【第7話:ハイ】
気付けばオレはベンチで少し眠ってしまっていたようだ。
リルラが眠そうにしていたのでベンチに連れてきたのだが、一緒にオレまでウトウトしてしまったようだ。
母さんは村の人達と一緒だし、リリーとルルーは獣人族のサポート。
ジルとヴィーヴルは竜人達のお迎えに行っている。
あれから獣人族の人たちを送りだし、今は竜人たちを待っているのだけれど、正直疲れた……。
誰だ……新たな街の始まりなんだから、同じ日にみんなを迎え入れよう! なんて言ったの……。
あんな事言うんじゃなかった……。
オレは広場の隅に設置されたベンチから立ち上がると、軽く伸びをして時間を確認する。
街の主要なところに大きな時計台をいくつか設置したので、だれでも簡単に時刻を確認できるようになっているのだ。
「もうそろそろかな?」
オレのその呟きに、
「はい。先程、妖精の使いの者から連絡がありまして、ヴィーヴルたちは予定通り進んでいるということでした」
後ろで控えているテトラが、秘書のように即座に答えてくれた。見た目はメイドだけど。
彼女が言うには、
『メイド兼、秘書兼、護衛兼、暗殺者として、また、他にもお望みでしたらどんな事でもお申し付けください』
との事だそうだ。「どんな事でも」の範囲は怖くて確認していない。
途中にも若干危ない暗殺者が混ざっているが、オレはその程度ではもう突っ込んだりはしないのだ。
「そうか。それなら、もうそろそろだな」
オレはもう一度時計台を見上げてそう言うと、クイが現れるのを待つのだった。
~
それから半刻ほど過ぎたが、まだヴィーヴルたちは現れなかった。
さっきようやく起きたリルラが、
「ヴィーヴルさんたち遅いですね~」
と、伸びをしながらまだ眠たそうな顔で呟く。
「そうだな。何も連絡が無いみたいだし、ちょっと心配だな……」
しっかり者の妖精族も一緒だし、そうそう危ない事にはならないとは思うが、やはりちょっと心配だった。
「ご主人様をお待たせするなんて万死に値します。抹殺しますか?」
「待たせたぐらいで抹殺しようとするな!?」
などと軽口を叩いていると、空間がようやく歪み始めた。
「コウガ様! 竜人の皆さんが来られるみたいですよ!」
オレの袖をギュッと掴んで、ちょっと嬉しそうにリルラが話す。
だいぶん退屈していたようだ。
永遠にも等しい時を生きるハイエルフなんだから、1日や2日ぐらい誤差の範囲で平気で待ちそうだが、リルラはジッと何もしないで待っているのが凄く苦手だ。
≪使徒様、おっ待たせ~。ごめんね~。ちょっとしたトラブルがあって遅れちゃった!≫
またクイが空間が完全に繋がる前に、その歪みから飛び出してきた。
この『妖精の通り道』を発動している本人だからこそ出来ることだろう。
「クイ、ご苦労様。それで不吉なちょっとしたトラブルが聞こえたんだが?」
≪それがねぇ~。ヴィーヴルちゃんのお爺ちゃんが大暴れしちゃって~≫
「へ? どういう事?」
ヴィーヴルの祖父は生涯これ修行と言い残して、里から旅立ったと聞いていたが帰ってきたのか?
≪『たとえ主様でも孫を傷物にした責任を取ってもらうまでは許さ~ん!』だって~≫
と言ってケラケラと笑うクイ。
オレは笑えないのだが……。
「もしかして……と言うか、もしかしなくても『主様』ってのはオレだよな?」
ヴィーヴルを傷物ってなんだよ!? 何もしてないぞ!?
≪良くわからないけど、主従契約の事なんじゃないかな~? って、クイは思うよ?≫
何もしてなくなかったぞ!?
「あ、あれはオレは解除したいって言ってるんだが……」
などともごもごと言い訳をしているうちに空間が繋がって、また草原が見えてきた。
「コウガ様? あの太い鎖でぐるぐる巻きにされている方が、ヴィーヴルのお爺様じゃないです?」
たぶんそうなんだろうな……。
鎖で簀巻きにされている老人が一人見える……。
「はっ!? き、貴様がコウガだな!?」
あっ……目が合ってしまった……。
そっと視線を逸らすのだが、遅かったようだ……。
たぶんヴィーヴルの祖父だと思う男は、いきなり竜化して鎖を引き千切ってしまった。
「例え主さまでも孫を傷物にした責……ぐふぉぉ!?」
竜気まで纏ってこちらに向かってこようとしていた老人だったが、横から同じく竜化したヴィーヴルに殴り飛ばされていた。
「こ、コウガごめんなさい!! ほんと恥ずかしいよぉ……」
呆気に取られて見ているだけのオレだったが、
「い、いや。何かよくわからないが助かった。それより……お爺さんだろ? そろそろ許してやったら?」
馬乗りになって殴り続けるヴィーヴルをとりあえず止めておく。
お互い竜化してとんでも無く頑丈になっているようだが、ヴィーヴルには『邪竜の加護』が付いているので止めておかないと本気で祖父の命が危なそうだ……。
「はっ!? 加護で強化されてるの忘れてた!?」
そう言って焦るヴィーヴルだったが、
《仕方ないなぁ~。ホイッと♪》
クイが超高位の回復魔法で完全回復させていた。
あ……嫌な予感がするぞ……。
その後ハイになった祖父がさらに暴れたのは言うまでも無かった。
~
「まだ挨拶も出来てないんだけど……帰っていいかな?……」
******************
ハイ ٩( ᐛ )و
作者はTwitterで更新告知もやってるので
良かったらフォローして下さいね~
******************