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ミストライフ  作者: VRクロエ
前時代の痕跡編
145/226

前時代の研究所

 驚きはしたが、明るくなったことにより歩きやすくはなった。

 外と比べて内部はかなり綺麗な状態で、長いこと人が訪れていなかったこともあってか、埃などの汚れも少ない。


 何があるか分からないので、分かれて探索するのは辞めておく。

 一先ず近くにあった部屋に入ってみることにした。


 部屋の中には机や本棚、それからベッドなどがある。きっとここにいた研究員の部屋だろう。

 何か群生地への手がかりなどの情報が見つかるかもしれないと、一冊の本を手に取って開いてみた。

 文字は今と違いがないようで読むことが出来る。肝心のないようだが、研究に関する本ではなく、この時代にあったであろう趣味などの範疇に収まる内容の本だった。

 それ以外の本もフィオンと手分けして中を確認したが、役に立ちそうなことが書いている本は一冊もなかった。

 机の引き出しなども確認してみたが、生活するための物しか入っておらず、この部屋にはこれ以上何もなさそうなどで次に移動する。


 そんなことを繰り返しながら、今いる階層は全て調べたが、ミストライフにあるような、単なる居住スペースのようだった。


「上と地下、どっちに向かう?」

「ラクリィはどっちが良いと思う?」

「上かな。地下にか確実に何かあるだろうけど、その前に一通り調べておくのも悪くないんじゃないか?」

「そうだな、では上に向かうとしよう」


 かなり大きな建物なので、地下以外にも確実に何かあるはずだ。ならば最も怪しい場所は最後でもいいだろう。

 この建物がある場所には霧がない、上の階層で時間が掛かっても、最悪寝泊まり出来るのなら焦る必要はない。


 階段を上がり、上の階に移動する。そこは先程の階とは違い、部屋が沢山あるわけではなく、一つの扉があり、その中は明らかに何かを研究していたであろう痕跡があった。

 大きなショーケースや、既に中身は無いが液体を入れていたであろう容器。さらには何と人骨や、動物の骨も転がっていた。


「気味の悪い所だな」


 元研究者であるフィオンの目から見ても、ここは気持ちのいいと言える場所ではないようで、軽く眉を寄せている。

 だからといって調べない訳にはいかないので、我慢して何かないか探してみる。


 研究で使っていたであろう器具などは俺が見ても何が何だかさっぱりなので、そちらはフィオンに任せて俺は文字で研究のことが記してあるものがないか探してみることにした。

 といっても、ありそうな場所など限られているので、直ぐに見つけることが出来た。どんなことが書いてあるのか中身を確認してみる。


「これは・・・・・・」


 専門用語などで良く分からない箇所もいくつかあったが、なんとなく何が書いてあるのか分かった。


「フィオン! ちょっと来てくれ!」


 フィオンをこちらに呼んで中身を確認してもらう。


「これって、異能のことだよな?」


 スラスラと読み上げたフィオンを確認した後に、俺の認識があっているのかを確認する。


「ああ、間違いなく異能についての研究だな。しかしこれが本当だとするのなら、霧で対抗しようとした理由も頷ける」


 中身をようやくすると、この時代には二つの国が戦争をしており、この研究所を作った国と敵対していた国は全ての人間が異能を使うことが出来たらしい。

 勿論、そんな国に対して勝てる見込みなどないが、こちらの国では人工的に異能を使えるようにする実験が行われており、しかも成功まで漕ぎつけていたようだ。

 しかし成功率は高くなく、失敗により多くの人が命を落とした。そこで今度は動物を調教し、さらには限定的な異能を発現させて運用できないか、そういった研究もしていたみたいだ。


「つまりここにある骨って・・・・・・」

「実験に使われた人や動物のものだろうな。おぞましいことこの上ないが、必死だったのだろう」

「それにしても、霧魔花が作られる前から人は争ってたんだな」


 今は名目上数少ない資源を巡って戦争をしている。

 前の時代はどうだったのだろうか? もしかすると霧が無くとも何かに困っていた可能性もあるが、可能性としては考えにくい。


「どの時代にも野心に燃える者がいたんだろうな・・・・・・今ある物だけじゃ満足出来ないような奴が」


 きっとフィオンの言った理由なのだろう。

 野心家といえば俺の中に真っ先に出てくるのはヤカサスだ。力を持てばさらに欲しくなる。

 戦争を仕掛けたのは恐らくもう一つの国の方だろう。戦力で圧倒的に劣っているのにも関わらず仕掛ける意味は無いからな。


「この時代に関してはもう少し調べる必要がありそうだな。ここまでの技術を持っている国も全ての人間が異能者の国も結果的に両方滅びたんだ。霧だけが原因で起こったにしては余りにも悲惨な結果になっている」


 そう、問題はそこだ。

 仮に霧魔花の望んで生み出したのだとしたら、何故作り出した国までもが滅ぶ結果となった? 霧魔の民すら意図的に作り出されたのにも関わらず、そこがあまりにも不可解だ。


「ラクリィ、ここの探索は一先ず終わりだ、早急にこの時代のことについて乗っている資料を探すぞ」

「分かった」


 俺達は知らなければならない、この研究所が作り出された時代のことを。

 そうでなくては、霧を消し去ったとしても、また同じ未来を辿ってしまうと確信できた。


VRくん「霧が広がる前の時代も色々とあったんだな」

VRちゃん「人道的な実験だけどそうでもしないとやってられなかったのね」

VRくん「相手国全員異能持ちとか無理くね?」

VRちゃん「今の異能者たちとの関係も気になるところね。 さて次回! 『作られた魔獣』 お楽しみに~」

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