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ミストライフ  作者: VRクロエ
霧魔の民編
100/226

新たな能力5

100話目でーす!

 自身の目の前に剣を作り出し、呟くように言葉を放つ。この作業を、もう何度繰り返したか覚えていない。

 言葉にすると簡単なように思える霧の理の使い方。しかしいざやってみると、どうしてか分からないが成功しなかった。

 言霊が上手く使えていないのだろうか? 確かめる術はない。

 成功が見えない中、これまでは状況から照らし合わせて近づいていったが、今回に関しては何がいけないのかが明確ではないので、頭を捻らすことも出来ない。


 既に一月は経っている。ここ最近は仲間達との会話も殆どしていなかった。

 数少ない顔を合わす機会である食事も、さっさと掻き込んで直ぐに戻るといった繰り返しでは、会話をしていないのも当たり前だ。


 だが、今の俺には目の前のことに全神経を使っており、他に気を掛けているほどの余裕はない。

 この極限の集中力の中で流れていく時間は、霧魔の民としての感覚をさらに強めていった。

 自身と外の霧の違いが分かるだけではなく、微かな霧の揺らぎから周囲の物の動きまで分かるようになっていた。

 そうして辿り着いた景色は、まるで別の世界に来たかのようで恐ろしかった。



 さらに時が経ち。俺は世界と溶け合うような感覚を覚えていた。

 身体が軽くなったように感じ、自信が霧になってしまいそうな予感さえする。


 その段階にきて、ようやく言霊が発動しているのかどうかが分かるようになった。

 言霊は確かに発動している。だが、それは霧で作り出した剣に触れると溶けるように消えていってしまった。


 なにがいけないのか、と考えることはなかった。考えても答えは出ないので無駄だからだ。

 俺は思考を放棄し、ひたすらに同じ作業を繰り返した。



 そして四ヵ月が経つ頃、俺は自身の中だけではなく、自身の周囲の霧も自身のものにすることが出来るようになっていた。

 といっても範囲は本当に小さなものだが。

 周囲の霧を自身のものに出来るようになったということは、その僅かな空間の霧であれば、いつでも自在に操れるということだ。


 ある日、放棄した思考の中、無意識の中で俺は自身の霧を使って剣を生み出し、それに向け言霊を使った。

 俺の目には小さな玉のように見える言霊は、ゆっくりと剣に近づいていき、吸い込まれていった。


「・・・・・・!?」


 感情が戻ってきたかのように顔の筋肉が動き、その事実を確かめるための思考が動き出した。


「成功・・・・・・したのか・・・・・・?」


 俺は自身の霧で出来ている剣を、ボディーミスト中と同じ要領で動かしてみる。

 そして手短にある岩に向かって振り抜いた。

 今までであれば当たった瞬間ソードミストの時と同じようにすり抜け、痕すら残らない。しかし岩には確かな傷が残っていた。


「やった・・・・・・やったぞ!!」


 本当に長かった。思考は放棄していたが記憶が無い訳ではない。段々と孤独と化していく心は今にすれば怖かった。

 今すぐ誰かと話がしたい。そう思って俺は仲間達が模擬戦をしている場所まで走って行った。


「みんな!」


 俺が呼ぶように声を出すと、戦いの最中だというのに全員その場で手を止めてこちらを驚いたような顔で見た。


「待たせて悪かった。やっと、成功したぞ!」


 その言葉に仲間達は笑顔で祝福してくれた。

 それ以外にも心配したなど、怒るような感じのこともたくさん言われたが、今の俺にはそれすら心地が良い。

 こんなにも想ってくれる仲間たちがいるのだと再度実感出来たからだ。


 話すことも多いだろうと、今日の模擬戦はここまでにするということになり、俺達は落ち着いて話をするべく、もうすっかり馴染んでしまった仮屋に返ってきた。

 扉の前にはヒエンがいた。ラビとソラが報告したのだろう。


「おめでとうラクリィ。おぬしならば出来ると信じておったぞ」

「ありがとう。あんたのお陰で俺は強くなれた」


 思えば、突発的に訪れたヒエンとの出会いが無ければ、俺は両親のことを知ることも、こうして新たな能力を手に入れることもなかった。

 そうした偶然からだったが、本当にヒエンには感謝している。


「まだ終わりではないぞ? それを使いこなさなくては意味がないのじゃからな」

「分かってるさ」

「ならばよし。明日からはおぬしも模擬戦に参加してもらう。後一月で出来るだけ強くなるんじゃ」


 と、言うことは一月が終われば帰還するのか。この辺はフィオンと話し合ったんだろうな。

 既に拠点を出てから半年近くが経ってしまっている。流石にこれ以上滞在しては拠点のみんなが心配するだろう。

 拠点に戻ったら何もできなくなる訳ではないが、俺の能力について詳しい人物がいるこの村に滞在しているうちに、戦闘で使えることが出来るレベルにはしたい。

 とりあえずの目標は達成したが、ここからも気は抜かずにいこう。


 精神的な疲れが酷いので、事務的な話もそこそこに、俺達は久々の談笑に浸ることになった。



VRくん「なんとか最後の能力も習得出来たな」

VRちゃん「そうね。だけどこの章はまだまだ続くわよ」

VRくん「まだ能力を新しく得ただけだしな」

VRちゃん「そういうこと。次回からラビとソラも本格的に登場するみたい」

VRくん「そりゃ楽しみだ」

VRちゃん「戦闘も増えていくわよ。 さて次回! 『修行の成果』 お楽しみに~」

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