前夜
昨日は更新できなくてすいません……
PV見たらいつもの時間に読みに来てくださっている方が結構いて本当に申し訳ない気持ちでした。
本日の2話目は夜になる予定です! 告知の方はTwitterでさせていただくのでお待ちください!
遂に出発の前日となった夜、俺は1人外に出てきていた。
ここに来るまで街並みを見て周り、二度と見ることが無いであろうメリユースを感慨深く見て周っていると、無性に寂しくなってきて、こうして外まで出てきたわけだが、外は外で何か寂しいものがあった。
先日ルコと話していて、全てを諦めるのはやめようと決めたが、それでも俺が生きて戻れる可能性など無いに等しい。ならばこそ、世話になった街は最後に見ておきたかった。
明日からは気の抜けない日が続くため、霧魔花の島に行くメンバーは既に休んでおり、行かないまでもサポートに回ってくれている人達だけが慌ただしく動いていた。
本来ならば俺も休んでいなければいけないのだが、どうしても落ち着いて眠ることが出来ずにいる。
「寒いな・・・・・・」
日が差さない外の世界は基本的に寒い。夜は昼にも増してその気温が下がるのだ。
肌寒さを感じつつ、しかし戻る気にもなれないまま、その場でしばらく暗闇の中を眺めていた。
すると草陰から物音がした。顔を向けてみると数匹の霧魔獣がこちらの様子を伺うように出てくる。
サギリは持ってきていない。まあ、この程度の霧魔獣なら問題は無いが。
「ごめんな?」
今のところ襲われてはいないが、いつ襲い掛かってくるかも分からないので謝りつつも殺しておくことにする。
手を前に突き出して霧の塊を飛ばした。飛んでいった霧は霧魔獣にぶつかり、吹き飛ばしてその命を奪うかと思いきや、予想外のことが起きた。
「んなっ!?」
飛ばした霧が霧魔獣に当たった途端、霧魔獣が分解されるのように消えてなくなった。
今までにこんなことはなかったし、俺自身がそういう風に意識して霧を飛ばしたわけではない。
「もしかして暴走した時の名残か?」
後から話で聞いたのだが、俺が暴走した時は霧で全てを分解していたらしい。
フィオンのお陰で意識を取り戻すことが出来たが、少し前に意識を失っていた時のことは全く記憶になかった。
しかし改めてみるととんでもない能力だ。
ハクラですら逃げ出したとまで聞いている、つまりハクラを倒す上での切り札にもなりえるわけだ。
一度見せているので、どのくらい通じるのかは分からないが、逆に警戒させることもできる。そうなると意図しない隙が生まれるかもしれないのだ。
「もう少し、試してみるか」
普通の霧が全く出せないのは探知などにも影響が出そうなので、自身の能力を確認してみることにした。
こういう時サギリがいると何かアドバイス的なものが貰えそうでいいのだが、取りに行って戻るのは流石に面倒だ。
まずは霧化から発動させてみる。
問題無く発動することはできたが、自分の中で何かが切り替わった感覚がした。
もしやと思い戻って霧の塊を飛ばしてみると、ぶつかった木は分解されずに傷がつくだけだった。
探知も問題なく発動できる。先程の感覚は通常の霧と分解の霧を切り替えたものだったのだろう。
今度は分解の霧に切り替えるように意識する。
するとやはり自分の中で何かが切り替わった感覚がする。そのまま同じように霧の塊を飛ばすと、木は分解されていった。
やはり予想はあっていたようだ。
慣れてくればそこまで意識を集中させなくても切り替えられるようになってきた。
能力の特性上馴染みやすいのだろう。
「ラクリィ?」
新しい能力を試すことに集中していると、いつの間にはフィオンがやってきていた。
「どうしたフィオン?」
「いや、お前の部屋に行ったら姿が見えなくてな。聞いて回っていたら外に出ていったと聞いてな。出て来てみたら物音がしたから来てみたんだ。それで・・・・・・何をしていたんだ?」
「これに気が付いてな」
俺はフィオンに見せるように分解の霧を飛ばして木を分解して見せる。
「それは・・・・・・お前が暴走した時の・・・・・・」
「ああ。なんかいつの間にかな・・・・・・役には立ちそうだよ」
「暴走したことで良いこともあった、と言っていいのか?」
「まあ何もないよりはマシだろ」
「そうだな」
俺達は互いに苦笑いをして肩をすくめる。
良かったとは思いたくないが、結果としては択が増えた。プラスに考えていいのだろう。
「身体に何か異常はないか?」
「大丈夫だとは思う。全部の能力がいつも通り使えたな」
「ならいい。お前に何かあったら、私はもう動けないからな」
「安心しろ、霧を消すまでは何がっても死なないさ」
「そうだったな。それでこそ私のラクリィだよ」
ハッキリとそんなことを言われて恥ずかしくなってくる。
思わず顔を逸らしてしまった俺の手をフィオンが握った。
「さ、戻ろう。ゆっくり休まないとな」
「・・・・・・一緒に寝るか?」
「勿論。その為に探してたんだからな」
すっかり恥ずかしがらなくなったフィオンに戦慄しつつも、内心では嬉しいので素直に喜んでおく。
出発前夜、色々と考えることはあったが、悔いのない夜を過ごすことが出来たのだった。
VRくん「次話から最終章か?」
VRちゃん「そうみたい。いよいよ大詰めよ!」
VRくん「どうなるにしても最後か……いい結果で終わってほしいな」
VRちゃん「最後まで見届けましょ。出来るのはそれだけだわ。 さて次回! 『戦力増加』 お楽しみに~」