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ミストライフ  作者: VRクロエ
前時代の痕跡編
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神へと至る男

 家を揺らすほどの衝撃、ただ事ではない。

 俺とフィオンが外に出ると、同じくして他の仲間達も外に出てきた。

 アロマの顔には泣いていたような跡があり、とても気にはなるが、今はそれどころではない。


 音がした場所には巨大な穴が開いており、何かが突撃したように見える。

 その正体を探ろうとしたところで、背後から声を掛けられた。


「やあ、久しぶりだね。再会を喜ばしくおもうよ」

「ハクラ・・・・・・」


 聞き覚えのある柔らかい喋りに振り向き、その人物の名前を呼ぶ。

 この島に最も辿り着かせてはいけない男がやってきてしまった。


「どうやってここに・・・・・・」

「それを律儀に教えてあげる理由はないよ」

「来たのはお前1人だけか?」

「だーかーらー、教える理由はないって。ま、それに関してはすぐに分かるから別にいいけど。・・・・・・おいで」


 ハクラは家に空いた大穴の奥にいるであろう人物に向かって声を掛ける。

 するとゆったりとした動作で中の人物が起き上がり出てきた。


「なっ!? お前は!?」


 出てきたのは予想外の人物。というよりも、あり得ない人物だった。


「シャクスト!? 貴様、生きていたのか!」


 フィオンが驚きの声を上げる。

 それもそうだろう、出てきたのはシノレフで殺したはずのシャクストだったのだから。


 シャクストはフィオンに対して何かを言い返す素振りはない。

 何かがおかしかった。シャクストであれば何かを言ってきそうなのもそうだが、目の前のシャクストからは生気を全く感じなかった。

 まるで死人のよう。殺したのだから死んでいること自体に違和感はないが、こうして動いているとなれば、また別の話だ。


 俺達が困惑していると、ハクラの背後からシャクラまで現れる。

 あの状況で、そんな都合よく2人も生きているものだろうか?


「不思議かい? 殺した相手がこうして現れるのは。安心しなよ、2人ともちゃんと死んでるから。今動いているのは、私が肉体を操っているにすぎない」

「そんなことまで・・・・・・」

「君にも出来るんじゃないかい? まあこれほど強い人形は手に入らないと思うけどね。異能も使えるんだよ、凄いでしょ?」


 まるでおもちゃを自慢するようにハクラは楽しそうに話している。そんな事実を聞かされている方はたまったもんじゃない。

 恐らくだが、生きていた時ほどの脅威はないだろう。しかし厄介なことには変わらなかった。


「それじゃあ始める? 私も早く先に進みたいし、あまり時間を無駄にはしたくないんだ」


 ハクラはやる気満々だ。これはもう避けては通れない。


「フィオン達はシャクストとシャクラを抑えてくれ。ハクラは俺がやる」

「無茶だ!」

「いいから! ハクラに対して勝利の可能性があるのは俺だけだ。それに手紙にはハクラへの対応策も書かれていた、やれるだけやるしかない!」

「・・・・・・分かった。負けるんじゃないぞ! まだ話の続きが残ってるんだからな!」

「分かってるよ・・・・・・」


 心配そうにしているフィオンだが、どうにか納得してはくれた。

 アロマも精神状態が心配だったが、既に気持ちは切り替わっているようだ。


 ハクラは元から俺との1対1でやるようだったので、こちらの準備が整うまで律儀に待っていた。

 操るシャクストとシェダは既にフィオン達に向かって行っている。皆なら負けることはないだろう。問題は俺が勝てるかだ。


「またせたな」

「別にいいよ。神へ至る者としてそのくらいの器量は持っておかないとね」

「残念だがその心掛けは無駄に終わるぞ?」

「へぇ・・・・・・私に勝てるつもりかい? それは思い上がりってやつだよ」

「思い上がりかどうかは今から証明するさ!」


 俺は先手を取り接近する。

 ハクラはそれの接近を確認してから、霧化により回避を選択した。俺がまだ霧の理を発動させていないからだろう。

 が、前のように一方的にやられてやるわけにはいかないので、こちらもしっかり対策を用意してきている。


「穿て!」


 その言葉と同時にサギリを突き出した直線状に霧の斬撃が現れる。

 しかもただの霧ではなく、言霊を乗せたものだ。『穿て』とわざわざ口に出したのは、言霊を使うため。言わばこれは簡易的な霧の理なのだ。


 ハクラは言霊が乗っていることを読み取り、霧化を解除すると手の平を翳した。

 するとハクラに俺が放った霧が触れる前に溶けるように消えていった。

 簡易的な霧の理ということもあり、霧分解で消滅させられたのだろう。あまり強い力は持たないので仕方がなかった。


「裂け」


 お返しとばかりにハクラは言霊の乗った斬撃を返してくる。

 それを俺も同じ要領で霧分解で消滅させた。


 小手調べは済んだだろう、ここからはさらに手札を巧みに使って攻撃をあてに行かなくてはならない。

 基本的に全て攻撃を無力化できるレベルまで互いが力を持っているのならば、どうにか工夫する必要がある。


 思考を巡らせつつ、俺は次の一手に移った。

VRくん「来ちまったか……」

VRちゃん「死人を操るなんて……もう何でもアリねこいつ」

VRくん「まだまだ何か隠してそうだよな」

VRちゃん「霧魔花の元に辿り着かせたらいよいよ手が付けられなくなりそう」

VRくん「ここで勝ってほしいな」

VRちゃん「ラクリィにかかってるわね。 さて次回! 『終わらぬ攻防』 お楽しみに~」

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