表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミストライフ  作者: VRクロエ
崩壊編
178/226

失ったもの

 気絶しているラクリィとフィオンを見つけたイルミア達は2人の身にも何かあったのではないかと血の気の引ける思いがした。

 傍により状態を確認すると、唯意識を失っているだけだと分かって、まずは一安心する。

 しかし、マキアとリレンザの無残な姿を見てその安心はすぐさま消え去った。

 意識を失った原因にも予想が付き、もうダメかもしれないと思いながらも、ここで自分たちまで折れるようなことがあれば、その時点で全てが終わってしまうと無理やり足を動かして2人を安全なところに運んだ。

 子供達の安否が気になるところだったが、2人をこのまま放置しておくわけにはいかない。一日は拠点で様子を見ようとなり、日が変わるが2人が起きる気配は無かった。


 どうしようかと悩んでいるところで、人の気配を感じた。敵の可能性があるので警戒をする。

 正体を確認するために見に行くと、そこにはマキアの亡骸の前で悔し気な表情をしているレイラとサレンだった。

 話を聞くと、ミストライフから逃げた子供達や生活班の大人たちは無事に保護されたらしい。レイラとサレンはその後、未だ戦っているかもしれないマキアとリレンザを助けるために急いでやってきたそうだ。

 既に手遅れだったことにとても悔やんでいる。今となっては味方とも呼べる古い顔見知りを助けることが出来なかったと。


 だが、いつまでも感傷に浸っている訳にはいかない。イルミアはすぐにこちらの状況を伝えた。

 アロマがシェダに殺されたこと。それによりラクリィの心が折れるもフィオンが支えていたおかげで何とか最悪のところまではいかなかったと。それも拠点の襲撃により台無しになり、フィオン共々心が完全に折れてしまったことを伝えた。

 アロマの死を聞いたサレンは涙を流す。弟子であり、可愛い妹のような存在だったアロマを失ったことはサレンとしても心に傷を負うものだった。


 目を覚まさない2人の元に連れていき、今後のことを話し合う。

 いずれは目を覚ますだろうが、その後すぐに動くことはできないだろう。もしかすると廃人のようになってしまう可能性だってあった。

 今必要なのは休息だ。仮に立ち直るために何かをするのだとしても、2人には心を整理する時間が必要なので、メリユースに連れていこうとなる。


 アロマの亡骸はサレンが丁寧に運び、2人は調査班の仲間達で背負った。


 メリユースに到着し2人を落ち着けるところに寝かしつけると、キョロルを交えて話し合いが行われる。

 キャロル自身もアロマとはそれなりの面識があり、人柄も良く知っていることから悲しそうな表情を浮かべていた。

 フィオンのことについては、これまで心が折れたところなど見たことがないらしく、立ち直らせることが出来るかは分からないと言った。


 正直手詰まりな状況では、2人が目を覚ますまで様子を見るくらいしか出来ることはなかった。


 それから三日後。マキアの死に本当だったら泣き喚きたいであろうに、片時もラクリィとフィオンの傍から離れなかったルコが寝落ちしていたのにハッとして目を覚ますと、2人が起き上がっていた。


「ラクリィお兄さん! フィオンお姉ちゃん!」


 目頭に涙を貯めながらもルコは嬉しそうに名前を呼ぶ。しかし返事が返ってくることはない。

 2人の瞳には一切の光が宿っていなかった。まるで死人のような、意思泣きまま動いているように見える。

 それに気が付いたルコは唖然としたまま涙を流し、何も言えなくなってしまった。


 その後やってきたキャロル達によってルコは寝かされ、室内は重苦しい雰囲気に包まれる。

 何を言っても返事がない2人に、同じ調査班の面々は無力を感じていた。


 おもえば意志という面において、この2人に頼り切りになっていたのは否めない。折れることのないような意志を持ち続ける2人がいたからこそ、自分たちは迷わず進んでこれたのだと理解した。

 が、それは間違いだったのだ。己が持つ意志の強さだけで人はここまで戦ってこれるわけがない。支えがあるからこそ、この2人も強くあれたのだ。

 自分たちがこの2人に支えられていたように、ラクリィはフィオンやアロマ、フィオンはラクリィやアロマ、それにリレンザなどが支えていたのだ。


 今更気が付いてももう遅い。2人の支えになれていなかった以上、今更どう声を掛けても仕方がないだろう。

 食事すらとらずに衰弱していく仲間を前に、出来ることはなかった。


 そうしている間にもアロマの火葬が終わり、墓が作られ弔われた。

 遺品の整理などもしなくてはならない。ミシェはアロマの友達という気持ちから、拠点に赴きアロマの部屋を整理していた。

 グラムも持ってきている。意志のあるグラムならば、何かアロマが大切にしていた物を教えてくれるかもしれないからだ。


 その判断は正しかった。

 アロマの部屋の整理が終わる直前、グラムはある場所に強く反応を示す。

 そこにはグラムを差し込むような穴が作られた箱があった。

 とても頑丈に出来ているようで、壊そうと思えばできなくもないが、そんなことはしたくない。


 ミシェは勘に従い、穴にグラムを差し込んだ。

 すると鍵で開けるようにカチっという音がして箱が空く。

 中には一冊の手帳が入っていた。

VRくん「子供達だけでも無事でよかった」

VRちゃん「レイラとサレンもすぐに動いたみたいね」

VRくん「にしてもラクリィもフィオンも廃人みたいになっちまったな……」

VRちゃん「立ち直れるきっかけがあればいいのだけど」

VRくん「ミシェが見つけたものがそうなってくれるといいな」

VRちゃん「何か大きな意味はありそうよね。 さて次回! 『最後の言葉』 お楽しみに~」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