6 お出掛けですわ
「これはこれは」
サディアスとの組み手を終えて一息をついていたタイミングで、突然聞こえてきた声に慌てて振り返る。
「名家のお嬢様とお坊ちゃまが、随分と泥だらけになっているではありませんかな」
そう言ってその人は緩やかに口角を持ち上げた。相変わらず全身を包む黒づくめの衣装が目につく。夏に向かっているこの季節に熱くはないのだろうか。
「先生!」
「あ、ニコラスさん」
「先生、どうしてこちらに?」
ニコラスは週に二回、ここにわたしの家庭教師をしにきてくれているけれど今日はその日ではなかったはずだ。お父様に用事でしょうかと声をかけながら、慌てて彼に近寄って行った。
「ああ、君たちのお父上に呼ばれてな。ところでマリア」
「なんでしょうか先生」
「シャワーを浴びてきてはどうかね」
「ひゃッ!?」
御令嬢あるまじき奇声が溢れ落ちた。人目につかない場所でならいくらでもこういう面を晒してきたけれど、よりにもよってこの二人の前で醜態を晒すことになろうとは。サディアスが信じられないとでも言いたげな目でこちらを見てきているんですけれど。
ていうか、え? えぇ!?
今なんておっしゃいましたか先生!!
「うら若き少女らしい想像力を大いに暴走させているようだが、妙な勘違いされては困りますな。私は貴方のお父上に遣いを頼まれただけだ」
「つ、つかいですか……」
分かってます。分かってましたとも。ただニコラスの口から「シャワー浴びてこい」なんて言葉が出てきたから動揺しただけであって、別に変な期待をしてしまったとかそんなことは微塵もない。断じてない。断じて……ありえません。はい。
「街に出るぞマリア。私の仕事の買い物のついでだが、君がギルドに加入する前に必要なものを見繕うようにエルマー様から頼まれたのだ」
「それはつまりデートですわね先生」
そういうと思い切り怪訝な顔をされた。大丈夫、これは本気で起こっている時の表情ではないので、まだおふざけは許される。
「デートのはずがないだろう。貴族の御令嬢がそんなことを言ったら、お父上が嘆かれますぞ」
「あら、そんなもの障害にすらなりませんわ、ご安心くださいませ」
「……くだらないことを言っていないで着替えをしてこいと言っている。それともその泥だらけのドレス姿で街に出るつもりですかな」
「すぐに支度をしてきますわ。ああ、でも先生のお隣を歩くのでしたらそれなりの格好をしなくてはなりませんね」
「問題ない。いらぬ気遣いだ。心配せずにいつもの服を選びたまえ」
「いいえ、そんなのダメです。魔法のお稽古の時には汚れてもいい服しか着ていないんですよ、そんな格好で先生の隣を歩いたらそれこそロージィ家の恥ですわ。少々お待たせしてしまうでしょうから中で待っていてくださいませ。サディアス、先生をお連れしてお茶菓子を出して差し上げて」
「えっと、姉さん……」
「マリア、気遣いは不要だからさっさと……」
「いいえ。ダメです! せっかくのデートなんですから、『うら若き少女』の我儘くらい聞き入れてくださませ」
そう言い残すと先生の次の言葉は待たずして、階段を上がって屋敷の中に急いで入っていった。すぐにお付きのハウスメイドを呼びつける。
「セキ、セキ。いらっしゃらない? ああ、良かった。ごめんなさいね。すぐにシャワーの支度をしてほしいの。あとそれから、この間お母様と買い物に行った時に選んだ菫色のドレスと、揃いのヘッドドレスも用意してちょうだい。……え? 分かるかしら、そうなの。今日は先生とデートなの!」
デートなんて別に今更かもしれないけれど、この時のわたしはまるで初めて休日に気になる男の子と出かけることになった中学生みたいに浮かれていた。
◯◯◯
オレの姉、ロージィ家の長女マリアは両親がどこに出しても恥ずかしくないと言うほどの絵に描いたような淑女だった。
