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ミストライフ  作者: VRクロエ
前時代の痕跡編
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父親が残したもの1

 この島のことについて書かれた紙をフィオンに渡して、俺は父親からの手紙を読んでみることにした。

 今回のものは完全に俺に向けて書いたものだったので、俺だけ読めばいいとフィオン達は先に紙の方に書かれていることを整理するようだ。


 封を解くと数枚の紙が出てきて、それなりに量が多いみたいだ。

 それを順番に読んでいく。


『これを読んでるってことはラクリィもここに来ちまったか・・・・・・まあ、全く違う誰かの可能性もあると思うが、ラクリィだと思って書くぞ。


 親子揃って最終的には同じ場所に来るとはなぁ。ラクリィが来た目的はなんだ? 新たな力を求めて来たのか、それとも霧魔花を処理するためか・・・・・・いずれにせよ、お前にとってこの島は大きな分岐点となるだろうな。


 この手紙が置いてあった場所は、多分木造の家の中だと思う。その場所は俺とサリアが最後に過ごした場所だ。

 最後と言ったのは、俺もサリアももうこの世にいないからだ。お前の母さんであるサリアは俺よりも先に逝っちまった。長く戦いに身を置いていた反動で身体がボロボロだったんだろうな、まだ若かったのに・・・・・・

 俺もサリアが眠ったこの場所で最後を迎えることにした。お前に会いに行けなかったのは申し訳ないが、俺達の息子なら元気にやってると信頼してのことだ、分かってくれ。


 それに俺自身ももう長くないしな。


 色々と気になることもあると思うが、この島のことについては、もう一枚の紙にまとめてあるからそっちを読んでくれ。

 もう一度言うが、これはラクリィ、お前だけに残したものだ。


 今の世界はどうなってる? 相変わらずクソ王共が幅を利かせてるか?

 霧がある限りその時代が終わることはない。王を倒したとしても、必ず人の上に立つ人物が必要になる。自分たちの替えとなる人物を王達は用意しているから、直ぐに代替えされるだけだ。


 だからこそ俺とサリアはこの島に来た。霧を消し去る為に。

 だが、知っての通り俺達は霧魔花を処理してはいない。

 出来なかったんだ。ラクリィ、お前のことを想うとどうしてもな。


 知ってるか? 霧魔の民は霧の世界でないと生きていけない身体構造になっている。霧と共に生きるにつれて身体が変化していったんだと俺は考えてる。


 ラクリィもれっきとした霧魔の民だ。サリアは普通の女だったから何かしらの違いはあるかもしれないが・・・・・・能力も問題なく使えているのだとしたら、やはり霧魔の民としての要素の方が強いのだろうな。


 お前のことを想うと霧魔花を処理することをどうしても躊躇ってしまう。世界の為だとは分かっていても、まだ物心付く前に別れたのだとしても、お前は愛すべき俺達の息子だからな。


 結局処理出来ないまま月日が流れていくうちにサリアに限界が来てな。それからは残りの時間を2人で静かに暮らすことにしたのさ。

 サリアは最後までお前のことを気に掛けていた。いくら強くとも、俺の愛した女はどこまでも優しいんだ。


 サリアがお前に残した言葉は『ここはあなたにとって大きな選択を迫ることになる島です。最終的にどうするかはあなた自身が決めなさい。

 それともし、愛する女性がいて、気持ちを躊躇っているのだとしたら覚えておいて。何も伝えてもらえないのが一番辛いのですよ。別れが来るのは誰だって一緒です、ならば少しの間でも同じ想いを共有させてほしいものですよ』まるで俺への説教にも聞こえるな。


 ラクリィがどうかは分からないが、当時俺はサリアに愛しているという気持ちを伝えることに躊躇いがあった。

 霧を無くすという目的が果たされれば俺は死ぬ。だからこその躊躇いだ。

 まあ最終的には結ばれてお前が生まれた訳だが、気持ちを伝えなかった理由を言った時は剣で斬りかかられたな・・・・・・サリアがそれをやるとマジで洒落になってなかったぜ・・・・・・


 俺の息子なら同じことを考えてそうだな。

 だとしたら、サリアの言った通りそんなことで悩むのはやめた方がいい。

 別れに立ち向かう強さをその相手は持ってないのか? もしここに来るまでの道のりを共にした相手なら、信頼して後のことを任せるのも大事だと思うぞ?

 そんでもって出来れば孫の顔でも見せて欲しいもんだな!


 まあ何が言いたいかって、自分の気持ちには素直になれってことだ。

 それに安心しろ、俺の息子ならきっといい男に違いない、その相手もきっとお前に惹かれてると思うぞ。


 それとだが、ラクリィ惚れている女宛てにサリアがなんか手紙を残しているみたいだ。もし本当にそういう相手がいるなら、この手紙があった部屋の机にある一番下の引き出しを開けてくれ』


 一枚目の手紙にはここまでが書かれていた。

 親だからだろうか、俺がどんなことで悩むかを分かっているかのようだった。

 それに霧を消さなかった理由も、俺のことを想ってだったらしい。


 一度でいいから両親にあってみたかったものだ。


 俺は机の引き出しから、母親が残した手紙を取り出す。

 中身は確認していないが、それらしきものはあった。


 まだフィオンに気持ちを伝えるかどうかは決めかねているが、一先ずはこれを渡してみよう。






VRくん「父親も同じ悩みを抱えていたんだな」

VRちゃん「やっぱり親子ね。それにしても本当に見透かしたような手紙だったわね」

VRくん「ラクリィのことを本当に想っていたことが伝わってきたな」

VRちゃん「本当は同じ道を辿ってほしくはなかったんじゃないかしら?」

VRくん「結局行きつくのは戦いと消えることだからな」

VRちゃん「サリアさんはフィオンにどんなことを残したのかしら? さて次回! 『父親が残したもの2』 お楽しみに~」

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