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ミストライフ  作者: VRクロエ
王都決戦編
136/226

アロマの兄弟

 サレンさんと合流し、疲労の激しい兵士達を残して俺達はシェダがいるであろう玉座の間に向かっていた。

 その道中は特に五芒星のメンバーが出てくることはなく、ただ静かな廊下を進んでいるだけだった。


 アロマの伝手で数度だけ訪れたことのある玉座の間は既に目の前だ。


「サレンさん、レイラ中佐、準備をお願いします」

「シェダがいるのか?」


 俺の探知が捉えた中の様子では2人の人がいるのが分かっている。そのどちらもシェダではない。


「シェダはいないみたいだ。だけど中にいる2人はどちらも異能持ちだから気は抜けない」

「分かった。レイラとサレンは私とラクリィのサポートをしてくれ。キャロルは危ない場面で交代出来るよう控えておいてくれ」

「前衛はフィオンとラクリィさんね、レイラとサレンもそれでいいかしら?」

「異論はありません。頼むぞラクリィ、フィオン」

「無茶はしないように。あなた達に何かあればアロマも悲しむわ」

「大丈夫です、これでもかなりの修羅場を経験したので引き際は間違えません」


 それぞれの役割も決まり、俺は玉座の間の扉を開く。そこには俺達を待っていたであろう、赤髪の男が2人立っていた。


「まさかレイラとサレンが反旗を翻るとはな」

「それにキャロル王女まで強力しているとは思いませんでしたよ」

「ヤガン殿下にルーイ殿下・・・・・・まさかあなた達までそちら側だったとは・・・・・・」

「何を驚くことがあるレイラ。俺達も王の血を引いている、つまりはこの世界の頂点だ」


 ヤガンにルーイ。2人とも王族であり、アロマの兄でもある。

 流石王族とだけあって、アロマ同様に容姿はかなり整っており、ヤガンはすらりと伸びた背丈と鋭い目をしていて、ルーイはたれ目の甘い顔つきをしている。


「おっと、そこにいるのはラクリィじゃないか! うちの妹は元気にしてるかい?」

「全く、あの子にも困ったものです。王族としての役割を放棄して愛した男の元へ行くなど」


 昔からアロマと仲が良かった俺は、勿論のごとくこの2人と面識がある。俺の中の印象で言えば意地悪な奴らというイメージが強かった。


「久しぶりだな。敵だからもう敬語はいらないだろう?」

「相変わらず生意気だな。アロマと仲が良かっただけで調子に乗っていたあの時と何ら変わらない」

「別に調子に乗った覚えはないけどな」

「ただの平民が王城を普通に歩いているということ自体がおかしかったのですよ。身の程も弁えずに、本当に反吐が出ますね」


 今のやり取りでも分かるように、こいつらは根っからの王族なのだ。むしろアロマが特殊だったのだろうが、どちらが好感が持てるかと聞かれれば断然アロマだ。


 しかし性格は置いておいて、実力は本物だ。ヤカサスとは訳が違い、王として君臨できるのではないかという程の実力を持っている。

 なので気は抜けない。いつもの仲間達もいない今の状況では戦い方も変わってくる。その辺はフィオンが上手く合わせてくれそうだが、レイラ中佐とサレンさんがどこまでやれるか・・・・・・いずれにせよ、開幕から本気でとっとと終わらせてもらう。


 ヤガンが持つイマジネーションメイクは、自信が想像したものを具現化出来るという能力を有している。勿論制限はあり、生物やあまり複雑なものは具現化することが出来ない。


 ルーイはミャススレッドという異能を持っており、糸を自在に操ることが出来る能力だ。こちらは

 制限らしい制限は無いが、強いて言うならば糸として作られたものでないと操れないということくらいだ。

 この操る糸は、硬質化させたり、粘着性を持たせたりすることも出来る。


 気は抜けないが、正直言って今の俺なら勝つことは出来る。後はなるべく被害を出さないことだ。


「どうするフィオン?」


 俺は共に前で戦うフィオンに質問する。その意図はどちらを相手にするかということだ。


「状況を見てだな。1対1の状況が最も楽だが、2人で合わせて戦ってくるだろうからラクリィは好きにやってくれて構わない。合わせるのは私の役目だ」

「そうか、じゃあ頼んだ」


 フィオンならば言っている通り、しっかりと俺に合わせた動きをしてくれるだろう。ならば俺は自身の持つ力を最大限発揮して戦うだけだ。


 俺は初動を霧の剣で攻撃する。

 宙に舞う五本の剣が俺の意志を受け取ったサギリのよって2人に向かって行く。

 ヤガンとルーイはそれぞれ、作り出した剣を投擲、糸で弾くといった対処をとり、有効打にはならない。


 2人が霧の剣を弾いた隙に、フィオンが2人に向かって走った。

 そこからマフラーと手に持つ二本の剣での激しいラッシュ。更にはそこに魔法も織り交ぜて、フィオンが最も得意とする形に入っていた。


 そうなると必然的にフィオンの対処に大半の意識を取られる。そこの間を縫って俺はボディミストで懐に潜り込んだ。


 俺の剣による攻撃をガードすることは出来ないと2人は分かっているので、咄嗟にサギリの切っ先が届かないように巧みに足を運ぶ。

 だが、今の俺にはその距離を埋める攻撃手段があった。


「ふっ!」


 手の平を前に突き出し、そこから霧を放ちぶつける。ハクラがやっていた技術だ。

 不可視の霧を避けることは出来ず、ヤガンとルーイは身体を九の字に曲げて吹き飛んでいった。


VRくん「メリユースの王族はやっぱりラクリィとも接点があるんだな」

VRちゃん「ラクリィはアロマに連れられて結構な頻度で王城に行ってたからね。会わない方が難しいんじゃなかったかしら」

VRくん「最近は忘れられがちだけど、アロマも一応はれっきとした王族だもんな」

VRちゃん「まあ他の王族の我が強すぎるせいかアロマが王族に見えないのも仕方がないわね」

VRくん「王族が皆アロマみたいだったら平和だったかもな」

VRちゃん「そうね……でもそう上手くはいかないわよ。 さて次回! 『クーデターの成功』 お楽しみに~」

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