配をする人なんかいないもんね」

「うるさいぞミシェ。私は誰かに心配されるほど弱くない!」

「そんなこと言って、本当は嬉しかったくせに」


 ミシェがフィオンをからかっていると、トアンが何か言いたそうに近づいてきた。


「あー、なんつうか、見事だった。俺とミシェが2人掛かりでもフィオンをあそこまで追い詰めるのは難しい。フィオンは余裕そうな顔をしてるが実際はかなり焦ってたと思う。お前が最後気を抜いてなければ勝負は分からなかっただろうよ」


 何やら認めてくれたようで嬉しかった。

 しかしフィオンは本当に強かった。今の俺ならぶっちゃけアロマと本気で戦っても勝てると思っているが、フィオンは次やってもまた負ける気がする。


 とりあえずは今回の反省を生かして訓練することだが、今日のところはもう休みたかった。

 結局フィオンとミシェの言い合いが長くなり休めるのはもう少し後のことになるのだった。


フィオンとの模擬戦は今回が最後になります。


次回からはまたミストライフのメンバーが登場しつつ、物語が進んでいきます。

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