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ミストライフ  作者: VRクロエ
前時代の痕跡編
169/226

終わらぬ攻防

 俺は次なる一手を放つ。

 前回ハクラからやられた霧を直接ぶつける技。それを応用した霧を纏うという技。

 これにより、一度だけだが、俺は全ての攻撃を無力化することが出来る。

 つまりは、本来なら捨て身になるような攻撃を行えるということだ。


 さらには、


「霧の理、この意思よ剣であれ」


 出し惜しみはせずに十本の霧の剣を作り出した。

 サギリが復唱し、俺の制御は楽になる。ハクラには探知があまり意味ないので切っていることを考えれば、もう少し数を増やすことも出来るだろうが、現状無理をしてまで数を増やすメリットはないだろう。


 俺は霧の剣と共に再びハクラに接近する。

 フェイント無しの全力疾走により、反応と速度では上回っているため、ハクラが回避行動に移る前に俺の攻撃が届いた。


 しかし斬り裂いたはずのハクラは霧散して消える。いつの間にか分身を作っていたようだ。

 一瞬探知で周囲を確認するが見つけることはできない。俺は即座に探知を切って、代わりに自身の霧を全方位に波を立てるように放つ。

 難しいと書かれてはいたが、霧魔の村でラビ達と霧を操る特訓をしていたおかげか、初めてやったが上手くいった。


 宙に流れる霧の波が俺の後方で乱れた。その先にハクラはいる。


「いけ!」


 俺の言葉とノータイムで霧の剣がハクラに向けて飛んでいく。

 サギリとは深く意識を同調させているので、俺の意志を汲み取り霧の剣を動かしてくれる。


「舞え」


 ハクラは自身の能力が破られたと察すると、霧化を解除した後に霧の理を発動させる。

 あのレベルになると、あそこまで簡易な言霊で、俺の言霊と同じくらいの力を宿せるようだ。


 同じく展開された十本の霧の剣により、俺の攻撃は相殺された。


 続いてハクラは五体の分身を作る。

 どれが本物か見分けがつかないが、関係ない。俺は自身の霧を横に払うように飛ばして分身を消した。

 それ自体に威力は全くないので、分身は消えつつも、本体のハクラは平然と立っていた。


「やるね。私の能力への対策はしっかりしてきたのか」

「当たり前だろ。お前の脅威なところは工夫された霧の使い方だ。そこに対する回答は用意するさ」


 実際には父親の手紙がなければ対策など立たなかったのだが、ここは余裕を見せておく方がいいだろう。


 そこからは決定打を打てないまま、戦闘が続く。

 今のところ、俺自身も危ない場面はないが、何ともいえない違和感だけは感じていた。


 というのも、ハクラとは本当にこの程度の実力なのだろうか? ヒエンの話や父親の手紙を読む感じでは、もっと隔絶した力があってもおかしい話ではない。

 まるで本気を出していないような、殺す意思がないような、そんな感じすら今のハクラからはしている。


 次に会ったときは初めから全力で殺しにくると思っていたので、こういってはアレだが、拍子抜けだ。


「お前の目的はなんだ!」

「いきなりだね。何度も言ってるけど、神になることだよ」

「それは知っている! この戦闘に対する狙いの話だ!」

「私がこうしてラクリィと戦っている中で何か別の狙いがあると?」

「そうだ!」


 違和感の正体、ハクラは何か別の目的のために戦闘を行っている気がした。


「どうしてそう思ったんだい?」

「お前の強さはこんなものじゃないはずだ。何か別の目的があって本気を出していないと考えるのはおかしくないだろ」

「ふむ。そうだね、私は本気を出していない。さらに言うには君の言う通り狙いがある」


 ハクラは俺の言葉にやけにあっさり頷いた。


「一体、何を狙っている!」

「それは自分で考えた方が面白いんじゃない?」


 流石に何を狙っているかまでは教えてはくれないようだ。


 しかし厄介だ。狙いが読めない以上潰すこともできないし、かといってハクラ自身に勝ち切るのも、出来たとしてもかなり時間が掛かる。

 ハクラが本気を出していないとはいえ、気を抜けばその時点で負けかねない。どうするべきか・・・・・・


「ヒント、あげようか?」

「惑わす気か?」

「ううん。もう少しで分かるから最後のサービス。何も私は、君を殺したい訳じゃないってことだよ」

「は? 意味が分からないな」

「前に別れる時言ったでしょ? 私が君に固執するのは、君に父親を超えるため。戦闘力では私が上回っているのは明確なのに、わざわざ戦って殺したりしないよ。元々殺すなんて一言も言ってないしね」


 言われて思い返してみる。確かにハクラは容赦しないかもや、本気を出せることを期待する、というようなことしか言っておらず、次に会ったら殺すとは一言も言っていない。


「なら、何が目的なんだ!?」

「そうだね、終わったようだし答え合わせだ。私は心で勝ちに来た。今回は君の心を壊させてもらうよ」


 途端に嫌らしい笑みを浮かべたハクラを見て、何か嫌な予感がした。


 そしてハクラは手を止め、ある方向を指差す。その先に――――――


「・・・・・・アロマ?」


 胸の在りから剣を生やし、口元から血を流すアロマの姿があった。

VRくん「え? は? 一体どうなってるんだ!?」

VRちゃん「アロマ……どうなっちゃうのかしら?」

VRくん「流石に無事だよな?」

VRちゃん「いずれにせよ何かが起こったことは間違いなさそうね」

VRくん「フィオン達が後れを取るとは思えないしな」

VRちゃん「ハクラの狙いはこれだったのかしら? さて次回! 『壊れゆく心』 お楽しみに~」

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