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ミストライフ  作者: VRクロエ
王都決戦編
125/226

完敗

 俺は真っ直ぐにヒエンに向けて走る。

 まずは小手調べだ。俺の攻撃に対してどう対処してくるのかを確認する。


「色々と、学ぶことがあると思うよ」


 ハクラは俺に向けて手の平を翳した。

 まだ距離はある、何を狙っているのかは分からないが。分からない以上はこのままいくしかない。


 俺とヒエンの距離が近づき、後数歩で攻撃射程に入るというところ。唐突に衝撃が走った。


「んな!?」


 正面から何かをぶつけられたような感覚と共に、俺の身体が吹き飛ぶ。

 視界には何も映ってはいなかった。俺の動体視力で飛んでくる物を見逃したとは考えにくい。


「霧を飛ばしたのか?」

「お? 良く分かったね。これは自信の霧を圧縮して相手にぶつける技さ。相当な密度の霧が必要だけどね」


 俺の知らない霧の使い方。恐らくヒエンも知らない使い方だろう。

 一つの能力として確立されている霧化、霧呼吸、霧分解、霧の理。それらから外れている今の技術は、言ってしまえばこれらの能力から派生、応用したものだ。


 能力は確実に俺よりも使いこなしている。他にも俺の知らない霧の使い方を必ずしてくるはずだ。

 まずは探知を発動させて、ハクラの霧を捉えられるようにする。


「今度はこちらの番だね」


 そういうとハクラは霧化により、自信を霧化させた。

 だが、探知によりその姿は捉えることが出来ている。

 出来ているのだが、そこでもまた俺の予想を超える出来事が起こった。

 ヒエンが2人に増えていたのだ。片方は霧化でこちらに向かってきており、もう片方はその場から動いていない。


「さて、どっちが本物かな?」


 戸惑う俺の目の前にやってきた片方のハクラが、俺の心情を煽るように言葉を放つ。

 既にハクラは俺に攻撃を届かせることが出来るところまでやってきており、偽物にせよ本物にせよ、区別がつかないので、俺は迎撃するしかなかった。


 実体化したハクラに俺の攻撃が刺さる。しかし、サギリが身体に触れた瞬間、霧のように溶けてなくなってしまった。


「残念、それは偽物。本物はこっちだよ~」


 突如探知に反応を現すハクラ。その距離は既にかなり近かった。

 だが、元々いた2人のハクラの内のもう片方は、今もなお動いていない。つまりは、あれも偽物だということだ。


「探知に引っかからなかったでしょ? まだまだ甘いね、少し霧を偽装させたくらいで見失うんじゃ、私のことは捉えられないよ」


 至近距離で俺に向けてハクラが手を向けてくると、またしても俺の身体が吹きとぶ。

 俺を吹き飛ばしたハクラの霧は何とか捉えることが出来ていたが、あそこまで接近されていると、流石に回避が間に合わなかった。


「慣れてくれば対峙する相手の霧を使用して、自信の霧を偽装出来る。覚えておいて」


 まるで俺に指導するかのようにハクラは先程から手の内を明かしてくる。

 知られても問題無いという自身の表れからか、それとも何か別の理由があるのか。


 このままでは一方的にやられるだけだ。俺は一か八か、ボディーミストでの強襲を試みた。


「あー、あと霧化には致命的な欠点があるから、それも知っておくといいよ。行け」


 ハクラは『行け』という単語だけで霧の理を発動させる。言葉通り、生み出された霧の剣は一直線に霧化している俺に向け飛んできた。

 嫌な予感がした。ボディーミスト中はあらゆる攻撃を受け付けなかったが、この攻撃は何かが違う、そんな予感だ。

 俺の予感は的中し、霧化している俺の頬に僅かな傷を付ける。それと同時に強制的に実体化させられた。


「霧化は一見全てを寄せ付けない最強の移動択に見える。でもね、霧の理による攻撃は防げないんだ。言霊により力を与えられた霧は、通常の霧よりも上位のものへと変貌する。それを下位のものでは防げないってわけさ」


 ハクラの言う通りならば、霧魔の民同士の戦いでは霧化による回避はほぼ意味をなさないということになる。

 が、それはあくまでもあらゆる択を選べる中での話であり、ハクラが先程のように偽装したならば、今の俺にそれを捉える術はない。ここで大きな差が付く。


 現状、俺がどんなに足掻こうが詰んでいるのだ。


「ラクリィ、君はまだ未熟だ。父親の半分の力も持っていない。そんな君にアドバイスだ! 今のこの世界はね、霧の世界、つまりは私達霧魔の民の世界なんだ。世界が味方している以上ある程度はどんなことだって出来る。君に足りないのは世界に触れ、それを己の形にしないこと。君が望めば世界は答えるし、霧も相応の力を与えてくれる」

「この世界は俺達だけのものじゃない!」

「いけないね。それでは私には届かない。はっきり言って今の君は期待外れだ。次に会う時に期待しているよ。最も、その時は私も手加減しないかもしれないけどね」


 諭すように言いながらハクラはもう一度俺の身体を吹き飛ばした。


「さ、今回はここまでだ。大人しく帰ってその傷を癒すんだよ?」


 ハクラは戦闘の終わりを告げる。

 短い戦闘、数手での終わりだったが、俺は手も足も出ずに完敗したのだった。

VRくん「タイトルで何となく察してはいたが、ほんとこの作品次から次へと強いキャラが出てくるな」

VRちゃん「ハクラの目的が様子を見に来ただけで良かったわね。そうじゃなきゃ皆死んでたかも」

VRくん「次に会う時は容赦しないみたいなこと言ってたし、どうにか対策を考えないとやばいな」

VRちゃん「その辺は落ち着いてからフィオンが何か考えるんじゃないかしら? さて次回! 『ハクラの目指す場所』 お楽しみに~」

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