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ミストライフ  作者: VRクロエ
王都決戦編
124/226

最強の男

VRくん「一難去ってまた一難。別に去った訳じゃないけど」

VRちゃん「出て来たわね。ハクラの実力はまだ未知数よ」

VRくん「でもフィオン達を1人で圧倒してたみたいだし、王よりも強そうだな」

VRちゃん「次回ラクリィが戦うみたいだけど、どうなるかしらね。 さて次回! 『完敗』 お楽しみに~」

 意識が戻った時にまず感じたのは、鼻につく血の匂い。

 鉄のようなその匂いは、頭が冷めきっていないながらも、俺にきつい不快感を与えてくる。


「――リィ! ラクリィ!」


 次にサギリの声が聞こえてきた。

 戦闘は終わっているというのに、焦ったような声色だ。気絶していただけなのだが、そんなに心配してくれていたのか。

 仲間達にも心配を掛けたかもしれない。いつまでも寝ていないでさっさと起きよう。


 そう思い、起き上がって目を開いた俺の視界に映ったのは、信じられないような光景だった。


「・・・・・・え?」


 俺達が先程まで戦っていた場所。そこにはシャクストとシャクラの死体が転がっている。

 そんな中、俺の仲間達までもが、地面に倒れていた。


「な、なにが・・・・・・おい! 何があった!」

「あー、やっと目を覚ましたんだね」


 俺の背後から聞きなれない声が響く。

 咄嗟に振り返り剣を構えると、そこには中世的な顔つきをした、白髪の男が立っていた。


「やあラクリィ、会いたかったよ」

「これは、お前がやったのか・・・・・・?」

「そう、私がやった。安心して、全員ちゃんと生きてるから」


 どうやら誰も死んではないみたいだ。確認するとしっかりと息はしている。

 だが、トアンとミシャは傷がそれなりに深い。イルミアとアロマは気絶しているだけのようだ。

 フィオンだけは、俺が意識を取り戻した時に同じく意識が回復したようで、フラフラと立ち上がった。


「やって・・・・・・くれたな・・・・・・。一体、何者だ・・・・・・」

「わぉ! まさかこんなに早く起き上がってくるなんて。流石は噂に聞くフィオン・レイネスト、王に引けを取らない強者だ」

「何者かと聞いている!!!」

「やれやれ、全くせっかちだ。私の正体に薄々は気が付いているんだろう? まあいいけど」


 男にしては長い髪をかき上げて男は俺の方を向く。


「私はハクラ。五芒星の一角にして霧魔の民でもある。ここに来た目的は・・・・・・強いて言えばラクリィ、君に会いに来た」

「俺に・・・・・・?」

「そうさ。霧魔最強だったあの男の息子。それを自分の目で見てみたかったのさ」


 白い髪という他にない特徴からもしかしたらとは思ったが、やはりこの男がハクラだったようだ。


 俺が気絶している間に何があったのかは正確には分からないが、そいつは1人で俺以外の5人を倒したのだろう。

 それを考えると、五芒星にいながらも、王よりも確実に強い可能性が高い。

 現状、王と戦っても相手が1人であればまず負けることは無いというのは、先程の戦闘で分かっている。いくら多少の消耗があったとはいえ、俺が気絶している短時間で5人を倒したのだ。


 ハクラに特に怪我をした様子は見られない。完全に無傷と言って良い。

 状況は非常に悪かった。今ここで戦えば、確実に負ける。


「俺を見に来たといったな。本当にそれだけか?」

「うん、()()()それ以外どうでもいいよ」

「・・・・・・分かった。俺が相手になる。その代わりこれ以上仲間に手は出すな。俺が目的なんだろ?」

「いいよ。もう一度言うけど今回は君だけが目的だからね。あ! 安心していいよ! 別に殺そうと思ってる訳じゃないから。手負いの君を殺してもなんの面白味もないからね。手合わせ程度だと考えてくれ」

「そういうことだフィオン、皆を頼む」

「ダメだラクリィ! そいつの言うことが本当だとも限らない!」

「ん? 私のことを疑っているのかい? でもそれは的外れな思考だ。別に今回に限らずラクリィ以外は本当に興味がない。来るなら殺すけど、そうじゃないなら別に殺しはしないよ?」

「フィオン頼む、ここは退いてくれ。勝てないことくらいお前なら分かってるだろ!」

「それは・・・・・・いや、分かった。くれぐれも無茶はするなよ」


 俺が強めの口調で窘めると、フィオンは冷静になったのか大人しく退いてくれた。

 戦闘になる為、皆を安全な場所まで移動させてくれる。これで最悪のことにはならないだろう。


「それじゃあやろうか。最強の男の血を引くその力、存分に見せてくれよ?」

「期待に応えられるかは、分からないがな」


 この傷でどこまでやれるか。勝つことは無理だとしても、手傷の一つくらいは与えたいものだ。

 ハクラから殺気を感じないことから、本当に俺を殺すつもりはないようだ。つまりは俺、俺達を相手に遊ぶ余裕があるということでもある。


 王を倒したと思えば、それ以上の怪物が出てくるとは。本当に嫌になる。

 なるべく、手数を引き出させるように頑張ろう。


 俺は剣を握りしめて深く息を吐く。

 単純に解析し、現状世界で最も強いであろう男に向けて地面を蹴った。


 王都内で起こった決戦。それが思わぬ形で継続することになった。

 戦闘の行方はまだ分からないが、そう時間は掛からずに勝敗は決するだろう。

 霧対霧。その戦いは、理解の及ばぬレベルに発展していくこととなった。

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