解析終了
ファーニーの特訓や生活班の手伝いなど、様々なことをしながら過ごしていると、フィオンから資料の解析とまとめが終了したと報告を受けた。
詳しい話を聞くために、今回は訓練場ではなく、研究室に来ている。
独特な雰囲気のあるこの研究室に来たのは結構久しぶりだ。俺が来ても出来ることは殆ど無いので来る機会がなかったのだ。
コナット以外の研究班のメンバーはきていない。頭の使い過ぎで今は休んでいるのだそうだ。
現在この場には俺達調査班のメンバーとフィオンにコナット、それからキャロルとレイラさんとサレンさんも来ていた。
後でもう一度同じことを話すのは面倒だとフィオンが言っていたので、ファーニーと共に呼んできたのだ。
戦争は落ち着いており、多少ならば国を外しても問題ないということなのでそのまま連れて来たというわけだ。
「待たせたな。ようやく持ち帰った資料の解析が終わったので、その内容と今後の動きについて話して行こうと思う」
今後の動きまで決まっているとなれば、霧魔花の群生地について何かが分かったということだろう。
「まずは前時代の歴史にについて話していく。コナット、まとめたものをくれ」
「はい、こちらです」
前時代の歴史については資料を見つけた研究所に行った時に軽く聞いている。
戦争をしていたという点では今と変わらない。目的やパワーバランスに関しては全く違ったみたいだが。
「この時代には二つの大きな国が存在した。それ以外にもあったみたいだが、その二つの国のどちらかに属するような形だったみたいだ。その辺の国に関してはあまり関係ないので省こう」
今でいう農村などがその国にあたるのだろうか? 霧がなく土地が今よりも遥かに多く使えたのだとしても驚くべきことだ。
「霧魔花を生み出した国、つまりはこの資料を見つけた研究所があった国は魔法により様々な技術が発展していた。私とラクリィが行った研究所の設備が生きていたことに関して現在とは比べ物にならないと言えるだろう」
「自動で明かりが点いたりしていたやつか?」
「そうだ。あれは今で時代にはない技術だ。そしてこれだけの国を追い詰めていたもう一つの国は、大半の人間が異能者という考えられないような国だ」
「国の大半が異能者ですか・・・・・・それはまた規模の桁が違いますね」
キャロルが絶句しているが、それも無理はない。
二つの国のトップに立つ者として、今抱えている異能者は把握しているだろうが、それを全員集めても村という単位にすらならないだろう。
それが国単位で成り立っているのだ、驚かない方が無理な話である。
「言わば魔法の国と異能の国があったわけだ。魔法の国で生まれた異能者は、その殆どが異能の国へと渡って行ったらしい。逆のことも起きていたみたいだが」
まあ分からない話ではない。魔法の国で生まれる異能者というのは本当に一握りで、滅多にいなかっただろうが、異能の国で生まれる異能を持たない者は結構な数がいただろう。
周りは皆特殊な力が使えるというのに、自分は使えないとなっては、国を移るのも頷ける。
「二つの国は仲良くはないながらも、お互いに上手くやっていた」
「でも戦争が起きたんでしょ?」
「ああ。きっかけは異能の国の上位層の人間が一新したことだったみたいだ。異能の国に魔法の技術が合わされば、さらに発展していくと」
思想的には悪くないものだ。だが、とった方法が最悪だ。
「魔法の国に技術の共有を求めればよかった話しなのだ。提供できるものもあっただろうに。しかし異能の国は傲慢にも奪うことを選択したんだ」
奪う為の戦いになど意味はあるのだろうか? もし今の世界で民を生かす為にその選択を取ったのなら、まだ理解できたかもしれない。でも異能の国はなに不自由なく暮らせるような国だっただろうに、それ以上を望んで戦うのならば傲慢としか言えない。
「魔法対異能、どちらに分があるかなど言わなくても分かるだろう。確かに異能がなくとも異能者に勝つことは出来る。しかし戦争という規模で何人もの異能者が戦場に出ているのだ。ひっくり返すことなど出来るはずもない。そうして魔法の国は敗北とまではいかないながらもどうにか保つことしか出来なくなったのだ」
それでも即座に滅ぼされなかっただけ魔法の国がどれだけ頑張ったかが分かる。
「いずれ訪れる敗北に抗う為に魔法の国は様々な研究をした。中には非人道的なものまである。それだけ必死だったのだろう。その結果は人工的な異能の発現や、ファブニール、今はファーニーだったか? を生み出したのだ」
「でもファーニーは戦場には出されなかったんでしょ?」
「それは少し違う、出さなかったのではなく出す前に全てが終わってしまったんだ」
「それって・・・・・・」
「生み出されたものの中でも最悪のものと言って良いだろう。霧魔花が完成し、それを一早く使ってしまったことで魔法の国も異能の国も関係なく滅んだんだ。霧魔花は想定通りの結果を示した、自分たちに被害を及ぼさないために霧を弾くための装置と人が順応するための薬も先に開発されていた。しかし、正常に作用したのは弾くための装置のみで、薬の方は一部の人間にしか効果がなかった」
「霧魔の民のルーツか」
俺の祖先はその一部に該当する人達。他に生き残れたのは装置とやらが動いていた場所で生還したのみだろう。
逆転の一手になるはずの霧魔花は結果的に人類全てに牙をむいたのだ。
VRくん「いよいよこの作品も終わりが近づいてきたか?」
VRちゃん「近づいてはいるけどまだまだ先よ」
VRくん「ここからまだ何かあるのか!?」
VRちゃん「そう簡単には終わらないわ。 さて次回! 『分かたれた場所』 お楽しみに~」