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ミストライフ  作者: VRクロエ
王都決戦編
142/226

かつての因縁

 顔を見合わせて言葉を交わすサレンさんとマキアさん。それを見ている俺達は全員目を丸くしていた。いや、フィオンだけはどうやら知っていたようで、特に驚いた様子は無い。


 一体この2人はどういう関係なのだろうか? マキアさんは確かシノレフの出身だったはずなので、関わる機会など無いはずなのだが・・・・・・サレンさんもメリユースで生まれ育ったと前に聞いてことがあったので、どういった関係なのかは予想が付かない。


「あなたがミストライフにいるなんて・・・・・・どういう風の吹きまわしかしら?」

「色々とあったのよ・・・・・・レイラは元気?」

「ええ、今は軍部のトップよ」

「出世したわね。まあ、能力的には申し分ないだろうけど」


 2人の会話にはレイラさんの名前も上がる。レイラさんも生粋のメリユース国民なので、やはりマキアさんとは接点が無いはずなのだが・・・・・・

 やり取りの軽さから、それなりに深い関りがあったことは分かるが、何をどうしたら違う国の人間同士でここまでの関係を築いたのだろうか?


「あ、あのー・・・・・・2人はどういう関係なんですか?」


 俺と同じく困惑していたであろうアロマが、遠慮がちに質問する。


「それはですねアロマ」

「簡単に言えば、何度も戦った敵、因縁の相手とでも言いましょうか・・・・・・」

「まだ私とサレンがただの一兵だった頃に、同じく兵士だったマキアとは戦場で何度も剣を交えました。結局、決着はつかずにお互いに戦場へは出なくなりましたが・・・・・・まさかミストライフにいたなんて」

「え、戦場? マキアさんって戦えたんですか!?」


 マキアさんが元軍人だと聞いてアロマは驚きの声を上げる。

 俺も同じ気持ちだ。普段の物腰柔らかく、優しい雰囲気のマキアさんからは、戦場で戦っているところなど想像出来ない。

 しかもサレンさんやレイラさんと決着がつかなかったということは、軍の中でもかなり実力があったのではないだろうか?


「昔は、まあそれなりには戦えましたね」

「それなりって・・・・・・よく言いますね、私とレイラの2人掛かりでも倒しきれなかったあなたがそれなりな訳がないでしょうに・・・・・・」

「どれだけ言っても結局昔の話ですよ。今はもう剣は握ってませんし、いざという時もどこまで戦えるか・・・・・・」


 今のマキアさんは生活班のリーダー、戦いとは程遠く、兵士というよりも子供達の母親役という方がしっくりくる。


 それにしても敵だったのにも関わらず、今話している中で、お互いに険悪な雰囲気は出ていない。むしろ、旧友と久々に会ったときのような感じだ。


「敵だったのに、そうしてそこまで仲が良さそうなんですか?」


 おもわず気になって聞いてしまった。かなりデリケートな問題だとは思うが、口から出た言葉を取り消す手段は無い。


「そうですね・・・・・・先程も言ったように、昔の話です。それに恨むようなことがあったわけでもありませんし、むしろ言葉を交わした数ならば、その辺の兵士達よりも多いですので。ラクリィも、戦場で戦って兵士と今対面して恨みつらみが湧いてきますか?」

「・・・・・・どうですかね? 実際にその場面になってみないと何とも言えませんが・・・・・・俺に対して恨みを持っている奴は多いと思いますよ」


 サレンさんやマキアさんがどうだったかは分からないが、俺は多くの兵士達を殺してきた。それに対して恨みを持っていない奴は多いだろう。

 俺自身はこれといって恨みがある相手は思いつかない。戦いの中では、それどころではなかったからだ。


「サレンとレイラが出てくる戦場では、毎回の如く私達だけの戦闘になっていましたから感覚的には分からないかもしれませんね。確かに2人に殺された兵士で未だに顔を覚えている者もいますが、今更恨む気持ちは湧いてきません。戦争の真実と、後は私が割り切れる性格というのもあるでしょうが」

「割り切れるものなんですか?」

「兵士というのはそういうものです。逆にラクリィは共に戦場に立って者で、その人が誰かに殺されたとして、その相手を憎悪する気持ちになる、それ程の者が国にどのくらいいましたか?」


 言われてみて少し考える。

 アロマはまず間違いなくそうだが、国にいた頃となると確かにそう思う相手は殆どいない。アロマ以外にはサレンさんと、今ならレイラさんもだろうか・・・・・・

 マキアさんが今言った割り切るという言葉。淡白に聞こえるかもしれないが、紛れもない真実なのだろう。


「戦争とはそういうものです。それに、今は同じ目標に向かう者同士です、互いに認め合ってもいるからこそ、こうして言葉を交わすこと、仲良くするということが出来る。別に元から嫌い合っていた訳でもないですしね」

「マキアには何度も苦渋を舐めさせられましたけど、そもそも人間として悪い者だとは元々思っていませんでしたから」


 そう言って2人は互いに微笑み合う。いい関係だと思った。

 かつて敵だったのだとしても、昔のことだと笑い合える、2人の性格もあるだろうが、それを羨ましくも感じた。


 俺はミストライフに入る前、兵士だった頃は、終わりの見えない戦争で敵を殺すことに嫌気が差していた。

 今でも過去に人を沢山斬ったことは、心の傷になっている。許されるとも思わない。けれども2人のように、罪悪感を抱えながらも、こうして笑えればと、今はそう思った。


VRくん「そんな裏話があったのか」

VRちゃん「サレンが昔兵士だったのは既に出てた設定だけど、マキアはキャラ紹介で仄めかせただけだったから予想出来た人は少ないんじゃないかしら?」

VRくん「でも昔とはいえサレンとレイラが2人同時にかかって倒しきれなかったってかなり強そうだな」

VRちゃん「そうね、あの2人はフィオンに負けたことでそんなに強くないと思われがちだけど、実際には五芒星のメンバーといい勝負出来るくらいには強いわ」

VRくん「マキアの戦うところもいつか見てみたいな」

VRちゃん「出てくるかしらね? もう剣は握ってないって言ってたけど…… さて次回! 『今、やるべきこと』 お楽しみに~」

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