VSフィオン2
新たに獲得した能力を駆使し、現在は俺が優勢だった。
このまま勝てるのでは? と思う程の状況だが、あのフィオンがこの程度で終わるだろうか?
模擬戦が始まる前に聞いていたフィオンの評価はとても高いものだった。俺も強くなった自覚はあったが、確実に苦戦すると考えていた。
だが正直に言ってしまえば、ここまでの流れは予想よりも遥かにスムーズに進んだ。
自在に動く五本の剣を今のところ捌いているのは流石と言えるが・・・・・・なんとも手ごたえがない。
それとも俺は自分が思っていた以上に強くなっていたのだろうか?
フィオンがこんなに簡単に追い詰められるものかと違和感は拭えないが、攻撃の手を休めることはしない。
この集中力を長く維持するのはかなり辛いので、出来るのならば早めに決着をつけたい。そう思って俺自身も攻撃に加わることにした。
足場は悪いが、ボディーミストを使えば移動に関しては問題ない。詰めは霧で作った剣と合わせて最小限に行えがいいだろう。
俺はタイミングを見計らってボディーミストを使い、一気に接近する。
あと数メートルで攻撃圏内に入るというところで、一瞬フィオンの動きが変わった気がした。
俺が霧化したことにより警戒した為だと思い気にせずに接近する。
そしてフィオンがガード出来ぬように実体化した瞬間に霧の剣で攻撃するように動かす。
完全に決まると感じた。しかし霧の剣がフィオンを攻撃する瞬間、フィオンはその顔に笑みを浮かべた。
ただそれだけなのに、俺は嫌な予感がして汗が噴き出した。
「今度はこちらの番だ!」
高らかに言い放ったフィオンは手を五本の剣に向けて薙いだ。
「なっ!?」
すると俺が作り出した剣が霧散するように消えていった。
剣は完全に俺自身の霧で作り出しているため、どのようにしてフィオンがそれを消したのかが分からない。
フィオンの異能はその構成がフィオンの知るものでなければならない。そもそも、普通にこの世界にある霧を無力化することが出来ないのに、そこからさらに俺の物になった霧を消したというのか。
訳が分からず混乱している俺に、フィオンは元々このタイミングで攻めることを決めていたようで、早い動き出しで攻撃を仕掛けてくる。
俺は霧で作り出した剣で攻撃した後に仕掛けようとしていた為、想定外のタイミングと思考の混乱が合わさり対応が遅れる。
それでも何とか初撃のガードに間に合い、次が来る前に霧化して逃げることが出来たのは、俺に才能を受け継がせてくれた両親に感謝すべきだろう。
「ふぅ・・・・・・霧の理! その道に剣あれ!」
距離を取った俺は迎撃するため自身の足場だけ安定させ接近してくるフィオンから目を離さず素早く霧の理を使う。
手数が多いフィオンに対して受け身で対応するならば、こちらも手数を揃える。
「無駄だ!」
しかし接近戦になるやいなや、フィオンは再び俺の剣を消し去った。
俺はまたしても霧化して逃げるという選択肢を取らざる負えない。
「なんなんだ!?」
おもわず悪態をつくが、そんなことをしている場合ではない。
俺は霧呼吸をして自身の中の霧を再び満たんにしてから、思考を巡らせる。
この状況を打開するためには、まずどうして剣が消されてしまうのかを見破らなければならない。
「霧の理! その道に剣あれ!」
俺は二本だけ剣を生み出し、残りのキャパを探知に全振りする。
「だから無駄だと言っている!」
予測通りフィオンは二本の剣を事も無げに消し去った。
それにより俺の探知はある結果を導き出す。
フィオンは俺の剣に向け自身の魔力を放ち、そしてそれで包み込むように俺の剣を覆って圧し潰していた。
原理は霧分解と同じようなものだ。俺の霧で作り出した剣を圧し潰すために使っている魔力は相当な量だが、それでも意味はあるだろう。
恐らくこの方法までは独学で辿りついたのだろう。なんて奴だ。
このままではその内押し切られてしまう。何処かで打開策を見出さないといけなかった。
霧の理はとんでもない集中力を要するので、むやみに放ってはこちらが先に疲労でダウンする。
だが、今のフィオンを相手にするのならば、霧の理による手数の多さがどうしても必要だ。
ならばやることは決まっている。
俺はフィオンの猛攻を霧化せずに何とか回避する。
その間に俺は、意識の奥の奥でさらに意識を集中させた。
今の俺はフィオンが考えている成長力を上回れていない。ならば、ここで上回って見せる!
準備は整った。後は俺がその意思で成功にこぎつける。
俺は大きく息を吸って練り込んだ言霊を放つ。
「霧の理! その意思よ剣であれ!」
俺のありったけの霧と意志を乗せた言霊で十本の剣を作り出す。
それには確かな力が宿っており、フィオンに襲い掛かる。
この数を圧し潰すにはフィオンでも魔力が足りない。
「・・・・・・私の負けだ」
剣に取り囲まれ、フィオンは負けを宣言した。
負けたのにも関わらず、何故かフィオンの顔には清々しいような笑みが浮かんでいた。
VRくん「勝ったのはラクリィか」
VRちゃん「こうしてみるとラクリィとフィオンの能力って似てる部分が多いわね」
VRくん「そうだな。作ったり、消したり」
VRちゃん「似てることに特に意味はないみたいだけどね」
VRくん「ないんかい」
VRちゃん「まあ最初からあった設定との兼ね合いでこうなったって感じね」
VRくん「設定とか言うなよ生々しい」
VRちゃん「別にいいじゃない。 さて次回! 『宿命』 お楽しみに~」