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ミストライフ  作者: VRクロエ
前時代の痕跡編
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告げる想い

 横になり、父親の残した手紙の内容を繰り返し思い出していた。

 俺の父親も、今の俺と同じようなことを考えてたと思うと、やはり血なのだろうなとは思う。


 それとフィオンに渡した手紙だが、どんなことが書いてあるのだろう?

 母親、サリアという人物のことは父親以上に良く分からない。手紙越しで何かを話したわけでもないので、どのような人柄なのか・・・・・・フィオンに渡した手紙にどんなことが書いてあるのか想像もつかない。


 考えていても仕方がないのでハクアの能力への対応策も分かったことで、戦闘想定を脳内で想像しておく。

 ここまで来てしまえば、戦闘になる確率はかなり低いと思うのだが、何が起こるか分からない以上、考えておいて損はないだろう。


 眠れない頭でそんなことを考えていると、扉がノックされる。


「ん? 誰だ?」

「私だラクリィ、入ってもいいか?」

「フィオンか? いいぞ」


 こんな時間にどうしたのだろうか? 考えられるとすれば手紙を読んでのことだろうが、内容を知らないので何を言いに来たのかは分からない。


 フィオンの表情は真剣そのものだ。雰囲気からただ事でないのは伝わってくる。

 思わず身構えてしまうようなその雰囲気に、俺は緊張感を覚えた。


「それで、なんの用だ?」

「どうしても、伝えておかなければならないことがあってな・・・・・・」


 只ならぬ雰囲気、俺に伝えておかなければならないこと。あの手紙には果たして何が書いてあったのか・・・・・・


「ラクリィ・・・・・・私は・・・・・・お前が好きだ。仲間としてとか、そういうことではなく、1人の男として、お前に好意を抱いている」

「・・・・・・・・・・急だな」


 あまりに突然の告白。衝撃が強すぎて一瞬言葉が出なかったが、どうにか平静を保った状態で言葉を繋ぐことが出来た。


「なんだ、随分と冷静だな」

「あー、そうだな。突然すぎてな」


 冷静? そんなことは無い。俺の内心は大いに荒れ狂っている。

 惚れた相手にそんなことを言われれば冷静でなどいられるわけがない。むしろ焦っていないように見えるのは、合わせすぎて思考が追い付いていないからだ。


 しかしそんな俺の内心を無視して、フィオンは身を乗り出して詰め寄ってくる。


「なあ、聞かせてくれ。お前は私をどう思ってるんだ?」

「それは・・・・・・」


 ここで俺も好きだと言うのは簡単だ。しかし、心に決めたことが邪魔をしてそれを口に出させない。

 素直な気持ちを伝えてしまえば、もう後には戻れなくなる。フィオンのこれ以上辛い思いをしてほしくない。


 であれば俺はこう答える。


「・・・・・・その気持ちに、答えることはできない」


 フィオンを悲しませてしまうだろうが、後のことを考えればこれでいいのだ。

 はっきりと拒絶すればフィオンも諦めるだろう。

 その考えは直後に甘かったと知る。


「何故だ? その理由は?」

「え? あー、俺はフィオンに対して恋愛感情は抱いていないからだ」

「嘘だな」

「いや、嘘なんて・・・・・・」

「これを見ろ」


 諦めないフィオンは何かを俺の前に突き出してきた。


「これは?」

「お前の母親からの手紙だ」


 俺がフィオンに渡したものだ。

 フィオンははっきりと俺が断った理由を嘘だと言った。その理由がこの中に書いてあるのだろうか?


 手紙を受け取り俺は内容に目を通す。そして読み終えてからため息をついた。

 これは決定的なものだ。俺がフィオンに渡した時点でこうなることは決まっていた。


「なあラクリィ。私はお前に何も残さないでいなくなられるのは悲しい。最後のその時まで、私に愛を向けてはくれないか?」


 吐息がかかるほどの至近距離でフィオンは真っ直ぐに見つめながら言ってくる。

 こんなことをされては抑えようもなくドキドキしてくる。顔が熱くなり、フィオンから目を逸らしてしまいそうになるが、それはフィオンが許してくれなかった。

 両手で俺の顔を抑えて無理やりに真っ直ぐにフィオンの方を向かされる。


「私を愛しているなら、それを伝えてくれ・・・・・・お願いだ」


 フィオンの瞳の奥には決意に隠れた寂しさのようなものが見えた。

 お願いだと言ったのは、きっとフィオンの心からの本心なのだろう。縋るような言葉を出してしまう程、フィオンは必死なのだ。


 俺は間違っていたのだろうか・・・・・・フィオンのことを考えてのことだったが、それをフィオンは望んでいない。

 例え辛い別れがこようとも、残された時間での幸せを選ぶのか・・・・・・

 俺の選択は逃げだったのだはないか? そう思えてくる。


「答えてくれラクリィ! 私のことを愛しているかを!」

「俺は・・・・・・」


 愛している。そう答えようとした時だった。

 何かがぶつかるような音と共に家が大きく揺れる。


「なんだ!?」


 明らかな異常事態に、俺達の会話は中断することを余儀なくされた。

 即座にサギリを抜刀し、俺とフィオンは急いで外に向かって出ていった。

VRくん「いいところで!?」

VRちゃん「そう簡単にいかないところがこの作品らしいわね」

VRくん「何が起こったんだ?」

VRちゃん「ハクラが辿り着いたのかしら? だとしたらまずいわね」

VRくん「でも今のラクリィなら」

VRちゃん「勝ってくれると信じたいわね。 さて次回! 『神へと至る男』 お楽しみに~」

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