【第2話:要注意】
オレの名は『コウガ・フォン・ジルニトラ』。
家名については何も聞かないで欲しい……。
元々寂れた辺境の村出身のただの冒険者だったはずなのだが、色々あって何故か子爵となり、今は領主館の執務室で書類に埋もれている。
いや、ただのと言うのは語弊があるか。
オレは前世の記憶を持つ日本という国からの転生者だ。
5歳の誕生日にその記憶が蘇ったオレは、恐らく史上初となるドラゴンを従える力を持つ【ギフト:竜を従えし者】を授かる事になったのだが……思えばコレがすべての始まりだった。
オレが偶然出会ったのは、呪いにより暴走していた『神竜ジルニトラ』。
世界中で知れ渡っているのは『邪竜ジルニトラ』と言う呼び方だが、ジルニトラがショックを受けるので言っていない。
この邪竜ジルニトラをギフトの力を使ってテイムした事で、オレは冗談抜きで世界を滅ぼせる程の力を手に入れた。
そこから普通の冒険者生活が続くわけもなく……普通じゃない人生を送る事になったのだった。
まぁでも……そのお陰で真の仲間と言っていい『恒久の転生竜』とも出会う事が出来た。今となっては本当に感謝している。
獣人族の代表的な存在でもある白き獣の獣人。
美人姉妹であり、双剣の使い手、双子のリリーとルルー。
少し短く切りそろえた白髪からは猫耳のような耳が生えており、思わず触りたくなるが、余程の事がないと許してくれない。
うちのパーティーの良心でもある二人だが、ある時から戦いとなると豹変するようになったので要注意だ。
そして1200年の時を生きるハイエルフ。
見た目は10歳ほどの幼い容姿の美少女だが、大精霊使いのリルラ。
正式名は『リルラリルス・ウィンドア・スクラーサ・ソリテス・クロンヘイム』だが、長いのでその名で呼ばれる事はまず無い。
普段は黒髪の似合う巫女装束のような服を好んで来ているが、たまにドレスなどを着ると西洋人形のようでとても可愛い。
だが、その容姿とは裏腹に常識に大きくかけており、たまに危ない発言をするので要注意人物でもある。
そして伝説の種族でもある竜人の姫。
自身と同じ名を持つ『古代竜ヴィーヴル』の知識を受け継ぐ、竜化する事が出来る赤髪の美少女。
勝ち気な性格とは裏腹に何かと構って欲しいかまってちゃんなのだが、それを本人に言うと最上級の竜言語魔法のブレスが飛んでくるので要注意だ。
「あれ? おかしいな。オレのパーティー要注意人物しかいない気がする……」
オレが一人考え事をして、ちょっと頬を引き攣らせていると、
「ちょっとコウガ!? 母さん、こんな豪華な部屋落ち着かないわよ~」
村から越してきたばかりの母さんが、ノックもせずに執務室に飛び込んできた。
母さんの名は『セリカ・フォン・ジルニトラ』。
オレが子爵になったことで、同じく貴族になっている。
その姿は20代前半でも通じるほどだが、実際にはよんじゅ……殺気が飛んできたのでやめておこう。
母さんは何気に元A級冒険者で、聖エリス神国で有名だったパーティー『曇天の鷹』の槍使いだ。
槍術の達人なので怒らせないように注意が必要……あれ? なぜオレの周りには要注意人物ばかりが……。
「落ち着かないのはオレだって同じだよ……でも、母さんもオレと同じように貴族になったんだから、そういうのもこれから慣れていかないと」
「えぇぇ……そんなの無理よ~それにあの家庭教師とか言う女の子はなに!? もうこの歳になって礼儀作法とか勉強なんて無理よ~」
オレも正直勘弁して貰いたいのだけれど、オレについてくれている家庭教師に、母さんにも同じことを覚えて貰わないと困りますと言われているので、もう我慢してもらうしか仕方ない。
「大変なのはわかるけど、我儘言わないで頑張ってよ。あぁ見えて、家庭教師さんは王様からの監視役も兼ねてるから断れないんだよ……」
そう。家庭教師のイザベルさんは、まだ二十歳そこそこなのだが、学術都市セデナの『叡智の塔』出身の超エリートだ。ちなみに超貴重な常識人だ!
そんな話をしていると、
≪主よ。もう焼き払う土地は無いのか? お。セリカ殿。先ほどはミートローフご馳走になった≫
母さんがさらに駄々をこねようとしている時に、史上最強の要注意人物のジルが窓から飛び込んできた。
元々のサイズは10mを超える巨大な体なのだが、普段は1mほどのフェアリードラゴンサイズになって貰っている。
「当分無いわ!? 街づくりはジルのお陰で凄い助かったけど、静かなる森は当面これ以上開拓する予定はないから、無意味に森を消滅させないでくれよ?」
今住んでいる屋敷もそうだが、この新しい『ジルニトラ』の街のほとんどはジルが魔法で更地にして、妖精族の手も借りて魔法で作り上げたものだ。一月かかっていないんじゃないだろうか?
こうして話している今も、通常じゃ考えられない速度で家が建っていっているはずだ。
≪うむ。まぁまた必要になったら言ってくれ。主の頼みならどこでも更地にしてみせるぞ?≫
「頻繁に更地にするようなお願いなんて無いわ!!」
こうして新たに始まった領主としての生活は、危険をはらみつつも、意外と順調な滑り出しをみせていたのだった。
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いよいよ第二部本編がスタートしました☆( 〃ω〃)੭ꠥ⁾⁾ ジタバタ
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