【第30話:何言ってるんだ……】
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リアルの諸事情でWeb作家としての活動を休止しておりましたが復帰いたしました。
まずはこの『槍使いのドラゴンテイマー』の改訂版を公開&更新していく予定です。
下記に全文改稿&数万字加筆した改訂版を公開しております。
更新は順をおってになりますが、こちらをお読み頂けますようお願いいたします。
https://ncode.syosetu.com/n5238jw/
尚、運営様から旧版を残しても基本問題ないとは確認をしていますが、
読者様が混同する場合は旧版の削除を求める場合があるとも伺っております。
その場合、こちらは削除することになりますのでご了承ください。
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一度街に帰ったオレたちは、クイに詳しい話を聞くため、領主館や冒険者ギルドには向かわず、一度宿に戻ってきていた。
しかし……、
「それで……なんでジルがここにいるんだ……?」
部屋の扉を開けたオレの目に飛び込んできたのは、フェアリードラゴンサイズになったジルと、妖精女王のクイがお菓子を食べながら寛ぐ姿だった。
≪おぉ~主よ。今ちょうどクイちゃんと一緒に「まどれ~ぬ」なるお菓子を食しておったところだ。主も食べてみるのだ≫
≪使徒様、お邪魔してま~す! 報告の前に昔の勇者が伝えた珍しいお菓子が手に入ったから、一緒に食べませんか~?≫
そんな懐かしいお菓子の名前を聞いて放っておくわけにもいかないよな。
「こんな時に、ジルもクイも仕方ないなぁ。もちろん食べるさ!」
それからしばらくの間、ジルやクイと一緒になって懐かしいお菓子「マドレーヌ」を一緒に味わった……。
お、美味しかった……。
「コウガ様! このマドレーヌすっごく美味しいです!!」
「ほんとね~! 私こんな美味しい食べ物初めて食べたわ!」
リルラは普通に喜んでいるだけだが、ヴィーヴルに至っては美味しさに感動して目に涙を貯めて食べている。
何もない所で育ったみたいだからな……今度もっと色々美味しいものを食べに連れて行ってあげよう……。
「ところでコウガ。お菓子はすごく美味しいんだけど、こんなことしてていいの? ……にゃ」
「一度で食べるのもったいないから、また後で食べたい……にゃ」
「あぁ……そうだな。みんなももう十分食べただろ? そろそろ本題に入ろう」
決してリリーが言いだすまで忘れていたわけではないぞ?
~
「それで本題の前に……ジル、何でお前までここにいるんだ?」
クイには色々聞こうと思っていたから、どのみち妖精の通り道を使って来てもらおうと思っていたんだけど、ジルは妖精界でゆっくりして待っているのかと思った。
≪うむ。主の希望を聞いておこうと思ったのだ≫
ん? オレの希望って何の事だろう?
「オレの希望ってどういう意味だ?」
≪使徒様~。何者かが裏で糸を引いていて、ガリア帝国がこのテリハイム共和国に戦争をしかけるつもりだっていうのは、もうセイルから聞いているでしょ~?≫
その事はさっきこの街に戻ってくるときに聞いている。
「あぁ、聞いている。まったく……戦争とかまた馬鹿な事を考えるよな」
≪それがねぇ。新しく掴んだ情報だと、どうもガリア帝国は近隣諸国全てに全面戦争を仕掛けるつもりみたいなのよ~≫
クイは「バッカだよね~?」とか言って笑っているが、オレはちょっと笑えない。
「はっ? ほ、本当なのか!?」
オレだけでなく、恒久の転生竜の他の仲間も皆驚きを隠せないようだ。
「いくら帝国でも、そんな事したら勝てるわけない! ……にゃ」
「気でも触れたの? ……にゃ」
いや、驚いているのは、この世界の情勢を多少なりとも知っているリリーとルルーだけだった……。
≪それがねぇ~ほんとに気でも触れたみたいね~≫
「どういう事だ?」
≪実は、ガリア帝国は昔から聖エリス神国の勇者召喚を、自らの手で執り行おうと研究し続けていたの≫
クイの話によると、ガリア帝国は聖エリス神国と昔から仲が悪かったらしい。
だけど、いざという時に勇者の力を借りる必要がある為、今までは表立って敵対するわけにはいかず、ガリア帝国何かと苦汁を飲んでいたらしい。
それが積年の恨みになったと……。
聖エリス神国はそれを笠に着た強気の外交をしいていたらしいので、恨まれて当然なのだろうが。
しかし、ガリア帝国は裏で何度も何度も勇者召喚の儀式魔法の実験を繰り返し、先日とうとう成功させたらしいのだ。
「へぇ? じゃぁこの世界に穢れた勇者だけでなく、本物の勇者が既にいるのか?」
しかし、クイは顔を横にぶんぶん振って否定する。
いや、そんな目一杯顔振ったら目が回るぞ?
≪違うの~! 違うのよ~! 帝国ってば馬鹿だから完璧な召喚は諦めちゃったのよ~! それはもうスッパリと~≫
「え? 諦めたのに成功したのか?」
いったいどういう事だ?
≪勇者召喚の儀式魔法は成功したよ~? ただ、最初から肉体の召喚は諦めて、魂だけの召喚を行う勇者召喚魔法だけどね!≫
もう少し詳しく話を聞くと、禁術の類を使って器となる肉体を創り上げ、魂だけを召喚し、その創り上げた肉体に、呪術を応用して定着させたという事だった。
ただ、こういうやり方をすると、元の肉体は魂を引き剥がされて死んでしまうらしい。
「惨い事を……」
そんな事をしておいて「あなたは勇者です!」とか言われても、誰も「じゃぁ世界のために頑張ります!」とはならないだろうに……。
「しかし、その哀れな勇者と、今回の戦争の件がどうかかわってくるんだ? あと、ジルのオレの希望を聞きたいってのは?」
その勇者が、とても受け入れられないような状況に置かれてしまったのはわかるが、それと今回の戦争、しかも近隣諸国全てに戦争を吹っ掛けると言うのが全く結びつかなかった。
≪それは我が説明しよう!≫
ん? なんでジルがここで出てくるんだ??
「あぁ……ジル? なんでここでジルが説明するって話になるんだ?」
何か久しぶりに凄く嫌な予感がするぞ……。
≪それは……我がさっきそいつを追い詰めて、洗いざらい吐かせたからだ!≫
ジル何言ってるんだ……。




