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ミストライフ  作者: VRクロエ
崩壊編
181/226

フィオンの心

 俺がまず向かったのは、今後のことについて話し合っているであろう、調査班の皆とキャロルを含むメリユースの人達が集まっている場所だ。

 殆ど意識がなかったとはいえ、会話自体が全く聞こえていなかった訳ではない。思い返せば皆が何を話していたのかは思い出せるので、場所についても問題は無かった。


 もう夜なので誰かとすれ違うことはない。騒ぎにはならずに話し合いを行っている部屋までやってきた。

 扉を開けると、視線が一気にこちらに向く。俺の姿を見て皆が硬直しているようだった。


「皆、心配かけて悪かった。もう、大丈夫だ」


 まずは謝罪から入る。数日間本当に迷惑を掛けてしまった、その詫びはきちんとしなければならない。

 俺の謝罪を聞いてか、皆硬直から溶けていき、各々が反応を示す。サレンさんに限っては、瞳に涙を浮かべながら、良かったと呟き俺を抱きしめる。謝罪はしたが、ここまで心配を掛けてしまったことに改めて申し訳なさが浮かんできた。

 サレンさんはアロマのことを妹のように可愛がっていた。本当だったらサレンさんも悲しみに溺れてもおかしくはないのだが、俺の為にも頑張ってくれていたのだろう。


「すいませんでした・・・・・・」


 俺は再度謝り、サレンさんを優しく抱きしめた。


「全く、待たせやがって」

「悪かったトアン。それと、色々と押し付けた、ありがとう」

「いいさ、仲間だろ?」


 小さく笑いながら声を掛けてくるトアンに、心が軽くなるような感覚がした。

 良い仲間を持ったものだ。


「ラクリィ、フィオンは?」

「フィオンはまだ休んでいる」

「そう・・・・・・」


 あえて休んでいると言った俺の言葉の意図をイルミアは読み取ったみたいで、少しだけ沈んだ顔をした。


「フィオンのことだが・・・・・・俺に任せてくれ。必ず連れ戻すから」

「ん、お願い」


 フィオンを起こすのは俺の役目だ。必ず救い出してみせる。


「そうだミシェ、アロマからの伝言だ。『ごめんね』と言っていた」

「ありがとうラクリィ。それにしてもごめんねか・・・・・・アロマらしいね」


 恐らくだが手帳の中身をミシェは最後まで読んでいないだろうと思い伝えたが、その通りだったようだ。

 ごめんねという言葉にミシェは優しさと呆れを含ませた微笑を浮かべるだけだった。


「ラクリィさん、何が起こったのかは聞いています。その上で頑張ってもらうことになってしまうのですが、フィオンをお願いしますね。それと並行してあなたも体力など諸々戻さないといけないと思います。しっかりとした食事を用意しますのでお待ちください。レイラ、任せます」

「すぐに指示を出して参りますので少々お待ちください」

「キャロルにも迷惑を掛けたな」

「構いませんよ。私にも責任がありますから。それについて、話をしておきます。ラクリィ、あなたはもう一度あの場所に向かうので?」

「そのつもりだ。俺は最後まで戦うよ」


 一度は折れた心だが、アロマのお陰でもう一度立ち上がることが出来た。ならば最後まで戦うまでだ。

 それにシェダ、あいつを許すことはできない。必ず決着はつける。


 俺にそれを問いてきたキャロルの瞳にも戦う意志が見て取れる。どうやら覚悟は決まっているみたいだ。


「私達も最終決戦に参加しましょう。勝てば新たな時代に進め、負ければメリユースごと終わるでしょうが、それを左右する戦いに参加しないのは不誠実というもの。次は、あなた達だけに背負わせたりはしませんよ」

「そうか・・・・・・だが、移動手段はどうするんだ?」

「霧を弾く装置を回収してあります。それを船に乗せ移動、という形になるでしょう。食料などの懸念は大丈夫ですよ、情報を整理して、どの規模の移動でどれだけ用意すればいいかの計算は終わっています」


 俺が立ち止まっている間にもキャロル達は準備を進めていたらしい。詳しく聞けば、船も俺達が出発する前には作り始めていたようで、完成は目前なのだそうだ。


「フィオンは数日中に起こしてみせる」

「ええ、信じてますよ」


 その後のさらに詳しい話は明日にすることになり、俺は急遽用意された食事に感謝しながら食べた後、用意された部屋を不要だと断り、先程までいたフィオンのいる部屋で休むことにした。


 多くのものを背負いながら戦い、折れてしまったフィオンを見つめる。

 魂が全て抜け落ちて空になってしまったようなフィオンは、寝ている姿すら痛々しく映ってくる。

 底に落ちてしまった心を拾い出すのが俺の使命であり、アロマの願いでもある。


「絶対に助け出してやるからな」


 眠るフィオンの手を握り決意を込めて呟いた。

 世界も、愛する人も、全てを救う。大それた決意かもしれないが、それを成し遂げるまでは俺は無敵だとも思えることが出来た。


 薄暗い夜明けを迎えるまで俺はフィオンの傍らで手を握り続けた後、気持ちをスッキリさせるためにランニングをしようと外に出る。

 アロマと並んで走った道を懐かしく思いながら、俺は身体を温めていった。


VRくん「主人公っぽくヒロインを救い出してくれ!」

VRちゃん「ここまで来てようやく主人公っぽくなったわね」

VRくん「かっこいいところを見せてくれぇ」

VRちゃん「少しでも救いをこの作品に! さて次回! 『重荷に触れて』 お楽しみに~」

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