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ミストライフ  作者: VRクロエ
王都決戦編
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対抗策

 ヒエンへの報告を兼ねて霧魔の村に訪れてからしばらく滞在していた。

 帰らない理由はフィオンが霧魔の村にある数少ない歴史の記録を残した本や、霧魔の民の特徴などが書かれたものを読みながら、ハクラへの対抗策を考えたいと言ったからだ。


 持ってる知識でいくら頭を捻っても出てこないのならば、新たに知識を取り入れるのは合理的だ。

 何度か飯などで呼びに行った時に見たフィオンの様子は、知らない知識をあり得ない速度で取り込んでいるといった感じだった。

 まだ何の説明も受けていないので、会話の中で全く知らないことなどが出てくることも多々ある。

 この短期間でよくもあそこまでのものを自身の物と出来たなと感心する。


 フィオンが対抗策を考えている間に、俺達が何をしていたかというと、簡単なことだ、さらに力を求めてひたすらに試行錯誤していた。

 俺以外の皆がどのようなとこを目指して鍛えているのかは俺には分からない。

 今回俺はラビとソラに声を掛けて共に霧魔の民の能力についてあれこれと考えているからだ。


 先の戦闘でハクラが俺に見せた、霧魔の民が持つ能力の更なる可能性。それを2人にも伝えて改めて考えてみる。

 落ち着いて考えると、別に特別なことではないと思い始める。


 霧の理は、()()()()()にしているだけであり、別に剣じゃなくともいいのだ。

 単純に戦いの中で役立つ物として、剣がイメージしやすかっただけであり、元を辿れば霧の形を変えて、それを言霊を用いて運用しているだけなので、そのイメージさえ払拭してしまえば、まだまだ無限の可能性がある。


 そんな訳で、思ったのならば実践してみるだけだ。

 まず、霧の理で操る物だが、思った通り形はある程度変えられた。

 それでも自由自在にとはいかない。そもそも霧の理を使う上で大切なのは、魔法を使うよりもさらに強固なイメージが必要になる。そのため、あまりはっきりとしたイメージが出来ない物は残念ながら霧の理で使うことは出来なかった。

 その辺のシビアなところは言霊が原因として直結してくる。

 別に霧で形を作るだけならば自由自在だ。しかし霧に物理的な作用は無い。それを可能にさせているのが言霊であり、霧の理という能力だ。

 こればかりは仕方がない、自信の使える物を使っていくしかなさそうだ。


 次に、ハクラが俺の霧を使って自身を探知から隠したあの力。

 残念だが、あれに関しては未だに糸口すら掴めていない。

 ラビとソラに協力してもらい、他人の霧を操る方法を見つけようとしたが、何も得るものはなかった。

 2人の霧をそのまま操るのは感覚的に不可能だと分かり、まず自身の霧としてみようと考えたが、そもそも普通の霧と違いこちらに対して何も反応がないのでどうしようもなかった。

 言うなれば普通の霧は使いこなせえない武器。自身の霧は使いこなせる武器。他人の霧は、そもそも用途すら分からず、理解が及ばない物といった感じだろうか。


 もしかしたら、まだ俺達自身が霧を扱いきれていない為に出来ないのではないだろうかと思い始めて、そこからはひたすらに自身の霧を操る修行に戻って行った。



 そして二週間が経ち、フィオンから呼び出しがかかった。


「すまない、答えを出すのに時間が掛かってしまった」


 自信が思っていた以上に時間が掛かってしまったとフィオンは頭を下げるが、それを責める奴などいる訳もない。


「早速だが私が出した答えを言おう。現状でハクラと戦っても勝ち目はない、どんな手段を取ろうが、罠を用いようが、だ」


 フィオンが出した答えは包み隠すことなく勝てないという一点に集約していた。


 卑屈的な考えだとは思うが、俺も同じ意見だった。

 霧化に対する明確な攻撃手段を持つ霧魔の民が4人揃ったとはいえ、あの偽装とさらには本物だと錯覚させる分身の攻略法が見つかっていない以上、そこの攻撃手段があるといった程度では覆せない程の壁があった。


 目に見えて暗い雰囲気になる。

 その中で、答えを告げたフィオンだけ表情を暗くしていなかった。


「そう暗くなることはないぞ? あくまでも戦って勝てないだけだ」


 なんてことないように言うフィオンに一瞬首を傾げてしまうが、直ぐに何が言いたいのか分かった。


「そうか、確かにな」

「うむ。戦って勝てないのならば戦わなければいい。そもそも私達は王達と戦闘で勝って世界を変えようとしていた訳ではないのだからな」


 そう、その通りなのだ。霧魔の村に来るきっかけとなったタキシム遠征。そこでの目的はあくまでも()()()()()()()()()()()()ことだった。

 俺達の最終目的は王の妥当ではなく、霧を無くし、資源が溢れた世界で戦争により無駄な死を増やさなくさせること。王達との戦闘は、目的の違いからの衝突であり、霧魔花の群生地さえ見つけてしまえば事実上こちらの勝ちなのだ。


 理由に納得し皆がやる気を漲らせている中、一瞬だけだがフィオンの表情に影が差した気がした。

 フィオンの答えに皆が気付かない欠陥でもあったのだろうか? その真意をイマイチ読みとることが出来ない。

 聞いてみようと思ったが、既にフィオンはいつもの表情に戻っており、結局今は聞くことが叶わなかった。

VRくん「フィオンの頭脳を以てしても今のところハクラに勝つ手段が見当たらないのか」

VRちゃん「正確には倒せないけど勝てるだけどね」

VRくん「まあ本懐は霧を無くすことだしな」

VRちゃん「それにしてもまた意味ありげな描写が残ったわね」

VRくん「フィオンの表情か、なんだろうな?」

VRちゃん「いくつか撒かれてる伏線の回収もまだだし気になるわね。 さて次回! 『欠けた五芒星』 お楽しみに~」

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