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【第17話:もうはじまっちゃってますよ】

 キンドリー隊長との話の後、オレ達はすぐに街へ入る事を許された。


「く、くれぐれも問題など起こさないようにお願いしますね?」


 衛兵の小隊長らしき男が不安そうにそう言ってくるのだが、ジルがいないのでたぶん大丈夫のはずだ。

 大丈夫だよね……?


「大丈夫さ……たぶん」


 たぶん(最後)は小声で答えてから、オレ達はようやくデリスの街に足を踏み出したのだった。


 ~


 テリハイム共和国の首都デリスの街並みは、少し雑然としており、何だか前世の都市部を思い出させた。

 ほとんどの家が石造りだが、その大きさも高さも意匠もまちまちで、個性豊かなつくりをしている。

 魔道具を中心とした商業の街だけあり、魔道具と思われる街灯が等間隔で設置されており、今から少し夜の街並みが楽しみだ。


「コウガ様~。この街の特産品って何なんですか? 後でちょっと食べてみたいです!」


 きっとさっき前を通った店から美味しそうな匂いがしてきたからだろう。

 リルラが鼻をすんすんさせながらおねだりしてくる。

 うん。可愛いから後と言わず今買ってしまおう。


「みんなもちょうど小腹空いているだろ? たぶんそこの店がこの地方の特産品の『まぜ焼き』を食べれるみたいだから、ちょっと買い食いしていこうか」


 リルラと一緒にヴィーヴルがやったーと小躍りして喜んでいるが、ヴィーヴルは可愛いと言うより綺麗系なので、ちょっと残念美人な感じになってしまっているのはそっとしておこう。


 店内で座って食べるつもりだったのだが、店主に聞くと歩きながら食べれるようなので、5人分を個別に包んで貰って歩きながら食べる事にした。


「んん……ちょっと変わった味……にゃ」


「変わっているけど、結構美味しい……にゃ」


「これ美味しいです! ちょっと変わってますけど」


「そうね。美味しいわね。少し変わってるけど」


 リリーとルルーも含め、変わっていると言いながらも概ね好評のようだ。

 でも、全員が必ず「変わっている」と感想についているのはどうなのだろう……。


 このまぜ焼きは、細長いお好み焼きといった感じで美味しいのだが、ソースが不思議味の為、個人的にはすごくすごく残念な感じだった。

 前世のサービスエリアで食べた、お好み焼きスティックが恋しくなったのは内緒です。


 そんな風に買い食いをしながら歩いていると、良さそうな宿屋を見つける前に、先に冒険者ギルドに着いてしまった。


 デリスの冒険者ギルドは、王都トリアデンと同じく5階建てなのだが、その大きさは一回り小さく感じる。

 ただ、石造りの重厚な佇まいが何とも言えない厳かな雰囲気を醸し出しているからか、トリアデンのものに引けを取らない存在感を放っていた。


「ん~。よく考えたらギルドで良さそうな宿屋を紹介してもらった方が早そうだし、先にギルドに行こうかな」


 先に宿を押さえるつもりだったのだが、元々ギルドの近くで宿を見つけようと思っていたので、よく考えればギルドで聞いた方が確実だと思いなおす。

 元々今のジルニトラの街の領主館に住む前は、『妖精の呼子亭』以外はあまり利用した事がないので、どんな宿が良い宿なのか? どうやってそれを見極めたら良いのかもわからない。

 一気にランクを駆けのぼってしまった弊害かもしれないが、通常ゆっくりと経験を積んで覚えていく当たり前の知識がオレたちには抜け落ちているのだろう。


「良し! やはりギルドマスターとの話を先にして、ついでに宿を紹介してもらおう」


「そうですね。話が長くなるようなら、私が途中で抜けて部屋を押さえておく……にゃ」


 会う予定なのがグランドギルドマスターだし、話も少し長くなるかもしれないので、リリーの提案をありがたく受けさせてもらおう。


「わかった。じゃぁ、もし長引きそうなら頼む」


 扉を開けて入ると、王都のギルドと同じような広い受付ロビーとなっていた。


 やはり冒険者ギルドは、どこも似たような作りをしているのだなぁとキョロキョロしていると、妬みのような声が聞こえてきた。


「ガキが……女4人のパーティーだと……」


「へぇ~すげぇ美人揃いだな……って野郎が交ざってるのかよ!?」


「は、ハーレムだと!? うらやまけしからん奴だ!」


 何かあちこちから「禿げろ! もげろ! 爆ぜろ!」と怨嗟の声が聞こえてくる気がする……。


 確かにうちのパーティーメンバー全員揃いも揃って美少女だしね。

 なんてちょっとだけ内心優越感に浸っていると、


「おい! 良い身分だなぁ?」


 その中でも特にガラの悪そうな4人組の男が、こちらに向かってニタニタしながら歩み出てくる。


 しかし、先ほどまで小声で紡がれていた怨嗟の声は、途中から驚きの声へと変わっていく。


「お、おい!? たたたたタグ!? や、野郎のタグを見て見ろ!!!」


「なっ!? S級冒険者だと!? あんなガキがか!?」


「バカッ! それどころじゃねぇよ!? よく見て見ろよ!!」


「が、ガキだけじゃねぇ!! S級が二人だと!? えっ!? 馬鹿な!! 全員S級だと!?」


 ニタニタしながらこっちに向かってきていたガラの悪そうな4人組は、途端に顔を蒼ざめると、


「ぉ~ぃ! 良い身分になったなぁ! いやぁひっさしぶりだなぁ!」


 慌てて視線を逸らせて誰もいないはずのオレたちの後ろに手を振りながら、そのまま扉から走り去って行ってしまった。


「……まぁ面倒な事にならなくて良かったのかな?」


「ふん! あんな奴らボコボコにしてあげたら良いのに! そもそも実力の片鱗でも見抜けたら私たちに絡もうなんて絶対思わないわよ? ここのギルドはどれだけレベルが低いのかしら?」


 ヴィーヴルさんがご立腹だけど、せっかく面倒を回避出来たっぽいんだから油を注がないでくださいね?

 確かにこの国の冒険者ギルドのレベルは少し低いとは聞いているけど、それを本人たちの前で言うのはやめて欲しい……。


「なんだとコラ!!」


 ほら~今度は世紀末な感じのスキンヘッドが絡んできた~。

 と思っていると、ヴィーヴルがほんの少し竜気を解放する。


 さすがにここまでされるとスキンヘッドくんも強さが何となくわかったようで、


「って、こいつが言ってました!」


「へ? い、言ってねぇよ!?」


 と、隣の奴を指さして隣の奴と擦り付け合いをはじめる。


「コウガさん。ちょっと反応見てみたけど、B級冒険者もほとんどいないんじゃない?」


 邪竜の加護で数段強くなったヴィーヴルだが、それでもほんの少し竜気を解放しただけでフロアーにいたほとんどの冒険者が竜気にあてられて青い顔をしていた。

 この国は『深き森』なども接しておらず、魔物があまり多くない為に冒険者のレベルが低いとカリンから聞いていたのだが、これは予想以上のようだ。


「えっと……とりあえず……不必要に竜気(さっきの)使わないように!!」


「はぃぃ……」


 そう言ってヴィーヴルに軽いお説教をしていると、


「ちょっとあなた達! 何してるんですか!」


「あぁ、すみません。もう大人しく……「初心者講習もうはじまっちゃってますよ! 急いで鍛錬場向かって!」」


 大きな眼鏡をかけた小さな女性ギルド職員が声を掛けてきたのだった。


「……え?」


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