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ミストライフ  作者: VRクロエ
王都決戦編
122/226

不意の不意 sideアロマ

久しぶりのアロマ視点です! 何だかんだいってもこの作品はアロマが一番人気があるようで驚いております。

 らっくんは1人でシャクストに向かって行った。らっくんとフィオンのやり取りから、らっくんが時間を稼いで、その間にわたし達がフュストルとシャクラをどうにかすることになっている。

 正直、わたしはこの作戦に反対したかった。いや、反対というよりも、ボロボロのらっくんがシャクストと戦うくらいならわたしがその役目を代わりたい。今のらっくんは大丈夫そうに戦ってはいるが、そんなものはやせ我慢だと誰でも分かる。

 でもフィオンから手短に伝えられた作戦では、シャクラを攻略する鍵はわたしだった。

 歯痒い気持ちを押し込めてわたしはその時に向けて準備する。

 こうなってしまった以上、なるべく早く終わらせてらっくんの加勢に行くのが正しい選択だ。


「アロマ、頼むぞ」

「・・・・・・うん」


 フィオンが信頼を向けて放つ言葉は、わたしの独りよがりな気持ちを強く感じさせる。

 結局わたしは世界よりも、大切な仲間達よりも、らっくんのことが大事だった。

 わたしを信じて今シャクラに向かって行った皆のことはわたしも本当に大事に思っている。だから、ここで弱気なところは絶対に見せられない。


 恐らくチャンスは一度キリ。確実にシャクラの不意を突かなければならない。

 その為に必要なことは、フュストルが指示を出すよりも早く、確実に仕留めること。それが何よりも重要になってくる。

 シャクラの意識をわたしに向けないのはフィオン達がどうにでもしてくれる。後は最高のタイミングでわたしが動けるかどうかだった。


 フュストルは決して前には出てこない。必然的にシャクラが前衛をすることになっているが、巧みな身のこなしと異能を駆使して皆の攻撃を掻い潜っている。

 何より恐ろしいのが、それを行いながらシャクストの援護も完璧に出来ていることだ。どんな視野と状況判断能力があればそれが成せるのか。


 シャクラの異能の特性により、戦闘区域はかなり広くなっている。そのせいでフュストルもなんの迷いもなく魔法を放てているのが現状だ。


 果たして本当にチャンスはくるのだろうか。それは悩むだけ無駄だ。

 フィオンが出来るといったのならば、それを信じて待つ。今のわたしに出来るのはそれだけだった。


 戦闘を観察していると、しばらくしてようやくフィオンの狙いに気付くことが出来た。

 徐々にフュストルとシャクラの距離が離れていっている。これはフュストルの異能範囲外にシャクラを移動させているのだろう。

 だが、効果範囲外に出たなどとどうやって判断するのだろうと思った。

 そして、フィオンがそれを特定したタイミングに一つだけ心当たりがあり、その頭の回転の速さに戦慄する。


「まさか・・・・・・始めにシャクストの攻撃を防いだ時に? 確かにあの時フュストルはシャクストに指示を出さなかった。でも、あのギリギリの状況でそこまで頭が回るものなの・・・・・・?」


 アロマの想像通り、フィオンはここに辿り着いてシャクストがラクリィに止めを刺すのを防いだ時にそこまで考えていたのだ。

 あの刹那でも思考がブレれば危なかった瞬間に、フィオンは凡そ人とは思えない程の異次元な思考速度で、戦況のあらゆる状況から判断できる全ての可能性を導きだしていた。


「やっぱりフィオンは凄いな・・・・・・」


 自虐的に聞こえる呟くをしつつ、フィオンの狙いが分かったということで、それに合わせたタイミングを見計らう。


 流石と言って良いように、フィオンの思惑通りにフュストルとシャクラの距離は離れていく。

 再度思い出した記憶では、あと少しでフュストルの異能の効果範囲から出る。そこからが勝負だ。


 そして遂に条件が整った。後は完璧なタイミングでモメントジャンプを使って決める。

 今か今かと待っていると、一瞬だがフィオンがこちらに目を向けた。これはタイミングを指すものではない。わたしはフィオンの考えを正確に読み取る。


 それから数秒後。絶好のタイミングが訪れた。

 迷っている時間は一切ない。ここだと思った瞬間にわたしはモメントジャンプで跳んでいた。

 目の前にいるシャクラまで、手を伸ばせばその刃が届く。わたしは躊躇せずに剣を振った。


「・・・・・・残念だったね、僕の読み勝ちだ!」


 刃が届くその瞬間、シャクラは振り返って嫌らしい笑みを浮かべる。

 そうシャクラは読んでいたのだ。このタイミングで仕掛けてくるというのを。

 シャクラは後ろに一歩踏み出し、また距離が空く。

 わたしの攻撃は届かない。シャクラの不意を突くのには失敗したのだ。


 あくまでも、()()()()()()()()()()()()()だが。


「いいや、私の読み勝ちだ」

「なに・・・・・・? いや、そういうことか!?」


 意味を理解したシャクラは、慌てるように自身の場所を変える。

 しかしそれではもう手遅れというところまできていた。


 シャクラが移動したのとほぼ同時に、向こうの方ではシャクストが倒れるのが見える。


「流石だアロマ、私の意図を正確に理解してくれて助かったよ」

「正直合ってるのか不安だったけどねー。わたしの攻撃が不意を突くのが本命じゃなくて、シャクストがシャクラの異能の効果範囲外に出るのが狙いだった。だからわたしがやるべきなのは不意を突いて攻撃することじゃなくて、シャクラの移動でシャクストとの距離を離すための角度で攻撃すること」

「その通り。よくやってくれた」


 初めからフィオンが狙っていたのは、シャクラの援護がなくなったシャクストをらっくんが倒すことだったなんて・・・・・・。


 この局面を制したのはラクリィにも伝えずに、全てを自身の思い通りに動かし、不意の不意を突いたフィオンが手にしたのだった。

VRくん「全てはフィオンの手の平ってか!」

VRちゃん「見事に裏をかいたわね。流石フィオン」

VRくん「この作品一の頭脳派キャラってだけあって、作戦だけでも見せてくれるな!」

VRちゃん「その考えを即座に読み取ったアロマも流石よね。一応アロマもかなり頭はいいって初めの方に言われてたしね」

VRくん「ヒロインコンビは一味も二味も違うな!」

VRちゃん「このコンビももっと活躍してほしいわね。 さて次回! 『そして崩れる』 お楽しみに~」

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