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ミストライフ  作者: VRクロエ
前時代の痕跡編
153/226

兄妹対決

 ヤカサスの突撃に対して、キャロルは自身とヤカサスの間に斥力場を発生させてヤカサスを吹き飛ばした。


「ヤカサスの始末は任せてください。レイラとサレンはあの2人をお願いします」

「「分かりました」」


 後方に吹き飛んでいったヤカサスをキャロルは追っていく。

 初速から凄まじい速度が出ていたのは、先程の応用で自信と地面の間に斥力場を発生させてのことだ。


 グラビティサークルの射程にヤカサスが入ったのと同時にキャロルは圧し潰すように重力を発生させる。

 流石に兄妹というだけあってヤカサスは読んでおり、軽く回避をして再度斬りかかってくる。


「愚かな妹だ。この僕に逆らうなんて!」

「愚かなのはあなたですよ。自身の力を過信して、増長して、愚かにも五芒星に身を置くなど」

「はっ! それを理解出来ないから愚かだと言っているんだ!」


 ヤカサスの剣をキャロルは軽く受け止める。

 剣という点においてヤカサスは脅威ではない。キャロルもそこまで高い技術を有している訳ではないが、受け止めることは容易だった。


 キャロルは斥力場による移動で機動力が大幅に上がっている。さらには引力も応用しているので小回りも完璧にきいていた。

 先程のようにヤカサスを吹き飛ばさないのは、至近距離だと自身まで吹き飛んでしまう為だ。


「ちょこまかと・・・・・・」


 圧倒的なキャロルの速度にヤカサスは完全についていけていない。見えない壁を作り出すエアストップの発動が完全に追い付いていなかった。


「王が支配する時代は終わります。その後の世界にあなたは不要なのです」


 急接近したキャロルの放つ剣がヤカサスの頬を掠める。


「調子に乗るなぁ!」


 ヤカサスが即座にカウンターで剣を振るう。それだけでは当たらないと分かっているのでキャロルの周囲には既に壁が形成されていた。

 一見すれば逃げ道はない。捌くための動きも抑制されるほどに狭い空間がキャロルの周りには出来上がっていた。


 だがキャロルには焦ったような表情はない。

 それもそうだろう。実際ピンチでもなんでもなく、ヤカサスの剣はキャロルに届くことはないのだから。


「なぁ!?」


 剣がキャロルに触れる瞬間、何かに阻まれるように剣が止まる。


「剣を受け止めるのに大層な力は要らないんですよ」


 剣を止めた正体は斥力場だ。

 キャロルはヤカサスの放つ攻撃の重さを先程剣で受け止めた時に把握しており、それを考慮した上で、自身には影響が出ないが、剣が当たらなくなるほどの強さで斥力場を発生させたのだ。

 生半可な攻撃ではキャロルに届きすらしないのだ。


 次にキャロルは剣の中心に引力を発生させる。すると剣は何の抵抗もなく歪んで使い物にはならなくなった。


「この戦争においての懸念は、不確定要素の強い五芒星のメンバーだけだったんです。別にあなたは脅威でもなんでもなかったんですよ。こうして私が出てくれば解決することなので」


 そう、キャロルにとってヤカサスは勝敗を分ける要因ではないと元々考えていた。

 頭脳においても強さにおいても自分の方が明確に上だと、ヤカサスのように己への自身ではなく、正しく分析した上で判断していたので、不確定要素以外のことは何も心配などしていなかった。

 その不確定要素に関ししても問題は無いと既に判断している。ヤカサスと共にいやあの2人のことはキャロルも知っていたので、レイラとサレンならば問題なく勝てるレベルだと即座に割り切ったからこそ、こうしてヤカサスの相手を大人しくすることにしたのだ。


「さて、無為な犠牲が増える前に終わらすとしましょう」

「ま、待て!!!」

「待ちません。あなたはやり過ぎました。その責任は兄妹として私が取ることとします」


 ようやくキャロルが脅威だと認めたヤカサスだがもう遅い。

 ヤカサスの身体が宙に浮く。次の瞬間にその身体が吹き飛んでいった。


 それで終わりではない。ヤカサスの身体は上空で角度を変えてさらに吹き飛ぶ。

 斥力と引力により、空中で無抵抗のヤカサスはたらいまわしになっていた。

 脳が揺れ、視点が飛び、エアストップで自身の身体を固定することは叶わない。

 仮に出来たとしても、この速度でぶつかればどうなるかは想像に難くないが。


 キャロルは無慈悲にそれを続ける。空中で叫びを上げながら振り回されているヤカサスを見るその顔には、同情する気持ちなど一切なく、あまりにも無表情だった。


 そんなことを一分程続けた後、ヤカサスはようやく地面に戻された。

 立ち上がることなど出来る訳がない。地面に倒れて焦点のあっていない目を虚空に向けるヤカサスに、王の威厳などどこにもなかった。


「さようならヤカサス。愚かな私の兄」

「や・・・・・・やめ――――――」


 キャロルの声は聞こえていたのだろう。命乞いをしようとするヤカサス。

 だがそれを言い終える前にキャロルは引力でヤカサスを圧し潰した。

 そこに残ったのは血の池だけ。誰もこれがヤカサスだとは認識できないだろう。


「まだまだやることが多いですね・・・・・・」


 今後のレホラについても考えなければいけないキャロルは、小さくため息を吐いたのだった。


VRくん「いや、つっよ……」

VRちゃん「ふたを開ければボコボコだったわね」

VRくん「なんかもうヤカサスが可哀そうだ」

VRちゃん「まあキャロルも言ってた通り愚かだったってことよね」

VRくん「最後まで何もいいところがなかったな」

VRちゃん「こういうキャラがいてもいいじゃない、キャロルの有能さがはっきりしていて」

VRくん「そういうの咬ませ犬って言うんだぞ」

VRちゃん「お役目ご苦労様でした。 さて次回! 『異能がなくても』 お楽しみに~」

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