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ミストライフ  作者: VRクロエ
前時代の痕跡編
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サリアが残したもの

 この島に落ち着いて身を休めることが出来る場所があるのは非常に有難いことだった。

 まさかここまで大きいとは思ってもいなかった。島にさえ辿り着けばすぐに見つかると思っていたのだが、想定が甘かったようだ。

 みすみす仲間達に時間という危機に晒してしまうところだった。


 ラクリィの父親が残した島について書かれた紙には霧魔花の場所までは載っていない。

 手紙には霧のことについては自分たちはもう手放したと書いてあったらしく、どうにかしたければ自分たちで探せとのこと。

 こうして滞在できる環境を残してくれているのをみると、軽い手助けくらいはするつもりがあったみたいだ。


 そして母親の方から残された手紙は何故か私に渡された。

 どういう内容なのかはラクリィも読んでいないから分からないらしい。

 ラクリィが私に渡したということは何かしらの意味があるのだろうが、その内容に見当はつかない。

 何が書いてあるにせよ、大事なことだとは思うので、恐る恐る手紙を開いてみた。


『初めまして、ラクリィの母親のサリアと申します。

 これを渡したのはラクリィですか? だとしたら私の意図した通りなので安心です。


 これが誰かの手に渡る時には私はもうこの世にはいないでしょう。あなたの顔が見れないのは残念で仕方ありません。


 もし私が残念がっている理由が分からないのならば、ラクリィの父親似なのでしょうね・・・・・・私も散々苦労させられました。


 単刀直入に言います。ラクリィはあなたのことを愛している。

 この手紙を渡す相手、それはラクリィ自身が愛した女性という条件を付けてあります。

 渡す時にラクリィが何も言わなかったのは、自身の想いを伝えるつもりがないからです。

 霧と共に消えゆく自分が残る人に何かを残してはいけない、厳しい別れを強要させてはいけないと、そう考えているのです。

 あの人も同じようなことを考えていましたから。


 これを聞いてどういう感情が湧きましたか? 私は怒りが湧きました。

 どうせ消えてしまうなら、残された時間で愛しているということを存分に伝えてほしいと思うのはおかしいことでしょうか?


 そこからの私の行動は早かったですね。

 こちらから愛していると伝えて、こちらを心配するような理由を付けてきてはそれでもと言い続けました。

 やがてはあの人が折れて、その結果ラクリィが生まれました。


 ラクリィが生まれたことによって同時に迷いも生まれました。結局私達は霧を消し去ることが出来なかったことを考えれば分かるでしょう。


 しかし後悔はありません。幸せでしたから。


 あなたはどうですか? ラクリィのことを愛おしく想いますか? このままで終わって本当にいいのですか? 

 嫌ならば行動しなさい。ほしいものは自分の手で掴み取るのです。

 例えその果てに後悔が出てこようと、感じることのできる幸せを堪能しなさい。


 父親似のラクリィならば必ず拒否するでしょう。優しすぎますから。

 本当は戦うのも好きじゃない、平和に暮らしていたい。そんなことを考えているはずなのに、最終的には他人の幸せを願ってしまう。そんな優しさ。


 そんな人を幸せにしてあげるのが私達の役目じゃないですか?


 長くなりましたね。この辺で終わりにしましょう。

 私の墓はこの島にあるはずです。いい報告を期待していますよ』


 手紙を読み終えた私は涙を流していた。

 自分がこんなにも想われていたこと、そして死ぬことを受け入れている理由を知ったから。ラクリィの覚悟が嬉しくて悲しくて涙が止まらなかった。


「ラクリィ・・・・・・」


 その名前を呟くと、改めて愛おしいと感じることができる。


 最後の一文、ラクリィを幸せにするという人物。私はそれになりたい。


 ラクリィが優しい人間だということは誰よりも知っていたつもりだった。それなのにも掛からわず、ラクリィの心情に気が付いてやれなかった自分が恥ずかしくてしょうがない。

 しかし今ならまだ間に合う。ラクリィは必ず霧を消し去ると言うだろうが、そうだとしても最後のその時まで寄り添い合おう。


 私はラクリィの母親であるサリアさんのように強く、動ける女にならなくてはいけない。

 なんとしてでもラクリィの本音を引き出して見せる。


「待っていろ・・・・・・」


 涙を拭きマフラーを巻きなおして私は立ち上がる。

 決めた以上は燻ってはいられない。即座に行動だ。

 勝算はない、ただぶつかるだけなど私からは最も遠い行動だが、それでも良かった。


 今は一刻も早くラクリィの顔が見たい。キャロルに諭されても動けなかった私はもう終わりにする。


「いや、先にあいつの所に向かうか」


 やっておくことがある。全てをスッキリと終わらせるためには必要なことだ。

 私はすぐ隣で休むアロマの元へ、迷いをすてて足を運んだ。


 どういう結果になろうとも、最後の時まで私はラクリィを愛し続ける。





VRくん「フィオンの涙は反則だ……」

VRちゃん「普段は毅然としてるキャラが泣くと思うとこはあるわよね」

VRくん「頼むから幸せになってくれ」

VRちゃん「頑張ってきたご褒美があってもいいわよね」

VRくん「それな! 辛いことが大きすぎて可哀そうだ」

VRちゃん「最後もハッピーでは終わらなさそうだし、一時期くらいわね。 さて次回! 『幸せならば』 お楽しみに~」

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