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ミストライフ  作者: VRクロエ
崩壊編
183/226

支え合うということ

 抱きしめるフィオンはとても小さく感じた。同時に、何故今までもっとフィオンの心に寄り添ってこなかったんだという思いがさらに湧いてくる。

 この小さな身体で、今までどれだけのものを抱えていたのか・・・・・・想像すればするほど抱きしめる腕に力が籠る。


「フィオン、もう・・・・・・遅いのか? もうお前の心は戻ってこないのか?」

「・・・・・・」


 返事はない。涙すら出ない程心を閉ざしたフィオンを連れ戻すにはどうすればいい・・・・・・

 考えれば考える程、理屈ではどうしようもないことが突きつけられる。

 それでも、諦める訳にはいかない。好きな女1人救えずに、世界など変えられるものか。


「フィオン頼む。俺に全てを委ねてくれてもいい! お前が救われない未来なんか・・・・・・俺は見たくない」

「でも・・・・・・」


 フィオンは再び口を開く。


「でも・・・・・・ラクリィも死んでしまうんだろ・・・・・・」

「それは・・・・・・」


 死なないなんて無責任なことは言えなかった。フィオンが救われて、その先の世界で生きられるなら、俺は迷わずに霧を消す。それは言い換えればフィオンとの別れを明確にするということだ。


「俺がいなきゃ、ダメなのか・・・・・・?」

「ダメだ。お前がいなくなったら、私はもう・・・・・・」


 胸元に湿り気を感じた。何も変化がなかったフィオンが涙を流している。


「好きな・・・・・・愛してるラクリィまで失ったら、私はもう生きられない! そんなことになるなら、このまま死んだ方がましだ!」

「フィオンが死んだら、俺も生きてられないよ」

「もう無理だ・・・・・・大切な人との別れはもう耐えられない」


 悲痛な叫びと共にフィオンも俺のことを抱きしめた。

 身体は震え、涙は止めどなく流れており、何が何でも離さないと腕に目一杯の力が籠っている。


「何か、俺が残せるものはないのか?」

「無いとは言わない。けど、ラクリィ以上のものを私は考えられない」

「それは困ったな・・・・・・」

「困ってくれ。そのままずっと傍にいてくれ」

「いるさ、最後のその時まで」

「違う! ずっとだ!」


 子供の我儘のようにフィオンは俺に縋りつく。俺自身もフィオンとずっと一緒にいたいという気持ちは即座に頷きたくなるほどある。

 だがそれはダメだ。俺達がここで終わってしまえば、今までの戦いで死んでいった人達が報われない。軽んじていい命など一つもなかった。


「俺は止まれない。死んでいった人達、ミストライフの研究員の人達、サレンさんにリレンザ、そしてアロマの為にも、最後まで戦う。それが償いであり、皆の託したものだ」

「私には・・・・・・重すぎる」

「重いなら俺が背負ってやる、最後まで立ち上がっていてくれ、フィオンの全てを俺にくれ。その代わり俺という存在をフィオンに全てやる。それが、支え合うってことだろ?」

「ラクリィの、全てを・・・・・・」

「そうだ! 敵が来たなら俺が殺す。フィオンを苦しめるものは俺が取り払う。その為に必要なのはお前なんだ!」

「それは、支え合うとは言わなくないか?」

「いいや言うね。フィオンさえいれば俺はこれから誰にだって負けない。ハクラが神になろうが、シェダに不意を突かれようが全てを蹴散らしてやる!」

「・・・・・・大層なことだな」


 フィオンは腕の力を抜き、俺の顔を見上げるように頭を上げた。

 そこには先程まで無かった僅かながらの光と、疲れたような小さい笑みがあった。


「酷い奴だなラクリィは」

「俺なんて単純さ。死んだ大切な人に励まされて立ち上がり、愛する女の為に戦う。そんなどこにでもいる男だよ」

「確かに単純だな。でも、私が愛する男はそんな奴だ」

「光栄なことで」


 俺達は数秒見つめ合い、キスをする。

 温かさが込み上げてきて、これが幸せなのだと実感した。


「ありがとうラクリィ。愛してる」

「俺の方こそありがとうフィオン。愛してる」


 もう一度キスをし、そこで俺達の決意は再び固まった。

 別れにより砕けた世界を変えるという決意はより大きな形となり、絶対に成せるという全能感すら湧いてくる。


「共に戦うと誓う。世界の変わるその時まで」

「頼りにしてるよ相棒。お前がいれば俺は無敵だ」

「調子のいい奴め・・・・・・」

「男なんてそんなもんだよ」

「ま、私も人のことなど言えないがな」


 瞳に力を取り戻したフィオンは、先程の何倍も魅力的に見える。これが俺の惚れた女だと再度自覚するには十分すぎる程に。


「それで? 私に全てをくれるんだろ? だったら、存分に愛してくれ。それが女としての私の願いだ」

「勿論だよ。むしろフィオンが押しつぶされないか心配だな」

「ほぅ? それは楽しみだ」


 俺達はベットに倒れ込む。

 かなり長いこと話していたらしく、昼にここに来たというのに外は既に暗い。邪魔するものなど何もないと言うかのように。

 悲しみのどん底から這い上がった俺達は、その夜、忘れていた幸せを全て取り戻すかのように、長く幸せな時間を過ごしたのだった。

VRくん「甘い! この作品には考えられない甘さ!」

VRちゃん「最終章目前にしてようやくといったところかしら」

VRくん「なんにせよ良かった。最近は辛いことしかなかったから・・・・・・」

VRちゃん「そうね。ここからが本番だとは思うけど、良かったわね」

VRくん「ちなみにいつから最終章だ?」

VRちゃん「あと数話挟んでからね。ちなみに最終章は結構長くなるらしいわよ」

VRくん「それは楽しみだけど、いい結末で終わってほしいな」

VRちゃん「どうかしらね? まだ強敵は残ってるし」

VRくん「やれるさ! 今回のを見てると負ける気がしねぇ!」

VRちゃん「最後までミストライフの活躍を期待しましょ。 さて次回! 『謝罪とお礼』 お楽しみに~」

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