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第9話

投稿場所を間違ってました。

再度投稿いたします。

「ああ、適正試験の事だね、予定では次の“光精霊(ウィスプ)の日”だね」

「……悪い、そのウィスプの日ってなんだ?」



 ウィスプの日……説明によると、この国の曜日の読み方の一つらしい。

 この世界において、一年は元の世界と同じ(365日)で、一週間も同様に七日だそうだ。

 

 他の曜日は、火精霊(イグニート)の日、風精霊(シルフィード)の日、水精霊(アクエラ)の日、土精霊(ガイア)の日、木精霊(ドリアード)の日、闇精霊(シャドウ)の日となっているそうだ。

 この国で主に崇められる七柱の精霊の名を冠すらしい。

 

 まぁ、週七日とか一月の日数とかが向こう同じなのは非常に助かる。


 これは当時転生してきた者が定めたそうで、その頃のこの世界には暦はおろか時間すら詳細に制定されていなかったそうだ。


 そのおかげで、各国との話し合いなどすり合わせる段階でかみ合わず、時の為政者達に協力()()世界共通の基準を作ったのだそうだ。


 ちなみに、一日の時間も二十四時間であり、各国に標準時がそれぞれ設定されているため、国を跨いでの移動は時差が発生する。

 世界標準時も設定されているが、これは新年の祝いなど、世界規模で制定された特定のイベントで使われるそうだ。



「なるほど。時間が同じなのは結構わかりやすいな、んで、次の光精霊の日はいつだ?」

「ん、三日後だな」

「三日!? たった三日しかないのか!」

「いや、大丈夫だって、あくまでもどんな属性や精霊と相性が良いか、魔力強度や身体強度はどれくらいかを測る、それだけの試験だから」


 おいおい、そりゃないぜ。

 ボーテルは『適正試験』と言った。

 検査でなく、試験と言うからには何かやらねばならないはずだ。

 試験って言えば一大イベントだ。

 それなのに、残り日数が少ないとか……どうすんだっての。



「……具体的に、どんな試験(テスト)するんだ?」

「まぁ、簡単な身体検査と魔力測定と、それと………」

「……それと?」


 俺の言葉にすこし苦笑いをしながら、俺が遣らねばならない試験、その最終項目を口にした。


「うちの職員の誰かとの模擬戦……かな」






 さてさてさて、さぁ大変だ。

 流石に転生三日目で筆記試験とかそんなのが無いだけマシだが、最後に模擬戦闘とか、そこの戦闘民族だ。


「いや、戦闘民族とか関係ないよ。付け加えるなら軍事国家でもないしね」

「……んじゃぁなんでさ?」

「そこは簡単な理由、戦力把握をして置きたいんだよ」

「まぁ、理解は出来るな。転生者を軍事利用または有事の際の戦力としてカウントしておきたいってところか」 


 まぁ道理ではあるな。

 俺達のような転生者がどれほどの力をもっているのか不明だが、せっかく自国に招いた人材(戦力)だ。

 毎年起こるという魔王との一戦に役立てたいというのもあるのだろう。


「まぁ、この体を見る限り弱くはないとは思うけど……実際のとこ、転生者ってこの世界の人間と比べて……強いのか?」

「……う〜ん、難しいとだね」


 ……あれ?

 おれは『比べ物にならない』とか『チートだよ』って言うのを期待していたわけではないが―――それでも『そうだね』とか『つよいよ』と言う答えが返ってくるモノと思っていた。


「あ、いや、弱くは無いんだよ? 身体能力も魔力も人によってはこの世界の人間よりも大きく上回ることがあるから。 

 ただ、それぞれ向き不向きがあるのと、この世界では個人の武勇で無双するのが限りなく難しい傾向にあるから」


 どういうことだろうか?

 俺は別に『強さとはなんだ?』とか哲学的な話をするわけでないんだが。

 この場で言うところの強さの定義が曖昧なんだそうだ。


 例えば対軍の魔法師が居て、そこから放たれる大魔法が直撃すれば数百……あるいは千に届く範囲で損害を与えられるだろう。

 でも、それは()()()()()

 なぜなら、相手にも対軍の魔法師が存在しており、そういう存在が対魔法(カウンターマジック)で効果を打ち消したり、反射させるからだ。

 


「戦略と戦術が要求されるってわけか。でも、それなら転生者にわざわざ模擬戦までして戦力をしらべる必要ってあるのか?」

「確かに、身体能力の総合でいえばボク達はこの世界の人間とくらべ同じか僅かに勝っている程度だ。だけれど、彼らには無いある特徴があるんだ」

「特徴?」

「うん、それが固有素質だ。こちらに送られてくる前に、設定された個性。それによって他には無い唯一無二(ワンオフ)の能力が得られているんだ」

「なんと……!?」

「だからといって、その能力だけで無双できるほどのチート性能ではないけどね」

「…………なんと」

 

