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ミストライフ  作者: VRクロエ
崩壊編
179/226

最後の言葉

 ミシェは見つけた手帳の中身を確認する。人の手帳を見るなどマナー違反だと言われてもおかしくはないが、グラムがわざわざ反応を示したということは、何か大事なことが書かれている可能性があった。


 初めの方は、ミストライフに入った時のことや未来への不安、ラクリィと再会できたことへの喜びなどが綴られていた。

 どうやらこの手帳に書かれているのは日記のようなものみたいだ。

 そのまま読んでいくと、起こったことやラクリィへの気持ち、フィオンがラクリィを意識し始めていること、それらをその場で誰かに話しているかのように書いている。

 時には嬉しそうに、時には切ないように、口には出せない想いを吐き出しているかのようにも見えた。


 まだページを余して、霧魔花の元へ向かう前に書いたであろうところまできた。

 決意が伺える文章であり、霧がなくなった後の世界のこと、ラクリィとフィオンはきっと結ばれるとの予想、その時の自身の立ち位置など、迷いなく綴られている。


 そもそもミシェ達はラクリィとフィオンがお互いにそこまで惹かれ合っているということに気が付いていなかった。せいぜい相性いいなーや、気が合ってるな程度の認識だった。

 だからこそアロマがそこまで気が付いていたことに驚きを隠せない。果たしてラクリィへの想い故か、単純に視野が広いのか・・・・・・


 他にもアロマがどんなことを考えていたのか気になるところだが、ここで途切れていた。

 確かに貴重なものだったが、グラムがあそこまで反応を示した意味は何なのだろうか? それに保管のされ方も、何か見られたくない理由でもあったのだろうか?


 そう思い白紙のページに何か隠されてないか捲ってみる。すると最後の数ページを残して何か書いてあった。

 これこそがグラムが手帳に反応を示した理由だとミシェは思い中身を読んでいく。


「これって・・・・・・」


 そこに書かれていたのは、ある意味で衝撃的なこと。

 ミシェが読んでもあまり意味はなさそうな内容だったが、これは絶対に持ち帰らなければならないと大切にしまい、早速これを読むべき人物の元へ急いだ。






 ――――――――――






 メリユース王都内にあるミストライフのメンバーように開けられた大きな家。重苦しい雰囲気が漂う中、特に重い雰囲気が流れる部屋。息が詰まるという表現など生易しいように感じる死後の世界のような雰囲気の部屋の中、ラクリィとフィオンの瞳からは光が失われていた。

 食事を運んでも食べることはなかったが、急激に身体の機能が低下する2人を見かねて、一時は暗く沈んでいたルコがミールに協力してもらい、無理やり食べ物を押し込んでいる状態だった。

 その甲斐あってか、食事は自身で食べるようになり、それに伴って必要になってくることに関しても、一応はするようにはなった。

 だが、それだけだ。何かに対しての活力も、生きようという意志すらなくなったように見えるラクリィとフィオンの心が立ち上がることはない。


 キャロルも後悔していた。世界のことなのにも関わらず、全てを委ねて国を支えるという選択をしたことに。

 勿論それが大事なことでなかった訳ではない。しかしながら、もう少しやりようがあったのではないか、自身もついていくべきだったのではないかと思わざるおえなかった。


 イルミアとトアンも、自身達の無力さに打ちのめされ、シェダの行方や拠点を襲撃した者達の出どころなどを探っているが、思うように成果を上げることはできていなかった。


 確実に壊れていく調査班のメンバーを見て、生活班の子供達も不安気だ。このままでは次に何かあった時は本当に何もかもが終わってしまうだろう。

 打開の一手を見いだせないまま、無為な数日が過ぎていった。


 そこに大急ぎでミシェが帰ってくる。遺品の整理をしていたはずのミシェが、殆ど手ぶらと言って良い状態で帰ってきたことに、また何かあったのかと緊張感が高まる。

 そんな空気の中、ミシェは気にすることもなくラクリィとフィオンがいる部屋に駆け込んでいった。


「ラクリィ! あなたに渡したい物があるの!」

「・・・・・・」


 ミシェの言葉に対してもラクリィは返事どころか見向きすらしない。聞こえていないかのような、傍から見ればそう映るだろう。


「お願いラクリィ! これだけは、アロマが最後に残した言葉だけは聞いてあげて!」


 アロマという単語が出たとき一瞬だがラクリィは反応を示した。


「あなたのことを心から想ったアロマの言葉を! 心が折れてしまっているのは分かってる! でも、これだけは!」


 ミシェは必死に叫び続けた。

 仲間の、大切な友達が最後に愛する人に向けて残した言葉を、どうしてもラクリィに届けたかった。


 その想いが通じたのか、瞳に光は戻らないながらもラクリィは顔をミシェに向ける。

 そして、アロマの手帳を、最後に残した言葉を手に受け取ったのだ。


VRくん「何か好転しそうな予感がする!」

VRちゃん「アロマが残した最後の言葉。これがラクリィをもう一度立たせることが出来るのかしら?」

VRくん「きっと届く! アロマは心からラクリィを想っていたから!」

VRちゃん「そうよね。きっと届くと信じるわ! さて次回! 『愛するあなたのために』 お楽しみに~」

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