犯罪組織
ついにこの作品も本筋にのっていきます。
何も答えになっていないフィオンの言葉にただ困惑することしか出来なかった。
フィオンは仲間になれと言ったが、ミストライフとはまず何なのだろう。何やら組織っぽいが、所属している国はまずメリユース王国ではないだろう。
それにフィオンについてだ。
見た目はぱっと見15歳ほどにしか見えないが、威勢のいい子供とはとても思えない。何故だか油断ならない雰囲気を放っている。
長い蒼髪から覗く綺麗な瞳はまるでこちらを見透かしているように感じた。
慎重に言葉を選んだほうがいいだろう。
「仲間になれと言われても、まず詳しい説明がほしいな。あんたのこと、そしてミストライフのことも。答えはそれからだ」
状況がわからない以上、脱出を考えるよりなるべく情報を引き出すのが先だろう。今のところフィオンに敵対意志が無いのは僥倖だ。
「そうだな・・・・・・では、わたしのこととミストライフのことどっちから聞きたい?」
「じゃあミストライフのことから」
「ではミストライフのことから説明するとしよう。少々長くなるから楽にしてくれ」
そういうとフィオンは椅子に座った。俺も聞きやすい姿勢になる。
「まず初めに――――――ミストライフとはどこの国にも属さない組織だ」
「ん? だがそれはあり得ないんじゃないか?」
組織とは簡単に言ってしまえば軍のように属する王国の意向に沿って動くものだ。つまりは大なり小なり国から認知され認められている。
だが国を介さず独自に作られた組織とは犯罪組織となり、即座に潰される。
仮に潰されなかったとしても、この限られた世界では表立って何かをすることは出来ない。ありえないと言ったのはそういった理由だ。ここにはそれなりの設備がそろっていそうである。
「まあそう思うのも無理はない。だが本当のことだ。4国からも追われているぞ」
「でもそれなら俺が知らないのはおかしい。犯罪組織なら軍に知らされている、それもこんな大きい組織ならなおさらだ」
「その理由はミストライフが持ってる情報が理由だろう。何せこの世界を揺るがしかねない情報をいくつか握っている。安易に接触してそのことが知られでもしたら困るだろうからな。ま、わたしも安易に広めていいものではないと思ってはいるが・・・・・・」
どこの国とは言わず世界と言ったのには何か引っかかるものがある。
フィオンの言葉通りなら、その情報は4国共通で知られてはまずいものなのだろう。
「どんなやばい情報かはわからないが、聞かせてくれるんだろ? 俺が言うのもなんだが、仲間になると決まったわけではない俺にそんなこと話してもいいのか?」
「構わないさ。わたしが知っているラクリィという男なら、全ての説明を終えた後は必ずわたしの手を取る。これはそうだな・・・・・・わたしなりのラクリィに対する信頼だ」
「まだ出会ったばかりで信頼とか言われてもな――――――」
フィオンは軽く笑うと体をほぐすようにしてから座りなおした。
その笑みに何故かドキッとさせられるが顔には出さない。
少し話しただけだが、フィオンには何か引き付けられるものがある。カリスマ性か女としての魅力か、心が揺さぶられるような感覚があった。
「では本題に戻ろうか。重要なことは2つ、まずは霧のことから話そう。
ラクリィ、霧とはなんだと思う? どうやって発生していると思う?」
「なんだと思うと聞かれてもな・・・・・・、生き物に有害な毒素? そんな感じに聞いている。発生原因は不明だろ、各国が研究してるが何も分かっていないのが現実だ」
「ここが大事なことだ。実はな、霧についても、そしてその発生原因も分かっているんだ」
「――――――は!?」
思わず間抜けな声が出てしまう。
「霧とは簡単に言ってしまえば魔力だ。生物はその量に違いはあれど空気中から魔力を取り込み循環させ放出する。魔法はその魔力を体内で変質させて放つものだ。
基本的に魔力に害はないが、霧は別だ。霧は通常の魔力と違い循環しながら細胞を破壊していく。魔法として放出することも出来ないため、1度取り込むと霧のない土地で自然に抜けるのを待つしかない」
フィオンの言っていることは本当のことなのだろう。
だが何故公表されていない。別段困ることもなさそうだが。
「まあこれは別にどうということはない情報だ。問題は発生原因だろう」
そうだった。フィオンが言うには霧の発生原因まで分かっているらしい。重要なのはここからだろう。
「その発生原因だがな――――――、花だ」
「花? 花なら王国の町中にも生えてるぞ」
「まあ花なんだが、その辺に生えてる花ではない。真っ白な12枚の花弁がある特徴的な花だ。わたしたちは霧魔花と呼んでいる」
これも勿論嘘ではないのだろう、もとより疑ってなどいないが。
だがこのことを聞いても、重要な情報だし世界に大きな影響があるのはわかるが、公表しない理由がわからない。何が困るというのだろう。
「何故この情報が広まると困るんだ? 一体だれが困るんだ!」
思わず声を荒げてしまう。そして同時に公表しない4国、そしてフィオンに怒りが湧いてきた。
原因さえ分かっているのなら、あとはそれを排除するだけなのに。そうすればこの戦争も終わり、俺とアロマが夢見た世界になるのに。
「落ち着け。ラクリィの気持ちも分かるが、まだ話は終わっていない。
ここまでの話をふまえて、次はこの戦争の真実を教えてやる」
俺が本当の衝撃を受けたのこれからの話だった。