貴族の娘でありながら魔法の習得に関しては誰よりも熱心だし、本の虫だし、剣を持って向かってくる姿はそこらへんの殿方よりも勇ましいかもしれないけれど。落ち着きがあって思慮深くて、姉さんはオレにとっても自慢の姉さんだった。社交界の場でも、姉さんが壁の花になっているところなんて見たことがない。
「コラ、マリア! だからデートなどではないと言っているだろう!」
自慢の姉さんは、叫ぶロベルトさんの言葉を無視して屋敷の中へと駆け込んで行ってしまった。剣や魔法の修行以外で彼女が走っている姿はほとんど見たことがないなと、ふとそんなことを考えた。
「全く、なんであれは人の話を聞かんのだね」
なんて言いながら頭を抱えているけれど、アンタ。ちっとも迷惑そうじゃないじゃないか。そんなことを考えながら隣に立つニコラスさんを横目に睨んだ。
分かっている。親子とまではいかなくても、ニコラスさんと姉さんとではかなりの年齢差がある。貴族家の男が親子ほど歳の離れた子どもを愛妾に取ることも珍しくないけれど、それは一般的ではない。ニコラスさんが、幼い頃から知っている姉さんに今更そんな感情を抱くことはないだろう。今だって手のかかる姪っ子か何かに振り回されているような感覚に違いない。そうであってくれなくちゃ困る。
だけど、姉さんはどうなんだろう。姉さんが、ただの師匠としてニコラスさんを慕っているようには見えなかった。そもそも姉さんは同い年の女たちみたいに甲高い声を上げてキャーキャー騒いだりしない。いつも静かに緩やかな弧を描いているあの唇から、金属音みたいな不快な音が出ているところなんて見たことがなかった。思慮深くて貴族の長女として何も恥ずかしくない姉さん。そんな姉さんがニコラスさんを相手にすると、そこら辺にいる女たちのように、蜜みたいな色を目に乗せる。普段の姉さんだったら絶対に「我儘をきいてくれ」なんて台詞を吐いたりしないはずだ。あんなことを言うのは、昔からこの男の前でだけでしかない。
この男を前にすると、姉さんは少女になってしまうのだ。
姉さんがこの男に特別な感情を抱いていることは分かっている。その感情自体がダメなことだとも思わない。だけど、姉さん。姉さんは貴族の令嬢なんだよ。今はまだ父さんも姉さんのことを好きにさせてくれているけれど、それだっていつまで続くか分からない。将来、姉さんはギルドをやめさせられるだろう。そして父さんの決めた相手と結婚をさせられる。これは決定事項だ。貴族家の娘というものはそういうものなのだ。だから姉さん以外の貴族家の少女たちは誰も魔法に対して真剣にならない。魔法なんていくら使えたって嫁に入って仕舞えば無用の長物だからだ。うちの母さんみたいにギルドに入ることなく十五になると同時に嫁に入る貴族の娘だって少なくないから、誰も真剣に魔導書を読んだりなんかしない。詩集を読んでいる方がずっと有意義だろう。
オレだって何も恋をするなって言いたいんじゃない。姉さんが誰かに恋をすることは構わない。寂しいけれど、オレに口出しをする権利はないから。
だけど姉さん、その人はダメだよ。父さんの友人だっていうけれど、ニコラスさんは由緒ある家柄の人間というわけではない。貴族じゃないんだ。だから、どんなに綺麗に着飾ったって、流行りのドレスに身を纏ったって、姉さんの気持ちは絶対に叶いっこないんだ。
だから、姉さんがギルドに入るのはある意味いい機会なのかもしれないと思った。【白の黄昏】の多くは貴族出身の魔導師だ。多くの人間に目を向ければ、姉さんの中にある感情はどんどん小さくなっていくかもしれない。そうであって欲しいと思った。
叶わぬ恋に破れて、あの大きなグレーの瞳を涙で濡らす姉さんなんて見たくない。
そう願ってやまなかった。
◯◯◯
