表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/34

【第15話:さっきみたいなのが良いです】

 冒険者ギルドで『穢れた勇者』の緊急指名依頼を受けてから二日後。

 王様が派遣してくれた執政官や文官の人たちにこの街の管理を任せたオレは、『テリハイム共和国』に出発する準備を終え、『恒久の転生竜』で集まっていた。


 テリハイム共和国。


 アデリア大陸で帝国につぐ大きさを誇るこの国は、比較的新しい国にもかかわらず、国力や兵力でも強大な力を持っていた。


 中でも魔道具を中心にした文明が発達しており、国が大陸の中心部に位置している事から商売にも向いており、どの都市をとっても非常に栄えている。

 また、その発達した魔道具を利用して強化された軍隊は、ただの一兵卒に熟練の兵士と並ぶ戦闘力を与えると言われており、軍事の面でも秀でていた。

 その上、各都市で騎士団とは別に傭兵団も雇っており、有事の際にはその兵力を更に増強できる体制を作っているなど、新興国家らしい柔軟な体制と相まって、今この大陸で一番勢いのある国家だろう。


≪とまぁ、テリハイム共和国に関しての一般的な情報はこんな感じだね~≫


 高位妖精セイルの説明が一通り終わると、皆から感嘆の声があがった。


「な、なんと言うか。凄いわね……」


「「ちょっとびっくりした……にゃ」」


 しかし、その感嘆の声は違うベクトルであがったものだった。


「綺麗でわかりやすかったです♪ そうだ! コウガ様~今度から常識のお勉強もさっきみたいなのが良いです!」


「いや……あんな立体映像使った勉強なんて無理だから……」


 そう。先ほどの説明は、全て幻影魔法と幻聴魔法による精細な立体映像だったのだ。

 相変わらず妖精族は底がしれない……。


≪あと、女王様から忠告、と言うか共和国の弱点みたいなものも聞いているからそのまま伝えるね。『戦時における兵力は強力だけど、個の力に秀でた戦力が少なくて弱っちぃわ~。今回みたいな攻められ方したら案外コロッと国落としされちゃうかも~? だから使徒様頑張ってね!』だそうですぅ≫


 もちろんクイからの伝言も立体映像である。

 ちなみに最後は、何故か先日の花火魔法(スーパースターマイン)の立体映像が入っており、盛大にオレたちの出立を祝って締めくくられていた……。


「ぁ、あぁ……セイル。ありがとうな……」


 しかし、妖精族に悪気は一切ないし、オレ達のために色々尽力してくれているのは本当の事なので、いろいろ気になる所は全力でスルーして礼を言っておく。


「わぁ~♪ 街開きの時の魔法、またみたいですね~♪」


 しかし、リルラが恐ろしい事を口にしていたので、そっちは全力で遠慮しておいた。


≪あの魔法なら我も覚えたし、今度もっと凄いのを見せて……「やめろぉぉぉ!!??」≫


 ~


「コウガさん!」


 オレたちがジルの魔法でいよいよ転移してもらおうと席を立った時、会議室の扉が勢いよく開いてカリンが飛び込んできた。


「あれ? カリン、どうしたの?」


「そ、それが、『穢れた勇者』のうちの二人が、『陰謀のバラム』の支配を破って怪我を負わせた上で逃走しました!」


 毎度驚かされるが、カリンの妖精族を使った情報網は、前世の某巨大諜報機関も真っ青だと思う。

 これ半刻前の出来事なんだぜ……?


「それで、共和国での企みは中止になったのか?」


「あ! そっちはそのまま続行みたいでしゅ……です! 残りの3人の『穢れた勇者』に命令を出して、さっき高位魔族を何人かつけて送りだしていました!」


≪うむ。逃げた二人は我の千里眼でも追えるな。この方角だと人族の一番大きな国がある方向だろう≫


「と言うと『ガリア帝国』に向かって逃げてる感じです?……にゃ」


≪そのようだな≫


 ジルがリリーにそうこたえ時、空間に歪みが生じ、


≪さっすがジルちゃん♪ 彼ら二人はどうも帝国の者の手引きで逃げ出したみたいだね~≫


 クイが突然空中に現れて、新たな情報を投下する。


「クイ。手引きって言うけど、前に帝国の者とバラムは手を組んでいるって言ってなかったか?」


もうオレは突然妖精族が空中に現れても驚かないのだ。


≪ん~? なんでだろうね~? ちょっと人族の行動原理は私もよくわかんないな~。でもでも、元々利害の一致から手を組んでただけっぽいから、いつ裏切ってもおかしくはなかったんじゃないかなぁ?≫


 オレは以前クイから受けた報告を思い出し、疑問をぶつけてみるのだが、クイも人の内面、思惑まではわからないようだった。


「コウガさん。でも、共和国が危ないのは続いているので、依頼も継続で良いですか?」


「そうだな。逃げた二人の方は今どうこう出来る話でもないだろうし、監視だけ任せて良いか?」


「はい! 監視(それ)なら大得意なので、任せて下さい!」


 なんか一つ間違えると、凄く危ない発言に聞こえるが、今は突っ込まないでおこう……。


「そ、そうか。それじゃぁ、そっちは頼む。じゃぁ、オレ達は予定通り共和国に向かおうか」


「「「「はい!(……にゃ)」」」」


 こうしてオレたちは、ジルの転移魔法によって旅立ったのだった。


 ちなみに1回目の転移でセツナが忘れられていたのは、そっとしておいてあげたいと思う。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~ https://ncode.syosetu.com/n5238jw/ 【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー
※旧版ではなく、ぜひこちらをお読みください!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