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ミストライフ  作者: VRクロエ
霧の世界編
203/226

仲間の為に

 霧魔花を目指して森に向かっていった仲間を横目に見送る。

 ハッキリ言って俺とミシェはあのメンツの誰と比べても戦闘力という点では劣る。異能者相手でも安定して勝てるくらいの実力はあると自負しているが、俺達の仲間はその上、王達ですら見劣りするほどの実力を身に着けている。


 その中でもラクリィとはよく一緒に鍛錬した仲だ。あいつがミストライフに入りたての頃は結構いい勝負といった感じだったのだが、俺が強くなる以上にラクリィは成長していった。

 仲間として誇らしく思うのと同時に、男としては悔しいという気持ちがあった。


 俺は目の前にいるフュストルに目を向ける。

 俺とミシェの2人で相手すれば、少々厳しい戦いにはなるが、勝てはするだろう。さっさと倒してこの場を落ち着かせ、早くラクリィ達に追い付かなければ。


「やるぞミシェ」

「うん!」


 出来ることなら俺はミシェを戦場に立たせたくはない。当たり前だろう? 惚れてる女に命のやり取りをしてほしいと思っている奴なんかいないはずだ。

 だが、こうして横に立たせてしまっている。俺がもっと強ければ、そんな暗い感情も浮かんでくるが、隣にいる以上は何としても守ってやるという意志を持たなければ。


 俺は前に出てフュストルに接近する。魔法主体のフュストルならば、接近戦に持ち込めればこっちのもんだ。

 剣が届く間合に入る前に魔法が飛んでくる。無力化することはできないので、食らわないように避ける。

 地面に魔法が着弾し、互いに視界が悪くなる中、ミシェが魔法を放った。

 全てを把握出来る異能を持つフュストルには全て筒抜けだ。避けた俺と、ミシェの魔法を相殺するように追加で魔法を放ってきた。

 俺に向かってきている魔法は土魔法のロックブラスト。岩の塊を飛ばす魔法だ。


 水や炎のような魔法でなくて良かった。ここを起点にしてやる。


 迫りくる岩の塊を避けることはしない。剣の届く範囲に入った瞬間真っ二つに斬り裂く。流石に予想外だったのか、フュストルは一瞬反応が遅れ、次の魔法が飛んでくるのが遅い。

 その隙を突くのはミシェだ。魔法だと相殺されてしまうので、自身の武器である連接剣でフュストルを追い詰める。

 だが、腐っても王の1人。咄嗟の判断で自身の周りに壁を生み出してミシェの連接剣を弾いた。


「ここだっ・・・・・・」


 俺達の動きが把握されているとはいえ、間髪入れずの接近、しかもフュストル自身が動けない状況とあれば、対応は出来ない。

 壁では防ぐことはできないのでフュストルは解除し身体を晒すが、結果は変わらないだろう。俺の剣はすぐ傍まで迫っている。


「フュストル様!!」


 剣が当たる瞬間、どこからか割り込んできたフュストルの部下が割り込み、フュストルを身体で押した。


「ようやった」


 フュストルは分かっていたからこそ、必要以上の行動を起こさなかったのだ。

 割り込んできたフュストルの部下の身体が斬り裂かれる中、そこで出来た一瞬の隙で炎の魔法を放ってくる。


「トアン!!!」


 避けれるわけがない。俺の身体は灼熱の炎に包まれることとなった。

 ミシェの叫び声が聞こえてきた。明らかに致命傷となる攻撃を食らったのだ無理もない。


「終わりだ」


 そう呟いたのは俺だった。

 火だるまになっているのにも関わらず、俺には焦りも、ましてや死への恐怖も無かった。あるのはただ仲間の為にこいつを殺す、それだけだ。


 焼けつく痛みの中、俺は体勢の崩れたフュストルに剣を振り下ろす。今度こそ、避けようがない一撃だ。


「まっ―――――――」


 何かを言おうとしたフュストルの言葉は、最後まで出てくることは無かった。

 頭から真っ直ぐに剣が通り、遅れて血が噴き出してきた。血が炎に焼かれる匂いが周囲には充満していることだろう。


 手から剣が落ち、その場に倒れ込む。次の瞬間に俺に大量の水が降りかかり身体を焼く炎を消化した。


「トアン!!!」

「がっ、げふっ・・・・・・勝ったぞ・・・・・・」

「馬鹿! 今はそれどころじゃないでしょ!」


 笑ってガッツポーズをすると、ミシェは怒りだした。


「ま、こうして生きてるし、そんな怒んなって」

「怒るに決まってるでしょ! 死んじゃうかもしれなくて・・・・・・無茶ばっかして・・・・・・」

「おいおい・・・・・・泣くなって・・・・・・」


 怒っていたと思えば今度は泣き出した。


「でも、傷を負ったのが俺で良かったよ」

「良くないよ!」

「良かったさ。ミシャだったらと思うと・・・・・・それだけで俺は死にたくなるな」

「もう・・・・・・ありがと、トアン」

「ははっ・・・・・・ミシェ、愛して――――――」


 そこで俺の意識は途絶えた。


 その後、俺が目を覚ますと戦闘は終わっていた。味方陣営の被害もそこそこあったようで、丁重に弔われた跡があった。


「身体は・・・・・・どうにか動くな」


 ラクリィ達の元へ向かうと言ったらミシェに止められそうだが、それでも行く。全ては仲間の為に、平和が訪れるまで俺の命を使ってやる。

VRくん「いや、死ぬて」

VRちゃん「生きてるわよ?」

VRくん「普通火だるまになったら死ぬでしょ? まあ生きててくれて良かったけどさ」

VRちゃん「仲間への想いで頑張ったのよ、きっと。 さて次回! 『人生最上の戦い』 お楽しみに~」

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