菫色のドレスに、揃いのヘッドドレス。それに合わせて髪は緩く巻いて、低い位置で二つに束ねてもらった。最近は剣の邪魔になるからって履いてなかったヒールを久しぶりに用意して、白いレースのタイツを合わせる。荷物はどうせ送るだろうから財布とハンカチが入るくらいの小さな鞄で十分だろう。大きな荷物はある程度空間魔法で収納しているし。
「可愛らしいですわ、マリア様」
「ええ、本当によくお似合いです」
「そうかしら? 本当、おかしくない?」
「ええ、とても愛らしいです」
「うふふ。そうだと嬉しいわ」
こんな質問の仕方、前世だったらとてもできないけど今ならできる。だって今のわたし、客観的に見ても十二分に美少女。本当に可愛いんだもの。本当にありがとうDNA。
「さて、あまりお待たせしてしまっては先生の眉間のシワが取れなくなってしまうものね。みんなありがとう。突然呼びつけてしまってごめんなさい」
「そんなお気になさらないでください」
「デート、楽しんできてくださいね。マリア様」
「ええ、そうさせてもらうわ」
ハウスメイドたちに礼を言って部屋を後にする。これ以上待たせてしまっては本当に先生のシワが三割増し状態で固定化されてしまいかねないため、急いで客間に向かった。だが、そこには何故かニコラスの姿はなく、一緒にいるはずのサディアスの姿もない。
「あれ……どうしたの、」
かなぁと、言葉を続けるよりも早く窓の外から爆音が聞こえてきた。間違いなくこれは魔法同士がぶつかり合う音だった。
「どうなさっての……って……?」
慌てて庭に出てみると、地面に伏したサディアスと涼しい顔をしたニコラスが立っていた。
「えっと……これはどう言う状況なのでしょうか」
「君の弟君が稽古をつけてくれと言うから見ていただけだ」
「そう、でしたか……」
わたしせっかく着替えてきたのに今度は先生の支度待ち?そう思ったがニコラスの衣服はチリひとつ付いていないようだった。黒いから分かりにくいだけかもしれないけど。
「サディアス、大丈夫でしたか?」
「ああ、大丈夫だよ姉さん。はは、やっぱり姉さんの先生は強いな。姉さんになかなか敵わないわけだよ」
「そうでしょう? 先生はすごいお人なのよ」
ニコラスのことを褒められるとついつい口角が上がってしまう。
「……姉さん」
「なあに、サディアス」
「……ううん。やっぱりなんでもない。ほら、これから買い物なんでしょ。楽しんできてよ」
何かを言い淀んだ様子だったけれど、そう言ってサディアスは笑っていた。彼が何を考えているのかはわからないけれど、
なんとなくその笑顔が引っ掛かったけれど、きっとここで問い詰めようとしても彼は何も話そうとしないだろう。そんな気配がしたから何も知らない少女のフリをして笑顔を向ける。
「ありがとうサディ。お土産を買ってくるから少しの間、お留守番お願いね」
「子どもじゃないんだから。ほら、行った行った。ニコラスさん待たせると、眉間のシワ取れなくなるよ」
「ふふ、行ってくるわね」
そう言って、サディアスに手を振ってから、ニコラスの元へと向かった。
「お待たせしてしまい申し訳ありません先生」
「本当に」
「そう言わないでくださいよ。お洋服選びにはさして時間をかけていないんですから」
ムスッとしているけれど、これは怒っているわけではない。初対面の時と比べてニコラスの表情のバリエーションはグッと少なくなった。初めのうちは無理をして緩やかな表情を作ってくれていたんだろうけれど、元来彼は人付き合いが得意な方ではない。むしろ飾ら異表情を見せてくれるようになったことがわたしは嬉しかった。
「先生、サディアスのことありがとうございます」
「別になんてことはない。一手、手合わせを行っただけだ」
「うちの弟、なかなかなものでしょう」
「まあ、年齢を考えればそうなのではありませんかな」
「ふふふ」
