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ミストライフ  作者: VRクロエ
前時代の痕跡編
170/226

壊れゆく心

書いてて心が苦しかった……このプロットを作った段階で分かってたことなのに……

 胸元から剣を生やし血を流すアロマの姿に、一瞬思考が止まる。

 何が起こっているか分からない、全てが止まって見える中で徐々に現実を理解してくると、途端に頭に血が上り出し、身体が震えた。


「っ!!」


 思考よりも先に足が動き出し、アロマへと一直線に向かって行く。ハクラのことなど既に頭の中からは抜け落ちていた。


「離せぇ!!!」


 雄叫びを上げながら、アロマの背後にいる相手に向けて剣を振るった。

 しかしその剣が相手を斬ることはなく、いとも簡単に受け止められてしまう。

 渾身の一撃、それもサギリを以てして放たれた攻撃はそう簡単に受け止めることは本来ならば難しい。それを成すには、この速度についてくるだけの反射神経、それと宝剣クラスの剣が必須だった。

 条件を満たす人物。受け止められた時に顔を上げたため、その正体に気付いた。


「なんで・・・・・・あんたまでここにいるんだ!」

「・・・・・・」


 まるで興味なさげに無言を貫くその男は、メリユースの元王であり、アロマの父親でもあるシェダだった。

 敵対することは無いかもしれないと思っていた男が、ここにきて最悪の一手を打ってきたのだ。


 今もラクリィの剣を軽々しく受け止めているシェダだが、アロマからは剣を引き抜いた。

 傷口から大量の血が流れ出る。どう見ても致命傷だ。


 血の気が引く。しかしここで呆然としている訳にはいかない。目の前の男は何としても殺さなければ。


 攻撃を受け止められぬように今度はソードミストを使って斬りかかる。

 だが、シェダに当たる前に、霧の剣によって阻まれてしまった。


「私のことを忘れないでほしいな」


 忘れていたハクラがこちらにやってきており、思うように動かせてもらえない。

 焦る気持ちがどんどん湧いてくる。しかしこの絶望的な状況を打開するための術を俺は持っていなかった。


「・・・・・・ら、っくん」

「アロマ!!!」


 倒れるアロマから俺の名前を呟く声が聞こえてきた。

 どうしようもない焦りの中、俺は目の前の敵ではなくアロマに向かって足が動いていた。

 戦闘中なら致命的過ぎる隙だが、ハクラとシェダはこちらを攻撃してこない。

 そのことに疑問を覚える余裕すら、今の俺にはなかった。


「アロマ! しっかりしろ!」

「えへへ、ごめん、らっくん、皆・・・・・・へましちゃった」


 俺がアロマに駆け寄ったのと同時に、フィオン達も傍に寄ってきていた。


「待ってろ! 今どうにかしてやるからな!」

「無理だよ・・・・・・助からないのは自分で一番分かってるから」

「諦めるな! グラムの能力もあるだろ!」


 諦めたように笑うアロマに必死に声を掛けるが、グラムの能力でもどうにもなっていなかった。

 そんな中、アロマは呆然としているフィオンの方を向く。


「フィオン、らっくんを・・・・・・お願いね? 絶対に、幸せにしてあげて」

「アロ、マ・・・・・・」


 その言葉は果たしてフィオンに届いたのだろうか? 変わらず呆然としているフィオンを見ても分かりはしない。


「らっくん、グラムは、らっくんが貰って?」


 アロマはもう力も殆ど入っていないであろう手でグラムをこちらに渡してくる。


「今までありがとうグラム。これからは、わたしの、大切な人を助けてあげて」


 手渡されたグラムからは泣いているような感情が伝わってくる。今も必死になってアロマの傷を癒そうと何度も何度も頑張っているのが分かった。


「アロマ! 諦めるな! こんなとこで終わっていいのかよ!」

「ごめんね、守るって約束、果たせそうにないや」

「そんなのダメだ! 絶対に許さない!」


 言葉と共に涙が溢れてくる。

 諦めた訳じゃない、それでも、どうしてか涙が止まることはない。


「泣かないで? 心はいつでも傍にいるから。いつでも、らっくんを見守ってるよ」

「アロマだって・・・・・・泣いてるじゃないか・・・・・・」


 気が付けばアロマの顔も涙で染まっていた。


「ねぇ、らっくん」

「・・・・・・どうしたアロマ」

「大好きだよ」


 そう言うと満点の笑みを咲かせながら、アロマは無理やり身体を起こして唇を合わせてきた。

 驚いたが、アロマを抱きしめようと力を込める。

 だからこそ余計に感じてしまった、次の瞬間にアロマの身体から全ての力が抜けるのを。


「アロマ?」


 身体を揺さぶる。


「おい起きろよアロマ。なあ!」


 何度も呼びかける。


「起きてくれ!」


 しかしもうアロマが返事をすることはなく・・・・・・


「アロマ・・・・・・頼む・・・・・・」


 起き上げることもない。


「アロマぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 アロマが死んだ。この事実は俺の心を瞬く間に壊していく。

 何も考えられない、考えたくない。涙と共に思考すら何処かへと次々に流れ出ていく。


 自分の叫びさえもう聞こえていない。感覚も何もかもを放棄した俺の中は白く、霧のように真っ白に染まっていった。



VRくん「嘘だろ……」

VRちゃん「まさかアロマが……」

VRくん「悲しすぎるだろ! こんな……」

VRちゃん「何も良いことがなかったじゃない!」

VRくん「恋も実らず死んでいくなんて……」

VRちゃん「実はまだ息があったみたいな展開を期待するしかないわね。 さて次回! 『暴走』 お楽しみに~」

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