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【第18話:丸メガネ】

「ちょっとあなた達! 何してるんですか!」


「あぁ、すみません。もう大人しく……「初心者講習もうはじまっちゃってますよ! 急いで鍛錬場向かって!」」


 そう言って、大きな眼鏡をかけた女性ギルド職員が声を掛けてくる。


「……え? あの、オレ達は……」


 何か勘違いしているようなので、誤解を解こうとしたのだが、いきなりオレの手を取ったかと思うと、ぐいぐいと手をひいて入ってきたのとは違う扉から外に出ていく。


「あ、あの……オレは……」


「まったく! 初心者講習で遅刻なんかしたら講師役のB級冒険者さんに怒られちゃいますよ!」


 ダメだ。この子、全然オレの話を聞く気ないな……。

 そもそもリリー達はついてきてるなら、この子止めてくれませんかね?

 笑いながら面白そうにしていないで……。


「遅れてすみません! タッキールさん、昨日言ってたアッグさんを連れてきました! さぁちゃんと謝って!」


 鍛錬場に入ると、5人ほどの集団に近づいて声をかけると、オレの後頭部を抑えて一緒に謝らせる。


 しかし、返ってきた答えは……。


「え? アッグは俺ですけど……?」


 そして流れる沈黙。


「えっ? じゃぁ、この子は?」


「さぁ……?」


 そして集まる視線……。


「あの……そろそろ頭の手をどけてもらっても良いですかね?」


 ぎぎぎぎと音が聞こえてきそうな感じで振り向くギルド職員の女の子は、


「あ、あははははは……すみませんでした!!」


 泣きそうな声でそう叫ぶのでした。


「チェリッシュちゃん。またやらかしたみたいだね……」


「もうギルドの名物だからねぇ」


 講習に参加している冒険者は知らないようだが、講師と思われる冒険者二人が苦笑いしながら呟いていた。

 どうもメガネの度があっていないようで、近くは見えるが遠くがあまりよく見えていないらしい。

 たしかにさっき間違えられたアッグという名の冒険者は背格好だけ見ればオレに似てなくもない。


「まぁ誤解が解けたのならもう良いですよ? そうだ。ついでみたいで悪いんだけど、ここのグランドギルドマスターと会えないかな?」


 そう言ってオレは簡易次元収納のバッグからカリンに書いてもらった紹介状を差し出す。


「えっとねぇ。村の紹介状があってもギルマスには会えないのよ?」


 チェリッシュと呼ばれたギルド職員は、どうもオレが初心者冒険者で村長に書いてもらった身元を保証する紹介状を差し出したのだと勘違いしているようだ。


「ははは。坊主、ギルマスと面会ってのは、俺達みたいにB級冒険者ぐらいにならないと難し……って、おい!? その色ってまさか!?」


 どうやら講師役の冒険者は、オレの首からさげているギルドカードの色に気付いたらしい。


「ちぇ、チェリッシュ!? その少年のギルドカード! 首から下げてるギルドカードを見ろって!」


 よく見えないのか凄い近づいて覗き込むチェリッシュ。ち、近い……。


「え? なにこの色? B級のシルバーに少し似てるけど、こんな色見たことないわよ?」


 冒険者が見たこと無いのならわかるのだが、ギルド職員ならサンプルとか見ているはずなのだが……。


「えっと、トリアデン王国のS級冒険者のコウガって言います。あっちの後ろで笑ってる子達が同じパーティー『恒久の転生竜』のメンバーです。グランドギルドマスターに取り次いで貰えますか?」


 オレが軽く自己紹介してから、ついでだからグランドギルドマスターへの取次ぎを頼んだのだが……なんだろう? チェリッシュがこの子何言っているの? みたいな目で見つめてくるんだが……。


「なに? あなた私がドジばっかりしてるからって、揶揄っているの?」


 そしてジト目で睨んでくるのだが……。

 思いっきり誤解なのだが、どうしたものかと困っていると、


「コウガ様。ちょっとだけ、ほ~んのちょっとだけ、実力を見せてあげたらどうですか?」


 リルラがニッコリと笑いながら話しかけてきた。

 でもリルラさん……目が笑ってないですよ……?


「じゃぁ、そこの講師の冒険者さ~ん!」


「「は、はいぃ!?」」


 どうも冒険者の方はS級冒険者という話を信じてくれているようで、ガチガチに緊張しながら返事をしてくれる。


「ちょっとそこの魔法攻撃用の的を破壊しちゃっても良いですか?」


 講習を開いていた少し奥に、魔法の能力を調べる為の頑丈な的を見つけて許可を貰う。


「え? 的にするのは構わないですが、これ、頑丈なだけが取り柄のガンド鉱石製ですよ……?」


 とりあえず許可を貰ったので、雷槍ヴィジュランダをくるりと回して構えると、


黒闇穿天(こくあんせんてん)流槍術(りゅうそうじゅつ)、【雷鳴(らいめい)】」


 威力を最小にして雷鳴を放つ。

 そして鋭い雷となった槍は、奥に設置されていた頑丈なのだけが取り柄のガント鉱石製の的をあっさり破壊したのだった。


「「うそんっ!?」」


 驚き固まる講師役の冒険者を放置して、とりあえずチェリッシュにもう一度面会の取次ぎをお願いしようとしたのだが、今度は思考を停止して固まってしまっているようだ。


「えぇと、チェリッシュさん? これで少なくともA級ぐらいの実力はあるって信じてもらえたかな?」


 そう尋ねたオレの問いには、別の場所から返事が返ってくる。


「もちろん信じるさ。でも……的は弁償してね?」


 そこには緑の長い髪を後ろで束ねたすらっとした男性の姿があった。

 どうやらエルフのようなのだが、乱れた髪と丸メガネをくいっと持ち上げる姿は、まるで学者か何かのようだ。


「まぁ弁償は構わないですが……あなたは?」


「弁償するなら歓迎しよう。私はこの国の冒険者ギルドのグランドギルドマスター、テリルロントだ」


 丸メガネをキラリと光らせてそう答えたのだった。

 弁償しなかったら歓迎しないのかよ……。


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更新遅れ気味の状態が続いてすみません!<(_ _")>

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