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ミストライフ  作者: VRクロエ
霧の世界編
193/226

決戦の地

 海の上を移動すること数日。景色が変わらないので、どのくらい進んで来たかは分からないが、予定では今日中には着くはずだ。

 前回に比べて速度自体は遅いが、途中で見つけた島で休んだりといった足を止めることは船の上にいれば必要ないので足は一度も止まっていない。それを考えれば到着にかかる時間はそこまで差が無いと思っていいだろう。

 近づくにつれて船の中の雰囲気も変わってくる。初めの方は余裕が垣間見えるといった感じだったが、今はそんな雰囲気は鳴りを潜め、張り詰めた雰囲気が漂っている。誰1人として此度の戦いを軽視している者はいなかった。

 道中で島に着いてからの動きに関する最終確認も終わっている。当初の予定からの変更はなく、本当に確認しただけだが、自分たちのすべきことを再度確認したおかげで改めて気合を入れることが出来た。


「見えたぞ!」


 船の先頭に立っていたフィオンから声が飛ぶ。目を凝らせば微かに島が見えており、その形から霧魔花の島だと分かる。


 俺は船内がひりつくのを感じながらフィオンの横に並び立ち、伸ばせる範囲で全力の探知を発動させる。

 ここからはいつ何が起こってもおかしくはない。不意の攻撃に対しても即座に対応出来るように出来うる限りは常に探知を発動させておくつもりだ。

 二度同じ失敗は冒さない。アロマの時のようなのは絶対に御免だ。

 先頭に立つ俺だけでなく、船の中心ではソラが、後部ではラビが同じように探知を発動させている。万が一にも海の上で挟み込まれない為に万全の体制を整える。


 やがて船は砂辺にゆっくりと上陸する。即座に船からは下りずにまずは周囲の安全を確認し、その間に必要な物資もまとめていつでも移動できるように全員が動く。

 フィオンとキャロルは仮拠点を作るのに適した場所がないか辺りを見回し、丁度いい高所を見つけたようで、指示を出して移動を開始した。


 移動しつつも神経を尖らせるが、なんの気配も感じない。ここは島といってもかなりの広さがあり、前回いった場所もほんの一部でしかない。霧魔花が島の奥の方にあるのだとしたら、この辺でなんの気配も感じないのは頷ける。

 ラビとソラに目を向けるが2人も何の気配も感じていないようで首を横に振った。


 結局何もないまま仮拠点を作成する場所まで辿り着き、早速作業に入ることとなる。


「すまんなラクリィ、もう少し頑張ってくれ」

「気にするな。時間は気にしなくていいからそっちは任せたぞ?」

「ああ、何があっても壊れないような拠点を作ってみせるさ」


 拠点の作成はフィオンが主体となる。基本的な土台作りから、その他諸々の作成を短時間で行うなら、やはりフィオンの異能に敵うものはないだろう。そこにイルミアの異能とキャロルの異能が合わさり作業効率を上げていくのだ。

 作業中はどうしても不測の事態に対応しづらくなる。メリユースの兵士達も拠点作成の補助をするから猶更だ。つまり今の見張りは俺が要になる。

 一応拠点を作る場所は全て捉えられるが、それでも俺がいる場所とは逆の位置からの襲撃だと厳しいものがあった。ラビとソラがいて本当に助かったと思える。


 考え難い速度で完成していく拠点に目を向けつつ、島の中にも目を通していた。

 奥の方は分からないが、こうして見ていると深い森がどこまでも続いているだけの島に見える。内部に深く入ってしまえば、景色の変化は殆ど無くなるだろう。霧魔花の捜索も苦労するであろうことが予測される。


 前回の上陸からはそこまで経っている訳ではない。もしかしたらハクラも未だ辿り着けていない可能性があるが、楽観視するのは悪手だ。即座に浮かんだ考えを取り払い、さらに強くなったであろうハクラとの戦闘を想定しておく。

 絶対に勝つとは豪語したが、実際にはそんな甘い戦闘ではない。勝てるとしても全てを賭けた末に紙一重の勝利になることは間違いなかった。

 そもそもの話、俺はハクラよりも弱かったのだ。いくら分解の霧という新たな手札を手に入れたとはいえ、その差はそう簡単に埋まるものではない。


「何かあと一つ・・・・・・ハクラに対する有効な手段があれば・・・・・・」


 勝っても負けても今後の世界の行く末がこの島で決まるのだ。その為には今ある全て以上に何かが必要になってきそうな予感がする。

 それが決戦の地であるこの島に都合よくあるなどと誰も思いはしないだろうが、それでも何かを見落とすことだけはしたくなかった。


 やがて拠点が完成し、俺は見張りを兵士達に任せて休むことになる。

 躊躇われたが、探知も切って休むことになるのだが、拠点に入ろうとした直前、俺の探知が届くギリギリのところで反応があった。

 俺の知っているものであり、しかし仲間ではない。が、今のところ敵意は感じられなかった。

 ただ向こうがこちらに気が付いていないか、何か理由があるのか・・・・・・ハッキリとしたところは分からないが、俺の取る行動は一つだった。


「用事が出来た。先に休んでいてくれ」


 俺はそれだけを言い残し、フィオンが何か声を掛けてくる前には全力で走り出していた。


VRくん「早速戦闘が起こりそうだな」

VRちゃん「ラクリィが飛び出していったってことはあいつかしら?」

VRくん「だろうな。どうなるか楽しみだ」

VRちゃん「色々と謎もあるし、その辺も気になるわね。 さて次回! 『予定調和』 お楽しみに~」

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