街へは魔法で向かうとのことだった。ロージィ家の屋敷がある北部のウインテル地方は都市部から少々離れたところにある。これまでの魔法族の歴史から、貴族の屋敷は大体が郊外にあるのだ。もっとも、移動魔法が使える魔法族からしてみれば距離というものは大した意味も無さないんだろうけど。
目的地はギルドなどが集中している都心部、エメラルダ。魔法族だけでなく、非魔法族のセリアンも多く暮らしている。いや、むしろ人口の割合で言えばセリアンのほうがずっと多いだろう。ギルドは基本的に魔法族がセリアンから依頼を受けて仕事をする場所だから、セリアンがいる場所に集中しているのは当然のことだ。
先生について屋敷の隅にある小さな石碑のようなものが複数個並んだ場所に向かう。普段であればあたしたち子どもたちは立ち入りが禁止されている場所だ。並んだ石碑にはそれぞれ宝石のようなものがはめ込まれており、これが移動魔法の補助具になっているのだ。本来、空間転移自体は属性魔法にあたるため誰でも使用できるわけではないのだが、この魔法具に特定の場所を記録させておけば属性を問わず魔力を流し込めば移動ができるというわけである。要するにそれぞれが行き先固定のどこ◯もドアというわけである。ちなみに帰り用の魔法石は先生がこの家に通うために作ったものがあるから問題ない。もっとも、個人の家にこれだけたくさんの移動魔法具が置いてあるのは貴族のお家くらいなものなんだろうけど。一つ一つが石碑に埋め込まれているのは盗難防止のためだろうか。
「ええっと、エメラルダへ行ける魔法石は……ああ、これですわね」
「使い方は?」
「お母様に付き合わされてしょっちゅう買い物に行っていますから、問題ありません」
「よろしい。私が先に行く。十秒経ったら君も来い」
「はい」
石碑に手をかざして、先生が魔力を流す。すると彼の体が一瞬光を帯びて、それからしゅるんと魔法石に吸い込まれていった。便利だけどちょっと酔うのよね、これ。心の中でぼやきながら、きっかり十秒数えて石碑に触れて魔力を流す。見ていても一瞬だけれど、実際に移動してみても一瞬だ。視界がぐにゃっと歪んだと思ったら、次の瞬間には見える景色が変わっているのだから。
「……ッ」
先ほどまでの庭の静けさとは一点、聞こえてきた街の喧騒に一瞬目眩がした。
「酔ったか?」
「い、いいえ。大丈夫です。この突然周囲の景色が変わる感覚はなん度味わっても慣れなくて」
「……それなら良い。具合が悪くなったらすぐに言いたまえ。倒れられても困るからな」
「ありがとうございます」
差し出された腕に手を絡めて歩き出す。
ここはエメラルダの中でもお店や商業ギルドの立ち並んだ区画である。人も多く、ざわざわと騒がしい。あちこちに並んだお店には衣類から食料品、魔導師向けのお店に至るまで様々なものが軒を連ねている。その中には貴族御用達のお値段の張るお店なんかも並んでいる。先に見える『ポルシェット・ポルフェ』なんかはうちのお母様のお気に入りにブティックだ。あたしが今着ている菫色のドレスはあの店の新作である。
「すごい人ね」
「人が多いのは好かん」
「先生はそうでしょうね。でもわたしはワクワクしてしまいますわ」
「それは構わないが、頼むから私から離れんでくれよ。セリアンが多い場所は否が応でも治安が悪いからな」
「分かっておりますわ」
セリアンが多いから治安が悪いというと、向こうに非があるようにも聞こえてしまうけれど実際のところはちょっと違う。どこの世界にもその世界特有の厄介ごとというものがあるらしい。
……差別なんてものは、どこの世界からも消えないものなのかな。
「ねえ、先生。ギルドに入るために必要なものって具体的には何になりますの?」
「ギルドへの加入自体は特に必要なものはない。健康な体と魔法を使う能力があればなんとかなる」
