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ミストライフ  作者: VRクロエ
霧魔の民編
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宿命

 フィオンが負けを宣言して直ぐに、俺は疲れで立っていられなくなり、地面に膝をついた。

 その内使いこなせるようになるとは思うが、まだ十本は流石にきつく、頭が痛い。

 俺の様子を心配してか、フィオンが駆け足で寄ってきた。


「大丈夫か!?」

「あ、ああ・・・・・・なんとかな」

「模擬戦なんだ、あんまり急に無茶をするな、何かあったらどうするんだ?」

「どうしても、お前に勝ちたくてな」

「全く・・・・・・本当に、強くなったなラクリィ」


 フィオンに強くなったなと言われただけで、俺は無理をした意味があったと思えた。

 呆れるような笑みを浮かべるフィオンを見ていると高揚感に満たされ、不思議と鼓動が高鳴る。


「見事じゃラクリィ。まさかここまで強くなっているとはな」

「ほんとだぜラクリィ! 十本の剣を作るなんて聞いたことねえよ!」

「流石に驚きましたね」


 遠くから模擬戦を見守っていた面々も俺とフィオンの元にやってきた。

 ヒエンたちが驚きの声を上げるなか、遠くを見てみるとこの村の人達が多く集まっていた。戦闘音を聞いてかヒエンに聞いてか分からないが、見に来ていたらしい。


「村の民達も興奮しておる。今日はこのまま宴にでもしようかのう」

「いいな! 久々だぜ!」

「ラビ、あまり羽目を外してはいけませんよ?」

「わーってるよ!」


 その夜は村中で大きく騒ぐことになった。

 閉鎖的な村で、賑やかさはないと思っていたのだが、そんな印象を吹き飛ばすくらいの大騒ぎだ。

 俺はフィオンとの模擬戦を見ていた人達や、その話を聞いた人達に捕まり、色々と聞かれたり褒められたりと、話題の中心におりゆっくりと食事をすることは出来なかった。


 そんなこんなで夜も更け、俺は先に戻って行った皆の元に帰ろうと思い、アルコールの匂いが充満する村の中心を抜けて歩いていた。


「ラクリィよ、少しいいかの?」


 俺達が泊まっている場所のすぐ近く、俺が来るのを待っていたのかヒエンがそこにいた。


「なんだ?」

「おぬしは儂が思っていた以上の力を手に入れた。その力をさらに伸ばしていけば、王達にも届くようになるじゃろう」

「そりゃ嬉しいな」

「ふっふ、じゃがおぬしらの目的は、あくまでも霧を世界から消し去ることなのじゃろう?」

「そうだが?」

「なればこそ、おぬしには言っておかなければならぬことがある」


 そう言うヒエンはいつになく真剣な雰囲気だ。そこには圧すら感じる。


「霧の元凶である霧魔花、その群生地を見つけ出し摘み取ることが出来れば、この世界から霧を消すことが出来る」

「それはまあ、俺達が予想していた通りだな」

「そして霧魔花を摘み取り世界から霧が無くなる時、霧魔の民は生きてはおれぬじゃろうな」


 ヒエンの言葉は衝撃的なもののはずだったが、俺の心にあまり大きな感情は浮かんでこなかった。

 きっとこの村でヒエンから話を聞いた時には、なんとなく想像出来ていたのかもしれない。霧魔の民はあまりにも霧に依存するように()()()()()()


「おぬしはそれでも、世界から霧を消し去ることを目指すか?」

「俺は・・・・・・大切な人達が幸せになれる世界に出来るのなら、死んだって構わないさ」


 俺が死んだとしても、メリユースで良くしてくれた人達、ミストライフのメンバー、フィオンやアロマが幸せであれるのならば、何も悩むことはない。

 元々、フィオンについていくと決めたときから、命など惜しくはない。


「俺はいいがラビやソラ、他の霧魔の民は納得してるのか?」

「霧魔の民はそれが宿命として受け継いできた。初めはどうじゃったか知らないが、今生きる霧魔の民全員が、世界が選択した結末を見届ける覚悟は出来ておるよ」

「そうか・・・・・・」


 この村の人達のことを考えると心が痛むが、それでも止まろうとは思わなかった。


 全てが終わった時、俺はどういう感情になるのだろうか? 死にゆく俺にを見て、フィオンはどんなことを思ってくれるだろうか? アロマと緑流亭に再び行くことも出来ないのも申し訳なく思う。

 そして欲を言えば、霧が無くなった後の世界を見てみたかった。


「生きている間に、おぬし自身も幸せになっておくんじゃ」

「? どういうことだ?」

「好きなんじゃろ? フィオンの嬢ちゃんのことが。 気持ちを伝えておくのも大切なことじゃと思うぞ?」

「俺が? フィオンを?」

「違うのか?」


 俺がフィオンに惚れている? そうなのだろうか?

 少し考えてみることにした。フィオンに対する自身の気持ちを。

 改めて考えてみると、確かに俺はフィオンに惹かれている。最初は考えに惹かれえていたのだと思うが、それなりの時間一緒にいて、俺の中にはそちらの意味合いでの気持ちも生まれていたらしい。


「そうだな・・・・・・俺はフィオンのことが好きみたいだ」

「そうか。何があっても守ってやるのじゃぞ?」

「言われなくも分かってるさ」

「ならばよし。話はここまでじゃ、疲れてるじゃろ? ゆっくり休むといい」


 そこでヒエンとは別れ、泊っている所に戻った。

 ここでの会話を隠れて聞いている人物がいたのは、俺は知る由もなかった。


VRくん「ここにきてハッピーエンドにならなそうな事実が出て来たな」

VRちゃん「ラクリィは納得してるみたいだけど、仲間達は納得するのかしら?」

VRくん「陰から見てた奴も気になるな」

VRちゃん「まあ予想は出来るけどね。 さて次回! 『アロマの新戦術』 お楽しみに~」

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