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ミストライフ  作者: VRクロエ
王都決戦編
114/226

フュストル・イグラ・シノレフ

 探知に移った3人の人影が、目視できる出来る場所まで接近してきていた。

 若い男が2人と堅牢な雰囲気の年寄りが1人。聞いていた特徴で考えれば、あの年寄りがフュストルだろう。

 何かを話しているがここからでは聞き取れない。気にはなるが、不用意に近づくことはしない。

 まだバレていない可能性もあるので、ここで行動を起こすのは得策じゃないだろう。

 周囲の状況が分かるといっても、あくまでも異能を使った時なので、仮に様子を見に来ただけなのであれば、異能を使ってない可能性もある。


 3人は少し開けている場所で足を止めた。何かを待っているように見える。

 この行動で、ようやくこの場所一帯が人払いされている理由に察しが付く。

 恐らくは、次に狙われるであろう人物を読んで、そこから俺の逃走経路を割り出し、そこで仕留めるため予め人払いをしておいたのだろう。

 つまり俺は相手の読み通りの行動をしてしまったわけだ。

 戦闘になることは避けれそうにない。今はバレていないかもしれないが、フュストルがこの状態を作ったのであれば、時間経過とともに必ず異能を使い俺の居場所はバレる。

 ここで俺の出来る選択肢は二つ。このまま潜伏しバレるまで時間を稼ぐか、先に先手を取るか。

 一瞬の迷いの後、俺は先手を取ることに決めた。

 後手に回り3人を相手にするくらいならば、ここで1人でも削っておきたいというのがこの選択肢を取ると決めた要因だ。


 俺は物音一つ出さずに霧と化す。フュストルを狙おうかと考えたが、ここは取り巻きの男を狙うことにした。

 近い方の男に接近していき、確かな一撃が入るであろうところまで来てから霧化を解いた。

 男が気付いた様子は無い。俺は最小限の力で剣を振り払った。

 喉元を的確に捉えた軌道。しかしそれが当たることはなかった。

 当たる瞬間、フュストルが男の服を掴んで後ろに引っ張ったのだ。完全に俺の攻撃を読んでの行動だ。


「やっと出てきおったか。待ちくたびれたぞ」


 襲われたというのに何とも落ち着いた口調でフュストルが話しかけてくる。

 フュストルに助けられた男にも焦ったような表情は見えなかった。


「バレてたのか・・・・・・」


 反応を見るに俺の存在は既にバレていたようだ。


「もう随分と前からそこに隠れているのは知っておった。よもやワシの異能を知らんわけでもあるまい」

「何故、分かっていて動かなかったんだ」

「強者たるもの先手は譲るべきだとは思わんかね? まあ部隊だけは先に整えさせてもらったがのう」


 つまりは俺が不意を突いてくることまで、この状況を作る時から読めていたというわけか。

 ここまで相手の思い通りになっているとなるとフィオン達の方にも何かしらのアクションを起こしている可能性がある。しばらくの間助けは来ないと考えた方が良さそうだ。


「改めて名乗っておこう。ワシはここシノレフの王フュストル・イグラ・シノレフじゃ。そしておぬしらミストライフの敵である五芒星の一角」

「ご丁寧にどうも王様。あいにくだが俺は名乗んないぞ」

「別によいさラクリィ君。既に知っておるしのう。ほれ、お前達も名乗れ」

「五芒星のダイエンだ」

「同じく五芒星のナタだ」

「こやつらはまだ若いが実力はあるぞ。異能者でもある」

「自分のことを強者と言う割には随分な戦力できたじゃないか」

「それを言われると耳がいたいのう。じゃがワシのような老いぼれが若者と1対1は少々骨が折れるんじゃ。目を瞑ってくれるとありがたい」


 老いぼれというが、その身からは歳を感じさせない堂々たる覇気が滲み出ている。こうして向かい合っているだけでも冷や汗が出てくるほどだ。


「さて、先手は譲ったんじゃ。ここからは容赦せんぞ?」


 ダイエンとナタがフュストルの前に出て剣を構える。これ以上は悠長に会話をさせてくれる気はないようだ。

 まずは戦力分析を正確にしなくてはならない。1対1ならばフュストルとも戦える自信があるが、中身の分からない異能者2人が加わるとどうなるか。

 戦いながらその異能を暴くところから始めよう。


 先に動いたのは俺だ。容赦しないとは言われたが、先手を譲る気はない。

 ボディーミストはフュストルにはあまり意味がないので攻めには使えない。精々危ない場面での回避程度だろう。

 正面から突っ込み対処を見る。単純な剣同士の勝負であれば負ける気はしない。

 フュストルに目立った動きはないので、とりあえずは前にいるダイエンとナタに斬りかかる。2体1の状況だが、俺が若干押していた。

 それでも流石に五芒星にいるだけあって、大きなダメージは与えることが出来ていない。

 このままでは無駄に消耗するだけと判断してダイエンに向けて深めに踏み込んだ。

 ダイエンは即座に剣を逆手に持ち替えて迎撃してきたが、それを持ち前の反射神経で紙一重で避け、一瞬止まった剣にに狙いを定めて霧分解を使う。

 魔法のように一直線に飛んでくるものならばこんなことをしなくても霧分解を使えるのだが、予測が付きにくい剣を遠目から霧分解するのは無理がある。

 だがこうして一瞬でも止まってしまえばこちらのものだ。

 剣を失ったダイエンは、何が起こったのか分からないという表情をしていたが、即座に切り替えて下がった。

 その隙にナタに接近して同じように霧分解のより剣を消滅させる。


 ここまでの流れは俺に分があるといっていい状況だった。

 フュストルがいる以上このまま押し切れるということはないと思うが、さて次はどう出てくる。


VRくん「ようやく2人目の王が出て来たな」

VRちゃん「ラクリィの探知と似た異能を持つ相手ね。ボディーミストが通用しないのはかなり厄介そう」

VRくん「まあでもラクリィも戦闘の幅が増えたしどうにかなるだろ」

VRちゃん「そう簡単にいくかしら? さて次回! 『3対1の攻防』 お楽しみに~」

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