突然の告白
フィオンが部屋に来た翌日、食堂でアロマと朝食を取っているとキャロル達がやってきた。
しばらく滞在すると言っていたキャロルだが、サレンさんとレイラさんも同様にキャロルと一緒に滞在している。
「おはようございますラクリィさん、それにアロマ王女も」
「王女は辞めてくださいよキャロルさん」
「あらあら、それは失礼しましたアロマさん。あなたも昔から変わりませんね」
「キャロルさんもですよ・・・・・・」
王族として顔を合わせたことのある2人は仲が良いのかよく分からないような会話をしている。
「丁度良かった。ラクリィさんには大事な要件があったので話す機会がほしかったのです」
「俺に?」
キャロルが俺に話したいこととはなんだろうか? しかも大事な要件らしい。そう聞くとどうしても身構えてしまう。キャロルは恐らくフィオンと同じくらい頭が回るので、一体どんなことを考えてそれを俺に言うのか、見当もつかない。
言葉を待っていると、先にサレンさんが口を開いた。
「先に謝っておきます。ごめんなさいアロマ」
「え? わたしですか? どういうこと?」
何故かサレンさんに謝られたアロマは混乱している。
アロマが謝られる内容とは、いよいよ訳が分からなくなってきた。
「早速本題に移りましょうか。ラクリィさん、私と子供を作りませんか?」
「・・・・・・はい?」
「ですから子供を作りましょう。余裕があれば婚姻も結んでいただけるとありがたいですね」
あまりに衝撃的なキャロルの発現に理解が追い付かず聞き返してしまった。
アロマに至っては驚きすぎで口を大きく開けて固まっている。
「えっと、つまりはキャロルは俺を結婚相手としたいと?」
「そうです」
「急だな・・・・・・どうしてそうなった?
「それについては私が説明しよう」
「レイラさん?」
キャロルの話をレイラさんは予め知っていたようだ。先にアロマに謝ったということはサレンさんも知っていたのだろう。
アロマの俺に対する気持ちを知っていたからこそ謝ったのだ。
「キャロル様は現在二つの国を治めている。今はどうにかなっているが、歳を重ねてくれば1人で維持するのは限界が出てくる。だから跡継ぎが必要なのだ」
「それでどうして俺なんですか?」
「キャロル様の相手を考えたときに私とサレンが条件を出したのだ。能力的に問題なく良い人格を持った人物。さらにはキャロル様もそういった行為をしても不快感を覚えないくらいには好意を持っている相手。キャロル様の幸せも捨てて欲しくはなかったからな。後は私とサレンも納得できる相手となると、ラクリィしか名前が上がらなかったんだ」
「キャロルはそれで本当に納得できたのか?」
「はい。ラクリィさんに好意を持っていることは本当ですよ? 人柄も志も、それから容姿も好ましく思います」
理由は分かった。しかしどうしたもんか・・・・・・
キャロルのことは別に嫌いではない。むしろ性格面や容姿でみたら、俺もどちらかといえば好ましいとは思ってはいる。
しかしそこまで深い関係になりたいと思う程かと聞かれれば、難しい話だった。
「だ、ダメです!」
「あら? アロマさんは口を挟むのですか?」
「らっくんの意志が一番大事ですから!」
「勿論ラクリィさんの意志は尊重しますよ。それに婚姻を結んでくれれば一番ですが、無理なのならば一夜限りの関係でも私は構わないのです」
「なっ!?」
「何の話をしているんだ?」
「フィオン! 丁度いいとこに! フィオンからもキャロルさんに言ってよ!」
朝食をとりにきたフィオンが俺達が話しているのを見てこちらにやってきた。
フィオンはこの話を聞いてどう思うのだろうか・・・・・・
出来ることなら否定して欲しいと思ってしまう。きっとこれが惹かれているという気持ちなのだろう。
「何の話だキャロル?」
「ラクリィさんを私がもらってもいいですか? という話です」
「? 良く分からないな。ミストライフから引き抜いてメリユースに連れていきたいというのなら辞めてもらいたいが」
「そういうことではなく、恋愛的な意味合いでです。ラクリィさんと結婚、無理なら子供だけでもいただきたいと思いまして」
「は!?」
「別に構いませんよね?」
もはや決定権は俺に殆どないと言ってもいいかもしれない。
結婚に関しては断れば大丈夫だろうが、どうしても俺と子供を作ってほしいみたいだ。
「だ、ダメだ!」
「あら? フィオンまでそう言うのですか・・・・・・別にラクリィさんと恋人というわけでもないのでしょう?」
「そうだ、がダメだ!」
「どうしてです?」
「それは・・・・・・私が嫌だからダメなんだ」
顔を真っ赤にしながらダメだと言い続けるフィオン。
一生折れなさそうな勢いに、流石のキャロルも諦めたようでため息をつく。
「全く・・・・・・フィオン、後で話があります。時間を作ってください」
「あ、ああ。分かった」
キャロルが折れたことにほっとしたのか、フィオンは落ち着きを取り戻していた。
頼みから俺の意見も聞いてくれという気持ちだったが、そういった方面に完全に疎い俺が口を挟んでも意味がなさそうだった。
話が終わったことを確認して、俺は静かに食事を再開するのだった。
VRくん「一気に恋愛方面を進めるなんて……やはりキャロルは強い」
VRちゃん「それぞれの心情が浮き彫りになってるわね」
VRくん「フィオンはどうするんだろうな?」
VRちゃん「キャロルは何か察したみたいだし何とかするんじゃないかしら? さて次回! 『特別な感情』 お楽しみに~」