表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミストライフ  作者: VRクロエ
崩壊編
185/226

アロマの墓

 数日間の間、俺とフィオンは急激に落ちた体力などを戻すことに専念することになった。たかが数日と思うかもしれないが、意外と無視できるものではない。少なからず鈍りもしているので、このままでは戦うどころではない。

 メリユースの軍が使っていた訓練場などを借りて軽い運動から始めていき、何日かすれば本調子に戻ることが出来た。


 そろそろ本格的に今後の動きを決めなくてはならない。その前に俺とフィオンはある場所を訪れていた。

 墓だ、それもただの墓ではなく、ミストライフのメンバーが眠っている場所だ。

 キャロルの計らいにより設けられたこの場所には、少なくない墓が並んでいる。


「ここか・・・・・・」


 ミストライフ内での班ごとに区画分けされた墓の中で、一つだけ少し離れたところにある墓の前にやってきた。


 アロマの墓だ。


 アロマは肉体が綺麗な状態で残っていたこともあり、しっかりとした葬儀を行えたと聞いている。

 参加できなかったことは悔やまれるが、今更それを言っても仕方がない。悔やむためにこの場所に来たのではないのだから。


「アロマ、まずは謝らせてくれ。守れなかったことを・・・・・・」


 あの時俺が探知を切っていなければシェダの接近に気が付けたかもしれない。ハクラとの戦闘では無意味だと、周囲への警戒を疎かにした俺の責任だ。


「次にありがとう。アロマは俺の心を守ってくれたよ」


 約束通りアロマは俺を守ってくれた。最も助けが必要な場面で。


「俺は・・・・・・俺とフィオンは2人で前に進むよ。もう立ち止まらない、全てが終わるまで戦ってみせる」

「これからはアロマの分までラクリィを守る。だから私に任せてくれ」


 フィオンも真剣に答えた。きっとアロマの気持ちには気が付いていたのだろう。もしかしたら2人の間で何かしらのやり取りもあったかもしれない。


「見ていてくれ最後まで。そしたら霧のない世界を必ず見せてやる。お前も願った平和な世界を、俺が作ってやる」

「ああ、アロマの意志は無駄にしない、行動で証明しよう。今度こそ私は正解に向けて歩いてやる」


 アロマの前で言葉にすると、さらに力が漲ってくるような気がした。そのくらいアロマは俺の中では大きな存在だったのだ。

 家族のような親愛、アロマが俺に求めていたのは別のものだったのだろうが、意味は違えどアロマは俺にとって愛すべき相手だったのだ。


「もうここに来ることは無いと思う。でも、その内そっちに行くから、待っていてくれ」

「ラクリィ・・・・・・」


 俺という人間の結末を知っているフィオンは既に割り切ったといっても悲しそうな表情をする。


「悪いなフィオン。それと頼みがある」

「なんだ?」

「世界から霧が消えた後、俺の墓はここに作ってくれ」


 残酷な願いだ、愛する相手にするようなことではない。

 それでも、俺はフィオンの手で俺を弔って欲しい。我儘なことなのは分かっているが、それが俺の偽らざる気持ちだ。


「・・・・・・分かった、任せてくれ」

「ありがとうフィオン」

「いいさ。それにラクリィがここに眠るなら、私もその内隣に来てやる」

「ああ、それはいいな。でも出来るだけ遅く来いよ?」

「なんだ? 私のいないところでアロマとやましいことでもするつもりか?」

「全く、分かってるくせに・・・・・・フィオンには長く、平和な世界で生きていてほしいんだよ」


 例えそこに俺がいなくとも、フィオンが戦いから解放された世界で静かに生きていてくれるなら、俺はそれだけでいい。


「さて、そろそろ俺達は行くよ。またな、アロマ」


 俺達は振り返らずにアロマの前から立ち去る。

 後ろから吹く優しい風は、アロマが俺達の背中を押してくれているようにも感じた。


「言い残したことは無いか?」

「無いよ。それに、あまり長くいると涙が出てきそうだしな」

「別にいいんだぞ? 辛いのなら私が支えてやる」

「何もかもが終わるまでは涙を流さないと決めたんだ。後ろは振り向かずに前だけを見るためにな」

「意地か?」

「意地だな」

「そうか・・・・・・嫌いじゃないぞ」


 ここからは後ろを向いている暇などない。ハクラはさらに強くなっているはずだ。シェダの居場所も探らなくてはならない。それに拠点を襲撃したのはフュストルの私兵だとも分かっている、借りを返さないとな。


 具体的な動きはフィオンとキャロルが中心で話し合うことになっている。

 決戦はあの島になるだろうが、別の場所での戦闘も予想して動きを決めるみたいだ。

 とはいえ、結局霧を消せれば勝ちなのは変わらない。シェダとフュストルが発見できないなら、全戦力をハクラにぶつけることも考えているようだ。


 話し合いの場に行くと、既に主要メンバーは集まっている。


「それじゃあ始めようか。世界をもらうために」


 フィオンの言葉が全員の気持ちを引き締めた。

 最後の作戦会議の始まりだ。


VRくん「いよいよ最終決戦って雰囲気になったな」

VRちゃん「今までとは戦闘の規模が桁違いになりそうだし、どうなるか分からないわね」

VRくん「言ってみればミストライフとそれに連なる陣営VS五芒星だもんな」

VRちゃん「各戦闘視点とかでかなりのボリュームになりそうね。 さて次回! 『最終作戦1』 お楽しみに~」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