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ミストライフ  作者: VRクロエ
前時代の痕跡編
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ファブニールの強さ

 拠点に戻り、調査班の皆や研究班の人達に、ここ数日あったことを話した。

 皆目に見えて喜んでおり、研究班の人達はやる気を漲らせている。


 ファブニールのことは最初こそ驚いていたが、一切の危険がないことに加えて、人懐っこい性格もあってか直ぐに可愛がられることとなった。

 完全にペット感覚で接しており、いつの間にかファーニーという愛称で呼ばれるようになっている。

 基本的には俺達が使っている訓練場で過ごしており、餌は必要としてないみたいだが、長い間どうやって何も食べずに生きて来たか頭を悩ませた結果、霧を栄養に変えていることが分かった。


 そうならば簡単だ。適度に外に出すか、俺の霧を与えてやればいい。

 どちらも与えてみた結果、外の霧よりも俺の霧の方が好きらしく、顔を見るたびにせがんでくるようになった。


 ペットとして完全に馴染んでいるが、そろそろ戦いについても確認しておかなくてはならない。

 フィオンは今手が離せないので、俺達は何もすることがなく暇だった。

 なので今日はファーニーを交えて訓練しようと集まった。

 見学したいと言ったルコとミールも来ている。


「さて、何するのらっくん?」

「どうせだから軽くファーニーと戦ってみようと思う」

「え? ファーニーちゃんと戦うの?」

「可哀そうです・・・・・・」


 俺の言葉にルコとミールは不安そうな顔をする。


「大丈夫! ラクリィも流石に傷を付けたりはしないでしょう。剣の刃を潰したものを使うわよ」

「なんだかんだでラクリィもこいつを可愛がってるしな」


 ミシェとトアンが安心させるように言い聞かせる。

 勿論傷つけることはする予定じゃない。今の俺が本気で戦えば傷を付けるどころか殺してしまいかねないので、しっかりと手加減はするつもりだ。

 単純にファーニーがどの程度戦えるのかを確認するだけに留める。


 俺としてはファーニーには戦力としても期待している。ハクラやシェダと戦わせるつもりはないが、何かあった時に拠点を守ってもらったり、皆を逃がしてくれることをしてもらいたいのだ。


 フィオン達が資料の解析を済ませれば、俺達は群生地に向かうためにしばらくの間拠点を開けることになるだろう。そうした時に仮に五芒星に拠点の場所がバレると、対処出来なくなる。ファーニーにはある程度の牽制、そして生活班や研究班の皆をメリユースの王都に運んでもらう役目も担ってもらう。


「ファーニー、今から俺とお前で戦う。お前は本気できてくれ」

「グ、ガァ・・・・・・」

「気にしなくていい。必要なことなんだ」


 俺と戦うことをためらうファーニーに言い聞かせて、俺は刃を潰してある剣を構える。

 ルコとミールは戦闘の余波だけでも危ないので、アロマとイルミアに守るように伝えて下がってもらった。


「いくぞ」


 俺はフェイントも何もなしにそれなりの速度で接近する。

 間合に入る少し手前でファーニーは地面を蹴り、翼を広げて浮かびあがった。


 上を見上げる俺に対して、ファーニーは口から炎を吐き出してくる。

 魔法のように火の玉のようなものが飛んでくるのではなく、広範囲にまき散らされるような炎だ。


 炎が当たる瞬間、俺はボディーミストを使う。

 傍から見れば飲み込まれたように見えるだろう。ファーニーも当たったと思い空中で止まっている。


 俺はファーニーのすぐ上空、空中で実体化し剣を振り下ろした。


「グァ!?」


 驚いたように鳴くファーニーだが反応は早く、即座に身を回転させて尻尾をぶつけてくる。

 ファーニー程の巨体が放つ物理的な攻撃を受けきるのは難しい。俺は即座に剣の理を発動させて、三本の霧の剣を使い受け止めた。


 受け止められたことによりファーニーの動きが止まる。その隙に再びボディーミストで、頭側に移動して剣を叩きつけた。


 刃は潰してあるとはいえ、ある程度の衝撃があったはずだ。

 ファーニーは痛がるような素振りを見せると、翼を傍目かせて距離を取り、次の瞬間その姿が溶けるように消える。


 フィオンが目を通した資料に載っていた擬態だろう。

 情報通り精度は素晴らしく高く、さらには物音まで消えているようだ。


 人の感覚で捉えることは不可能に近い。

 だが、俺には通用しなかった。


「見えてるぞ?」


 探知により目に見えないものでも捉えることの出来る俺の感覚には、ファーニーがただ突進してくる姿が見えていた。

 甘えた行動。それを躾けるかのように、俺は軽く躱して腹部を剣で叩いた。


「グァァァァァ!!」


 腹部は他の場所と比べて柔らかくなっているので、今度はしっかりと痛かったようだ。

 悲鳴のような鳴き声を上げながらファーニーは蹲るように倒れる。


「ここまでかな」


 長くない戦いだったが、ファーニーが戦いに慣れていないのはよく分かった。

 恐らくは外敵もいなく、閉鎖的な空間にずっといただろうから仕方がないことだが、これは少し考える必要がありそうだった。


 俺は終わったことをアロマ達に告げて、倒れるファーニーの傍による。

 可哀そうだが、俺達の仲間になる以上は最低限戦えるようになってもらわねば。



VRくん「強いのかと思いきやそうでもないのか?」

VRちゃん「戦闘経験がなさすぎるせいね。ポテンシャルだけなら霧魔獣トップよ!」

VRくん「なら今後に期待だな」

VRちゃん「ラクリィが育てるんだから化けそうよね。 さて次回! 『ファーニーの特訓』 お楽しみに~」

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