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ミストライフ  作者: VRクロエ
崩壊編
189/226

親の意志

 出発まで後数日となり、人々が慌ただしく動く中、俺はミールと一緒にいた。

 俺もやること自体はあるが、フィオンやキャロルに比べてやることは少ないので、こうして最後にルコと一緒にいるというわけだ。

 最後ということは勿論ルコは知らないし、言うつもりもない。きっと今のルコなら俺が消える悲しみを乗り越えて強く生きてくれると思うから。


「フィオンお姉ちゃんの言葉・・・・・・とっても心に響きました」

「そうだな。リーダーとして上手くやれていなかったと嘆いていたけど、フィオンは立派にリーダーをやっていたと思うよ」

「うん! 私もそう思う!」


 昨日フィオンがミストライフのメンバー全員に言った言葉は、確かにそれぞれの心に届いていた。

 あの後からミストライフのメンバー達はいつにも増してよく動いており、最後の戦いの準備や、メリユース国内での働きっぷりは凄まじい。


「私も、お母さんの意志を継いでいかないと・・・・・・」

「マキアさんか?」

「うん」


 マキアさんとルコは確かに親子のように見えた。こうしてルコがマキアさんのことをお母さんと呼んでいるということは、きっと拠点でマキアさんが残る時に何かしらのやり取りがあったのだろう。

 本当なら子供らしく泣きたいはずなのに我慢しているのは、ルコがマキアさんから引き継いだ強さなのだと何となく感じた。


「ルコは霧が無くなったら何かしたいことはあるのか?」

「私はお母さんがそうしてくれたように、親がいない子供達を助けたい。もう一つの家族を作ってあげたい」


 まさに生活班そのものだ。何かしらの理由で親を失い、生きていく術を持たない子供達に生活に必要な全てと家族、そして仕事を与える。

 ルコは生活班の子供達の中でもリーダーのような立ち位置であり、最もマキアさんの行ってきたことを見てきた。

 この世界には戦争などの影響で親を失った子供が無視できないくらいにはいる。霧が無くなった後でもその子達の居場所を作るのは難しいかもしれない。

 その居場所をルコは作りたいという。


「いいじゃないか。ルコならきっとできるよ」

「ありがと! 頑張るね!」

「その意気だ」

「ラクリィお兄さんも顔を出してね!」

「そうだな・・・・・・フィオンにも言っとくよ」


 素直に肯定することが出来ないのは害悪感がある。

 俺の言葉にルコも違和感もあったようで、少し沈んだ顔をする。


「・・・・・・帰って、くるよね?」


 すまないルコ。そう心の中だけで謝罪する。


「勝ってくるさ」


 出来るだけ安心させるように俺は微笑みながらルコに言うが、ルコはまだ納得した様子は無い。


「応援しててくれるか?」

「・・・・・・うん」

「なら、勝つことだけは信じてくれないか? でも俺も命を懸ける、だから帰ってくることは約束できない」

「そんな・・・・・・」

「ごめんな・・・・・・そのくらいの戦いなんだ」


 泣きはしないまでも悲しそうな顔はする。ルコにそんな顔をしてほしくはないが、俺にはどうすることも出来なかった。

 しばらく沈黙が続く。決して心地のいいものではないが、俺はルコが口を開くのを待った。


 沈黙の中、ルコはおもむろに俺に抱き着いてきた。

 震えるその身体を優しく抱きしめると、ルコは震える声で話し始めた。


「我儘でごめんなさい、でもラクリィお兄さんには帰ってきて欲しいの。だから、勝手に信じてるから!」

「ルコ・・・・・・」

「それにフィオンお姉ちゃんなら必ず連れ帰ってきてくれるって、信じてる! だから・・・・・・最後まで諦めないで!」


 ルコは俺が生き残ることを諦めていない。事情を知らないからということもあるだろう。それでも諦めてない。

 生き残る道は本当にないのだろうかと思ってくる。諦めて視野が狭くなっているだけではないのだろうか? 

 しかしどう足掻いても生き残れるとは思えない。だが、もしかしたらあるかもしれない何かを信じてみるのも悪くない。


「分かったよルコ、信じていてくれ」

「ラクリィお兄さん・・・・・・」

「弱気なことを言うのはもうやめる。何があっても最後まで諦めないよ」

「うん!」


 希望を持った、という程ではないが、諦めないでみようとは思う。


「強くなったな、ルコ」

「お母さんのお陰だよ!」

「そっか・・・・・・親子なんだな」

「うん!」


 顔を上げたルコはいつもの笑顔で見ていて気持ちのいいものだった。


「そろそろ皆の所に戻るか?」

「うん! ミールも一緒に何かしよ!」


 ルコは俺の手を取りルミールがいるであろう場所に向かって行く。

 難しい話はここからは無しにして、久々にルコとミールと3人で仕事をした。

 決戦前最後の穏やかな時間に、張り詰めていた心がリラックスされていき、いい気分転換になった。




VRくん「ミール……こんなに強くなって……」

VRちゃん「ただの癒し枠じゃなくなったわね」

VRくん「一応ルコってヒロイン枠なのか?」

VRちゃん「一応、ね? 特別何かあるわけじゃないわ。 さて次回! 『前夜』 お楽しみに~」

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