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【第14話:話が耳に入ってこない】

 少し遅い昼食を『恒久の転生竜』のメンバー皆でとっていると、そこへ高位妖精のセイルが飛び込んできた。


 詳しく話を聞いてみると、カリンから緊急の大事な依頼があるという話だったので、オレは皆を引き連れてギルドに向かう事にした。


 そして文字通り【泡沫(うたかた)の翼】を使ってギルドまで一気に飛んでくると、カリンに一番大きな会議室に通され、今に至ると言う訳だ。


「そんな事になっているのか……」


 一通りの話を聞き終えたオレは、深いため息と共にそう呟く。


「やっと領地の立ち上げも少し落ち着いてきたって言うのに、また魔族どもの怪しい動きとはなぁ」


「コウガさん……台詞と表情が合ってないわよ。何で嬉しそうなのよ!?」


 ヴィーヴルが何か失礼な事を言ってくるが、そんな事は……あ、にやけてるな。オレ。


「コウガ様が嬉しそうだとリルラも嬉しいです♪」


 そう言って腰に抱きつこうとしたリルラを、さり気ない動作で阻止する双子姉妹。

 何か小競り合いが起きているが、いつもの事なのでスルーして話を続ける。


「とりあえずオレたちで『テリハイム共和国』に行って、やってきたその『穢れた勇者』たちの行動を監視。場合によっては、その行動を阻止、もしくはそいつらを排除すれば良いんだな?」


「は、はい。その通りです! さすがコウガさん♪ それで、この後『恒久の転生竜』あてに、ギルドからの緊急指名依頼を出そうと思ってるんですけど……構わないですか?」


 そう言って上目遣いで聞いてくるカリンにちょっとドキリとする。


 普段からお洒落には気を使っている様子のカリンだが、今日はちょっと化粧や服装に気合いが入っていた。

 会議室の扉を開けた時、まさかのカリンのドレス姿にちょっと正直驚いた。


 まぁ見た目はうちのメンバーに引けを取らない美少女そのものなんで、オレ的には眼福なんだけど、うちの女子メンバーの視線が突き刺さって痛い。

 それはもう何か魔眼でも手に入れたのかと疑う程に……。


「あ、あぁ、構わない。しかし、召喚された勇者か……」


 異世界から召喚された勇者の存在。

 その事実が、オレの前世の記憶を呼び起こし、懐かしい日本の風景を思い浮かべささせる。


「ん? コウガ。どうしたの?……にゃ」


 リリーはやっぱりこの辺りのオレの心境の変化に敏感だ。

 すぐにオレの様子が少し変わった事に気付いて、心配そうに聞いてくる。


「あぁ。すまない。何でもないんだ。前の……な」


 パーティーメンバーには既にオレが前世の記憶を持っている『異世界からの転生者』であることは伝えてあるのだが、ここにはカリンや妖精女王のクイ、お茶を運んでくれたりしているカノンちゃんがいたので少し言葉を濁しておく。


「あぁ! すみません!! 前世の事を思い出さしてしまったのですね!」


 だと言うのに、カリンがそう言って謝ってくる。


「え? どうしてカリンはコウガの前世の事(そのこと)を知ってる?……にゃ」


 そしてルルーの言葉に口を開けて固まるカリン。


≪あぁ~! それは私が教えたの! ジル()()()に聞いて!≫


≪ん? 我はクイ()()()にそんな事教えた覚えはないんだが……? まぁしかし、もしかしたら言ったのかも知れぬな≫


 その後も仲良さそうに何か色々話しているのを見て、


「コウガさん。私、全然話が耳に入ってこないんだけど……」


 ヴィーヴルがそう言って驚いている。そしてオレもすごく驚いている。


「いつの間にお前らそんな『ちゃん』付けで呼び合う仲になったんだ……?」


 百歩譲ってクイはまぁわかる。

 しかし、ジルが「クイちゃん」とか、思わず背筋が「ぞわわわぁ~」ってなったわ!?


≪いつの間にって? ちょっとジルちゃんとはむか~しの共通の知り合いとかがいて懐かしい話も出来るし~? あと魔法談義とかでも、魔法がすっごく得意な妖精族より、さらに深い知識持ってるしで意気投合しちゃって~≫


≪うむ。我はコウガたちの事も気に入っておるし、もちろん一番大事に思っておるが、中々に価値観の理解が難しくてな。その点、クイちゃんはその辺りで気兼ねなく話せるから気が楽なのだ≫


「わ、わかった!! わかったから、その『クイ()()()』はやめろぉ!! 『ぞわわわぁ~』ってなるわ!?」


 周りのリリーやルルー、ヴィーヴルに、子猫サイズになっているセツナまでもが、激しく同意するように何度も頷いていた。


 リルラが一人「どうして『ちゃん』付けがダメなのです?」と、ルルーに聞いているが……。


「あれ? そう言えば何の話だっけ?」


「あ! えっと、この後、緊急の指名依頼出すのでよろしくお願いしますって話です!!」


 ん? 何かカリンが凄い汗だがどうしたんだ?


「わかった。それじゃぁ、あまり猶予は無さそうだし、さっそく1階で依頼を受けたら準備して向かってみるよ」


「あ! はぃぃ! おおお、お願いしましゅ!」


「顔を真っ赤にして、噛みながら必死に話すカリンを見ると、初めて会った頃の事を思い出すな」


 そう言うと、もっと顔を赤らめるカリン。

 冒険者登録してもらった時が本当に随分前に感じるな。


「そうだ。ところでジルはどうする? 一緒にくるならクイに『妖精の通り道』をお願いする事になるけど?」


≪うむ。我はちょっと今、面白い魔法を開発中でな。出来れば今回は遠慮したいのだが構わぬか?≫


 若干、その『面白い魔法』ってのが気になるが、ジルを連れてって街を壊滅させる危険(リスク)を考えると、クイに預けていった方がマシだろうと結論をだす。


「わかった。じゃぁ、後で転移魔法をお願いすると思うからよろしく頼む」


 こうしてオレたちは、新生『恒久の転生竜』となって初めての依頼に挑む事になるのだった。


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