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【第11話:普通の子】

 街が完成してから更に3ヶ月の時が過ぎようとしていた。


 トリアデン王国各都市に出された移民募集にもかなりの数の希望者が集まり、我が竜人(ドラゴニュート)騎士団『黒き槍』の護衛で移民団の馬車は守られ、被害を出すことなくこの街まで無事に辿り着くことができた。


 今ではこのジルニトラの街の人口は、移住してきた一般市民3000人ちょっとが加わり、5000人近くに増えている。

 王様に多くの文官を派遣して貰っていなければ、いきなり人が増えすぎて混乱していたかもしれない。

 お小言はたくさん貰う羽目になってしまったが、感謝しなければいけないだろう。


 ちなみに竜人(ドラゴニュート)騎士団『黒き槍』は、数こそ少ないが、人類の3大戦力と名高い『リシュテイン公国の竜騎士団』、『聖エリス神国の聖騎士団』、『帝国の機甲兵団』にも負けないのではないかと思ってたりする。

 王様には内緒だが、少なくともトリアデン王国最強だった『銀の矛』騎士団よりも強いのは確実だろう。


 今ではジルの例の空間魔法で母さんから3年分ほどの槍術の特訓も終えていて、誰もが一騎当千の実力が備わっている。


 ジルニトラ領自慢の最強騎士団と言ってもいいだろう。


 それに、『慈悲深き孤高の竜』、『最強の竜王』などと名高い、金色(こんじき)の竜王『セイドリック』が騎士団の守護竜と言う立場で仲間に加わったので、普通の人族の騎士団じゃもう相手にならない。


 なんでもセイドリックは、元々ジルの眷属だったらしく、オレが主となって呪いが収まったという話を聞いて、物凄く感謝され、半ば無理やり守護竜という立場に収まった。

 ただ、ジルやセツナのように小さくなれないらしいので、今は領主館の裏にある泉にひっそりと住んで貰っているのだが……。


 うん。わかっている。明らかに過剰戦力だね……。


 しかし、手を抜くのも何か違う気がするし、もういろいろ今更なので気にしない事にした。


「ご主人様。そろそろ冒険者ギルドに向かう時間です。面倒なら拉致……相手をお連れいたしましょうか?」


 後ろで控えていたテトラが、優秀な秘書よろしく予定を教えてくれる。もう細かい事は突っ込まない……。


 それに、この街を作り上げていく上で、彼女がいなかったら多くのミスをしていただろう。

 最初は元魔王という事で、ちょっと複雑な気分だったが、今ではすっかり信頼を置いている本当の仲間だ。


「いや。予定通りこちらから出向くから拉致ろうとするな……。まぁ、ありがとうな。それじゃぁ、ちょっと行ってくるよ」


 そう言って執務室を出ると、馬車で送りますからと言う使用人の誘いを断り、運動がてらに軽く走って冒険者ギルドに向かったのだった。


 ~


 結局、馬車で向かうよりずっと早く冒険者ギルドの前まで辿り着いたオレは、その建物を見上げて満足そうに頷く。


「良い感じに仕上がったよな」


 王都の冒険者ギルドには負けるが、3階建てのかなり大きな建物に、街の景観維持で統一した漆喰の壁。

 見た目は周りの建物と変わらないが、他の民家と比べて強固な防御結界が張られているので、有事の際にも拠点として過不足なく運用できるだろう。


 その冒険者ギルドの横には広い鍛錬場も二つ用意してあり、初心者講習や冒険者ランクの昇格試験などが行えるようにしてある。


 そんな風に考え事をしながら冒険者ギルドを眺めているオレに、


「コウガさん!!」


 ギルドの3階の窓が開いて声が掛けられた。


「カリン! 良く来てくれた、なっ!? てっ!? 危な! ……へっ?」


 カリンと会う約束で来たのでオレにすぐ気付いたのはわかるのだが、3階の窓から飛び降りたカリンが、クルクルっと宙を舞って目の前に着地したのだ。


「コウガさん♪ 会いたかったですよ~!」


 そう言ってオレの両手を掴んで、ぐわんぐわんと上下に激しくふるカリン。


「あ、あぁ、えっと、オレもだ。また冒険者ギルドの事で世話になるけど、よろしくな。しかし、冒険者でも無いのに凄い身体能力だな……」


 カリンは不思議な子だ。

 見た目はかなりの美少女だが、ちょっとドジっ子っぽい普通の子だと思っていた。


 それが、妖精族が色々サポートしてくれていたのは、カリンと妖精族(彼女たち)が友達で、オレの事を色々聞いたからだと言う話だったのだから。


「えへへ~。私、妖精さんたちと仲が良いので、たまにコッソリ依頼とか受けてたんです。内緒ですよ?」


 それであの身体能力か。

 5人以内のパーティーで魔物を倒せば、少しずつだが魔力を吸収してステータスがアップしていく。


「そうなのか? それにしても……A級冒険者並みじゃないのか? ま、まぁどちらにしろ一気に出世してギルドマスターになったんだから、もうカリンを注意する奴なんていないだろ?」


 カリンはもう受付嬢見習いという立場ではない。

 このジルニトラの街の冒険者ギルドのギルドマスター(トップ)なのだから。


「そうなんですけどね~。でも、王都のギルドから派遣してもらっている職員さんがいなかったら、私だけじゃ右も左もわからないから。あ! コウガさんはもう領主様なのに、こんな所で立ち話もないですよね!? すみません!」


「そんなの気にしないで今まで通り接してくれよ。これからもオレの担当なんだろ?」


 オレがそう言うと、カリンはパーッと花が咲くような笑顔を見せて、


「はいっ!! これからもよろしくお願いします!!」


 そう言って、深く深くお辞儀をするのだった。


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