「あら、では今日のお買い物は何を買いに?」
「……君の一人暮らしに必要なものを見繕うのが目的だ」
ニコラスの言葉に、あたしは驚いて顔を勢いよくあげた。
「どうして……わたし、てっきりあの屋敷からギルドに通わされるものだとばかり……」
正直、ギルドへの加入すらいい顔をされていなかったから実家からの通いになるものだとばかり思っていた。移動用の魔法石があるおかげで魔法族はあまり距離というものを問題視しない。特に我が家のようにたくさんの魔法石を所有している貴族家ならばなおのこと。今日ここに来たようにギルドに家から通って仕事をすることだって可能なのだ。
「君のお父上がな。ギルドへの加入すら反対していた奥方の前では言い出しにくいのだろうが、本心では一度でも家を出たいと考えているのだろうと、そう言っていてな。奥方をなんとか言いくるめたそうだ。だが自分では必要なものを見繕うことも出来ないから、代わりに選んでやってほしいと頼まれた」
「お父様……」
あたしはあの家が嫌なわけではない。それでも貴族家特有の息苦しさというものには正直、嫌気が差しているところがあった。これは何も現代っ子だから感じている特有のものってわけでもないだろう。時代錯誤の貴族社会は、とにかく堅苦しい。
正直今は原作の改変と行ったその後のことについてはあまりよく考えていないけれど、もしこのままロージィ家が今のような形で存在していた場合、あたしはお父様が決めた人と結婚をしなくてはならない運命にある。いや、もしかしたら原作軸の中でそういう話が出てきてしまう可能性だって大いにある。お父様があたしに好きに剣や魔法を習わせてくれるのも、十五歳でギルドに入ることを許してくれるのも、全部父親として娘に負い目があるからだ。家のために戦略的な結婚を強いられる娘に少しでも自由な時間を与えてやろうとあの人は考えている。だけれどまさか、一時的とは言え家から出すことまで許してくれるとは思ってなかった。要するに嫁ぎ先の家に入るまでの時間くらい、好きにさせてやれってやつなのかもしれない。
「先生。一人暮らしに必要なものって具体的に何なんですか?」
「まずは家具と……それから生活に必要な魔法具か」
「というか、そもそもわたし一人暮らしの部屋が決まっていないんですけど。そうなると家具のサイズとかも決められないですよね」
「それについては問題がない。お父上がすでに部屋を決めてある。それに、一人暮らしとは言っても、完全に一人にはならんぞ。付き人は付いてくるそうだ」
「付き人って……」
「これが部屋の間取り図だ」
そう言ってニコラスから紙を渡される。へえ、間取り図か……見てわかるかな。なんて思いながらそれを開いて、ギョッと目を見開いた。
「あ、あの……先生。つかぬことをお聞きしますが、わたしは一人暮らしを許されたはずですよね……。付き人の有無は置いておいて」
「ああ、そうだが……」
「先生、お父様はいったい、このお部屋に何人家族を住まわせるつもりなのでしょうか?」
「私に分かるはずがないだろう。聞いてくれるな」
「そうですわね……」
「……」
「……」
元OLのわたしにはお貴族様の金銭感覚は理解ができない。娘の一人暮らしにいったいどれだけ大きな部屋を与えるつもりなのだろうか。わたしてっきり、せいぜい八畳くらいの部屋を想像していたんだけど。ていうかそんなもんじゃないの。この世界での民間人の生活水準わからないけれども。
「これ、絶対にわたしの稼ぎでは家賃払えませんよね」
「そもそもそんなこと、お父上が許すと思うかね」
「……」
まあ、お金が浮くのはラッキーだと思うことにしよう。うん、もう突っ込んだ負けな気がする。自由に動ける時間が確保できただけありがたいと思うことにして、あとは思考を放棄することを選んだ。




