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ミストライフ  作者: VRクロエ
崩壊編
180/226

愛するあなたのために

『もしこれをらっくんが読んでるんだとしたら、わたしはもう死んじゃったのかな? グラムにはわたしが死んだときにらっくんにこの手帳を渡してって言ってあるから、グラムが反応を示した理由はそういうことだよ。


 この手帳に書いてあることが読まれるのは少し恥ずかしいけど、らっくんや、仲間の皆になら別にいいや。恥ずかしいけど、わたしがどんなことを考えてきたか、それを知ってどういう反応をするかな?

 まあ半分くらいはらっくんのことが書かれてるから、わたしの恥ずかしい気持ちしか分からないと思うけど。


 それじゃあここからはらっくんが読んでくれてると思って書いてくね。


 初めに言いたいのは、わたしが死んだことについていつまでも引きずらないこと。

 きっとらっくんは凄く落ち込んでくれると思う。自惚れじゃなければ、わたしに対して恋愛感情とはまた違った大切を持ってくれてると思ってるから。

 勘違いだったら恥ずかしいな・・・・・・けどらっくんが落ち込んでる可能性も考えるとどうしても、ね。

 でもねらっくん、わたしのことをそこまで考えてくれてるのは嬉しいよ? でもそれでらっくんの心に傷は付けたくないな。

 わたしのお願いはらっくんが最後まで立ち上がって強く幸せでいること。それを忘れないでね?


 次にフィオンのことかな。

 前にわたしが言ったこと覚えてる? ここに来たばかりの頃らっくんはフィオンに惹かれてるって、わたしは言ったよね?

 それと同じでフィオンもらっくんに惹かれてる。悔しいけど両想いってやつだね。

 フィオンは一見すると心が強く、いつでも前を向いて輝いてる。でも隠してる心の奥底はどこにでもいるような女の子みたいに怯えて震えてる。

 嘘だと思う? それはないよ、わたしの見立ては正しい。

 フィオンが弱さを隠せてるのは、仲間の存在であり、ミストライフのメンバーであり、辿り着くべき目標があるから。もしそれが欠けるようなことがあればフィオンの心は折れちゃうかもしれない。

 そんな時はらっくんが支えてあげて? ううん、支えなきゃダメだよ?

 好きになった女の子に何もかも背負わせて、慰めることも出来ないような人じゃないって、らっくんのこと信じてるからね。

 さっきの話に戻るけど、いつまでもわたしの死に囚われちゃダメ! 支えるべき人は、死んだわたしじゃなくて、いつでも傍にいるフィオンだよ? いつでも皆のことを考えてくれる優しい女の子を支えてあげてね。


 最後にだけど、我儘言ってもいいかな? 言っちゃうよ?

 わたしの死に囚われちゃダメって言ったけど、それでもわたしのことは忘れないでほしいな。過酷な世界で、らっくんのことを愛したアロマを、覚えていてほしい。

 口では守るなんて大層なことを言ってても、いつも守られて支えられてきたわたしだけど、それでもらっくんの中にわたしがほしいの・・・・・・

 だから、ほんの少しでも、わたしのことを覚えていてね?


 長くなっちゃったね。でも残しておきたかったから。

 らっくんの心を助けることはできたかな? 書いてる今もそんな不安ばかりあるよ・・・・・・

 グラムにもらっくんのことはお願いしてあるから大丈夫かな。きっとらっくんの助けになってくれると思う。

 あー、あと皆に、ミシェに死んじゃってごめんねって伝えといて? ミシェは特に悲しむと思う、友達だからね。

 メリユースのことはキャロルがいるから安心してる。昔からしっかりしてたし、いい統治者になってくれるって分かるから。


 こんなもんかな。そろそろお別れにしよ!

 またねらっくん! いつでも傍で見守ってるよ!

 そしてこれが心に届くといいな! 愛する、あなたのために・・・・・・』


 静かな部屋の中で、手帳を閉じる音が鳴る。その人物の瞳には失われた光が宿っており、頬には涙が流れている。

 どこまでも優しさに溢れ、誰かを想っての言葉。それは確かに愛する者を救った。


「アロマ・・・・・・」


 数日に渡り震わされることのなかった喉が思い出したかのように言葉を放つ。それと同時に流れ出る涙は勢いを増した。

 ページを捲る音は消え、今は嗚咽だけが部屋に鳴り響いている。しかし、もう1人の人物が何かを発することはない。

 隣で死んだように眠る弱々しくなった少女を救うことこそ、死んでいった大切な人が託した使命でもあった。


 いつまでも悲しみで立ち止まっている訳にはいかない。かつて語り合った霧が無く戦いもない平和な世界にするために、もう一度心を奮い立たせる。


「ありがとう、アロマ」


 底から救い気てくれたアロマにお礼を言って、俺は力の入らない身体で立ち上がった。

 まずは心配をかけた人達に謝罪を、今も今後のことについて話し合っているであろう人達にもう大丈夫だと伝えて、そして愛する人を救い出す。


 俺はもう一度戦うことを決意した。





VRくん「ラクリィが!」

VRちゃん「流石アロマね」

VRくん「これからだ! フィオンのことも頼むぞ」

VRちゃん「助けてあげて! さて次回! 『フィオンの心』 お楽しみに~」

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