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ミストライフ  作者: VRクロエ
霧の世界編
192/226

船上にて

忙しすぎて禿げそう……

 キャロル達も合流し、ラビとソラのことを説明してから、俺達は海の上を移動していた。

 調査班のメンバー以外とは完全に初対面な2人だったが、陽気な性格で誰とでも仲良くなれるラビと、丁寧な口調で真面目な性格なのですぐに受け入れられた。


 そんな2人だが、ラビは現在メリユースの兵士達と何やら話しており、ソラは俺とフィオンの前で悲しそうな顔をしていた。


「そうですか・・・・・・アロマはもう・・・・・・」


 俺達の中にアロマがいないことをずっと疑問に思っていたソラは、休憩のために船の上に降りてきた俺とフィオンから詳しい話を聞いていた。


 アロマとソラは霧魔の村で一緒にいる時はとても仲が良さそうだった。新しい戦法なんかも2人で考えていたらしく、やはり悲しみが大きいのだろう。


「アロマが残した日記があるが、読むか?」

「はい、是非」


 アロマの形見の一つでもある日記は持ってきていた。それ程大きいものではないし、これを持っているとアロマが何処かで見てくれている気がしたからだ。

 内容は全て目に通している。その中でソラのことが書かれている部分もあったので、ソラになら読ませても良いだろうと思った。


 上着の内側にあるポケットから日記を取り出してソラに渡す。受け取ったソラは中身を黙々と読みだしたので、俺とフィオンは邪魔しないようにと話をしていた部屋から退室した。


 現在船はゆっくりと進んでいる。キャロルが異能で船を動かしているのだが、流石に長時間はもたないので、適度に休憩を挟む必要がある。

 動かしている間はかなりの速度で進んでいるため、休憩中もこうして慣性だけで進んでいるのだ。この辺りはフィオンの助言と改造により成り立っている。


 ファーニーは今も船に合わせて飛んでいた。


「キャロルの様子でも見に行くか?」

「そうだな。私が止めないと無理をしそうだし、見に行くか」


 キャロルは現在専用で作られた部屋で休んでいる。

 寝床は数人で一部屋を使っているのだが、疲労が心配されるキャロルや、俺やフィオンといった戦闘の中核を担う者達のはそれぞれ個室が分け与えられていた。


 キャロルの部屋に訪れると、何やら紙を広げて考え事をしており、どう見ても休んでいる感じではない。


「何をしてるんだ?」

「フィオン・・・・・・それにラクリィさんも。どうかしましたか?」

「いやなに、ちゃんと休んでいるか様子を見に来てな。で、何をしてるんだ?」

「霧が無くなった後のことを考えていました。何をするにしてもしばらくは国が主動になることは間違いありません。人々が広大な大地で何かを始めるにせよ下地は必要になりますから。上に立つ者、それも二国を抱えている私には色々と考えるべきことがあるのです」


 霧が無くなればあり得ない程の土地が使用可能になる。現在の四国はもしかしたら終わり、新たな国が出来上がるかもしれないが、何もないところから始めるのは考えるのが億劫になるほどの苦労がかかる。キャロルはそういったことも考えて、国の上に立つ者として動かなければならない。

 善悪を見定め、正しい方向に持っていかなければ、王が支配していた今の世界のように、戦争で滅びた前時代の国のようになってしまう。

 そんな未来は見たくない。


「私に何か手伝えることは?」

「ありがとうございます、でも大丈夫ですよ。フィオンとラクリィさんは近い未来のことに意識を向けていてください。その代わり、全てが終わった時は私の力になってくださいね?」


 キャロルの抱える有能な人材はサレンさんとレイラさんだ。この2人にはキャロルも信頼をおいているようだが、それ以外の人物にはそこまでの感情を抱いていないらしく、信頼できる人手を欲していた。

 二国で動くとなると、サレンさんとレイラさんではどう考えても手が足りない。俺達に協力を求めるのは必然だ。


「分かった、約束しよう。だが、無理はするなよ?」

「そうですね・・・・・・では今はこの辺にしておくとしましょう」


 キャロルは紙を纏めて、本格的に休む態勢になった。

 俺達がいてはゆっくり休めなくなってしまうので、そこまで確認出来ただけでも良しとして、部屋を後にすることにした。


 甲板に戻ってくると、日記を読み終えたであろうソラが遠くの海を眺めているのが目に付いた。

 俺達が戻ってきたことに気が付くと、日記を俺に返して小さく頭を下げる。


「読ませていただいて、ありがとうございました。あの子が何を抱えていたか、どんなことを考えていたかが分かって、良かったです」


 そこまで言うとソラは再び遠くの海に目を向ける。


「行く末を見守って、この世界と共に消えたとき、あの子にいい報告が出来るように頑張ろうと思います」


 霧と同じく消えるのは俺だけではない。ここにいるソラも、今も陽気に雑談しているラビも辿り着く先は一緒だ。

 例え消えるのだとしても、最後に何を思うか、それは大事なことだ。

 生きるか死ぬかを考えるよりも、よっぽど有意義なことだろう。ソラはそう考えたのだ。


「頑張ろうな」

「ええ、お互いに」


 俺の手を固く握りしめたフィオンに目を向けつつ、俺は小さく笑った。

VRくん「穏やかな雰囲気だな」

VRちゃん「嵐の前の静けさってやつね」

VRくん「怒涛の展開を迎える前の最後の息抜きになりそうだな」

VRちゃん「次回はもう島に上陸するみたいだから、本当に最後ね。 さて次回! 『決戦の地』 お楽しみに~」

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