 すこし期待したんだが、そういえば前もってそんな能力じゃないって聞いていた気がする。


「ま、それでもかなり便利だよ? キミが何を望んだかは解らないけど、それぞれに最低一つは固有の能力があるんだから」

「ボーテルは何を願って、そしてどんな能力があるんだ?」

「ボクかい? まぁ見せようか」


 そういうと、俺を連れて場所を移動する。

 流石に能力を使うなら訓練場などの広い空間が必要らしい。



「さて、ボクの能力だけど、現在確定しているモノで三つ固有魔法を有している」

「固有魔法?」

「まあ見せるよ」


 そういうと手を前へと突き出し、指で銃の形を作る。

 すると指先にうっすらと緑がはいった蒼い光の弾が現れる。


「先ず一つ目。ボクが持つ風魔法の固有魔法《翡翠の弾丸(カワセミ)》さ」


 俺が感心して目を向ける中、ボーテルは的へ目掛けその光弾を連射する。

 その様子はまるで自動小銃(アサルトライフル)のようだ。

 

「モノとしては高速のホーミング弾ってところかな? 攻撃力としてはあまり高くないけど低コストで連射性に優れるね」

「コスト?」

「ん、ああ消費魔力の事さ、同規模の一般的な魔法に比べて消費が少ないんで燃費が良いんだよ」


 やはり、魔法を使えば魔力を消費するらしい。

 その魔力だが、個々によりその総量や出力が様々だそうだ。

 どんな転生者でも最低限度の量はあるらしいが、身体を構成したときに“魔法主体”の要求をした場合、当然ながらその量も質も跳ね上がるらしい。


 では、そもそも固有魔法とは?

 その答えは自身の魔法適正に応じたオリジナルの魔法だそうだ。

 適正をその個人の望む形で発現する先天的な魔法。

 他者には使えない唯一無二の魔法。

 その人物の個性を象徴する魔法。


「ま、どの固有魔法も殆ど低コストなんだけどね。ボクの場合、魔法特性を風魔法と水魔法の二つ望んだからソレちなんだに固有魔法が手に入ったってわけだ」

「二つ? さっき確定した能力が三つって言わなかったか?」


 風と水なら二つのはず。

 それともまだ知らない個性があるのだろうか?


 俺のこの問いに、にこやかな顔で頷くと、その答えを口のする。


「それはだね、単一属性の固有魔法は確かに二つだけど、複合属性の固有魔法があるんだよ」

「複合……だと?」

「うん、複合。ま、百聞は一見にしかずってね、今みせるよ」


 そう口にしたボーテルだが、俺が見る中でその様子に変化が訪れる。

 ボーテルの背に直径五十センチほどの半透明の環が浮かび、彼の足元には高速で渦巻く水流が発生……とその時、背後の環が唸り、ボーテルはまるで水上スキーをするかのように高速で走り出した。


「これが―――風・水の複合固有魔法……《水上走行(アクアジェット)》さ」


 

 なるほど。脚の裏に水流を発生させ、その上に乗って走る。

 ……推進力は背面の環、あそこから発生した風圧なんだろう。

 

 ボーテルは姿勢を保ったまま、颯爽と訓練場を滑っていく。

 確かに、陸上をアレだけの速度で走れるなら便利だろう。



「楽しそうだな、それはどれだけ発動できるんだ?」

「そうだね、全速力だと三十分が限界かな?」

「……だめだな。それが長いのか短いのか解らない」

「普通全速力は使わないから。このくらいの速度だったら一・二時間は持つよ」


 対人戦闘や小規模の戦闘で考えるなら十分なのか?

 この魔法は移動用らしく、かなり重宝しそうだ。

 ちなみに、最後の一つ、水の固有魔法だけど、水を浄化する魔法らしい。

 よほど汚染された水以外なら純水にまで精製できるそうだ。


 しかし、魔法っていうのは便利なモノもあるんだな。

 俺が知っている……とうよりも体験したのはえらく攻撃的なのばかりだった。


「こういった魔法もあるんだな。俺が見たのは石壁を出すのと、炎を降らせるのと、炎の塊を撃つやつ、それにあの鎖だからな」

「随分と物騒な体験だね。でも、不思議だな」

「ん? 何がだ?」

「いや、その様子も観察させてもらっていたけど、少し解せない点があるんだ」

「……やっぱり見てたか。助けろよ」

「あの時はキミをはぐれオーガだと思ってたから、だけど、あの二人掛りでの《紅蓮のクリムゾンティア》をレジストしていたから……あれ、どうやったんだい?」

「いや、そう言われても。まるで熱湯でも掛けられたみたいに熱かったからな」

「いやいや。アレは熱いで済むレベルじゃないから。普通人間に使えば骨も残さず灰になるまで燃えつつけるヤツだよ」

「え? マヂ? 俺そんな危ないの喰らってたのか……」

「ほんとに。しかし……何らかの固有能力かそれとも……」


 なにか引っかかっているのか、ボーテルは考え込んでしまった。

 どうやらアレは普通ありえない事らしい。

 耐性でも持っているのかとも思ったそうだが、それだと“熱い”と感じることすら無いそうだ。 


「まぁ、後で考えよう。それで模擬戦対策だけど、差し支えなければキミの望んだ特性を教えてくれないか?」

「いいけど?」



 そう応えると、俺はボーテルへあの場で望んだこと、そしてこの身体の事を話て見るのだった。


 





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