別れた後
レイラ中佐の後ろから出てきたキャロルを見て、俺は状況が理解出来ずに固まる。
何故レホラで別れたはずのキャロルが、レイラ中佐達といるのか。恐らくはクーデターにも関わっていると思われるが、その理由までは分からない。
フィオンは俺よりも困惑しているだろうと思い様子を伺うと、そこには驚きではなく、予想が当たっていたとでも言いたげな、そんな表情を浮かべていた。
それを見て、フィオンがどうしてクーデターを起こしたレイラ中佐達を助けるために動いたのかが分かった。
きっとフィオンは、何かしらの考えからクーデターにキャロルが関わっているのではないかと予想していたのだろう。だからこそ、自分たちを逃がすためにあの場に残った友を助けるために動いたのだ。
「キャロル・・・・・・やっぱりお前だったか・・・・・・」
「分の悪い賭けだとは思っていましたが、やはり来てくれましたねフィオン」
「各国で起こった動きから私達が今拠点にいると判断してクーデターを起こしたんだろ? お前は昔から行動が大胆な時があったからな。レイラやサレンの判断ではないと思ってな」
「五芒星の力が弱まっているからこその行動ですけどね。十分な勝算があったので動いただけですよ」
「聞かせてくれ、あの後何があったのかを」
「分かりました」
キャロルはレイラ中佐に少し開けると伝えると、落ち着いて話せる場所まで俺達を連れてきた。
今も王城内では戦闘が行われているだろうから、あまり悠長にはしていられない。キャロルも詳しくは後程といって、ざっくりと何があったかだけを話す。
「フィオン達が逃げたのを確認してから、私自身どうしようか考えました。シャクストを消耗させておいてくれたので、私も逃げるという選択肢を取れまして・・・・・・まあ、流石に無傷とはいかず、それなりに大きな怪我もしてしまいましたが、どうにか逃げ延びることには成功しました」
「怪我は大丈夫なのか?」
「ええ、もうすっかり。・・・・・・その後、国に戻るわけにはいかないのでどうしようかと彷徨っていた時です、メリユース領内で兵士達に取り囲まれて捕まってしまいました。無論王女だということは直ぐにバレて、シャクストに突き出されることも覚悟していたのですが・・・・・・何故かそうはならず、しばらくを牢屋の中で過ごしていました」
「それは確かにおかしいな。シェダにもキャロルのことは伝わっていたはずだ」
「そうなのですけどね・・・・・・まあ今それを考えても仕方がありません。ある日、捕らえられていた私の元にレイラが訪ねてきました。そして単刀直入に「お前は王の仲間か?」と聞かれました。もしかしたらこの人はフィオンの仲間なのでは? と思い否定と、フィオンの名前を出すと全てを説明してくれました。それを聞いて、レイラとは共に戦えると思い交渉して、そして様々な過程を経て今こうなっています」
「急に端折りすぎだ! なんだ様々って!」
「レイラと色んな計画を練ったり、仲間を増やしたりなんかですね。このクーデターに参加している兵士達も、詳しい話は知らないでしょうが、一応は仲間と言えますよ」
つまりキャロルはこの一年クーデターを起こせるほどにメリユース内で仲間を増やして、且つ自由に動けに状態で各国の情報を仕入れて精査し、しかも俺達の動きも予測していたらしい。
どうやらこの王女様もフィオンに負けず劣らずの頭をしているみたいだ。
やり方も大胆であり、フィオンにも予測が付かなかったほどだ。レイラ中佐やサレンさんには出来ない行動、誰も読めた奴などいないだろう。
流石フィオンが友と言うだけある。
「さて、あまりのんびりしてはいられません。フィオン、ラクリィさん、手伝ってくれますね?」
「それはいいが、状況とこれからの行動を教えてくれ。俺もフィオンに言われて来ただけで、何が何だかさっぱり分からん」
「恐らくキャロルはシェダの捕縛か殺害が一番の目的だ。情報が少なく行動が読めないシェダをどうにかしたいんだろう。違うか?」
「概ねその通りです。クーデターといっても革命がしたい訳じゃありませんでしたから。まあ、上手くいって国ごとミストライフの見方を出来ればとは少し考えていましたが」
「だから相変わらず大胆過ぎるんだ! 助かりはするが・・・・・・そんなとこだけ王族っぽくなって・・・・・・」
「誉め言葉として受け取っておきますよ。ではフィオンとラクリィさんには今から私と共に王城に乗り込んでもらいます。中ではサレン達が戦っているでしょうから、まずはそこに合流しましょう」
キャロルは立ち上がり、腰にある剣に触れる。
王城内での戦闘がどのようになっているか分からないが、もしシェダが出て来ていたら厳しい状況になっているかもしれない、早めに向かわなくては。
レイラ中佐の元に戻っている最中、俺の後ろではフィオンとキャロルが言葉を交わしていた。
「・・・・・・なんにせよ、無事で良かったよキャロル」
「ふふっ、約束しましたからね」
2人の再開にこれ以上俺は割って入らず、しばらくは黙っていた。
VRくん「フィオンはキャロルがいることを予想してたのか」
VRちゃん「様子が少しおかしかったのはこれが理由だったのね」
VRくん「言わなかったのは確証がなかったからか」
VRちゃん「フィオンにとってはかなりデリケートな問題だったし、仕方ないんじゃない? さて次回! 『王城での戦闘』 お楽しみに~」