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―――俺と主任と異世界と。(偽)  作者: 北島夏生
第1章 ―――俺と主任と異世界と。
10/13

1-8 地雷、踏み抜きました

エロ成分が足りません、すいません。


エロイネン欠乏症(エロ成分欠乏症)を発症してしまいました。

頭痛、関節痛、発熱、倦怠感、鼻水、鼻づまり、セキ、喉の痛み

これら病気の症状の悪化により構成・表現の崩れ、誤字、脱字のチェックがいい加減です。

俺達は紅茶を飲みながら、硬く焼き固めたクッキーの様な物(砂糖が入ってないのでカンパンみたいだ。)を摘んでいる。

僅かにチーズの味がするので、生地に練り込んであるのかもしれない。

レンティアが紅茶を用意してくるのと合わせて、女将が出してくれた物らしい。

これだけの人数でも余りそうなほど、これでもか!と山盛りである。

砂糖は、どうやらこの付近では高価な物であり、西回りの交易路により(もたら)される物なのだという。

この前に店を回った限りでは、その他の甘味料は蜂蜜、メイプルシロップ、甘草(かんぞう)(リコリス)、甜菜(てんさい)等が在り、農地を広げる為には森を切り開くしかないクラサドルでは、飼料の水増しの為か、大麦、オート麦が優先される為、甘味については(もっぱ)ら蜂蜜が使われるのだという。


この地域は温暖で広葉樹が多いので、春から秋まで常に何処かで何かしらの花が咲いている為、定点、つまりはクラサドル周辺での養蜂が行われている。

とは言っても、蜂蜜も生産量自体はそれ程多くないので、クラサドルだけでなく近隣の町の分限者までもが高値でも引き取ってしまうので、これも結構な値段になるそうだ。

メイプルシロップは東回りの交易路というか、最北のエジンバラ街道でしか運んでいない貴重品なのだという話で、裕福なお客さんのプレゼントを皆で分け合って、僅かに舐めた事があると言った程度だそうで。

甘草は・・・地球じゃあアルミサッシ、じゃない、アルミサッキ?だか何だかの原料なんだが、こっちでは子供達が集めて来て、おやつ代わりに齧っているらしい。

そのせいで町周辺の甘草は根こそぎ無くなってるそうだ。

遠くの物は子供達では手が出せないし、冒険者が態々集めて来る程に量が採れて、その手間に見合っただけの価値が有る様な草でもない。

この扱いをされる辺り、漢方薬という使い道は知られてないようではある。

そして甜菜は殆ど作られていない。

ファンタジー小説ではお馴染みの、ノーフォーク農法、所謂、輪栽式農業でも始まらないと作付面積は微々たるものだろう。

まぁ、どんな物にせよ甘味料については高価な物であるので、基本的に貴族やら商人の為の調味料と言えるだろう。


その他の農産物についても肉以外はあまり期待する事は出来ない。

何しろ、クラサドル周辺の農地というヤツは、木を切り倒す、耕して数年間畑にして麦、その後牧草で放牧、切り株から生えた木が復活して森。

これの繰り返しである。

実際のところ、この町の住人は牧畜とその加工製品、木炭の生産が主な収入となっていて、そこに冒険者が入り込んで狩猟を含む採集を行って成り立っており、肉以外の食料は他から運ばれて来ているのが現状だ。

ニューチェスター領全体が森の中という事を考えると、主食の生産が殆ど他領任せなのだが領主はどう考えてるのだろうか。

ま、俺がそんな心配したところで何の意味もない・・・とも言えないか。

というか、イギリス由来と思えるような地名を幾つか見聞きしたのは何なんだろうね?

ま、クラサドルの食糧事情とかも継続的な収入、というものを考える意味では何がしかのヒントにはなるのかも知れんが、直にも金を生んでくれる訳も無いし。

まぁ、追々考えてみるかね。


甘い物で話が横に逸れたが、俺達の『村』の話についても甘いものでは済まないのである。

彼女達の方は、今は一旦彼女たちの村に戻る様であるが、その後は俺達の元に身を寄せたいと考えている。

しかし、俺達は新たな拠点を作らない限り、彼女達を傍に置いておけない。

彼女達の村について行く事も難しいだろう。

俺達が劇場に行ったあの時、ホールに居た兎族が何人だったかは知らないが、15人ものウサギちゃんが発情しているのだ。

俺達が村に行ったとして、その数は何人に増えると言うのか。

ま、精力的な問題というのもあるが、それ以上に俺達の血を受けた混血児達がこの世界にどの様な影響を与えるのか、というのが予想しきれないのが大きい。

未だ生まれぬ我が子らではあるが、その為に人間と兎種の混血というのがどの様な姿を取るのかすらも予想がつかないのだ。

今のところ流産のケース(恐らく半数くらい)を抜きにすれば、最も確率が高いのは兎種の女児である。

しかし、これも絶対とは言い切れない。

何しろ遺伝的に言えば自然の状態では有り得ない様な、いや、昆虫類や魚類はともかく、Homo(ヒト属)と付く種族であり人間と混血が可能な存在が、自然的だろうと環境ストレスだろうと、性別を選択して産む等という事が可能であるとは思えない。

例えそれが致死遺伝子による選別だとしても、明らかに片親の遺伝子を無視した遺伝の仕方をしているのは明らかだ。

魔法のあるファンタジー異世界だから、の一言で片付けてしまえば、それこそ俺達の子供はどのような姿を採るか予想が付かなくなってしまう。

とは言え、何でもアリ(異世界だから)を認めて対策を練らない限り、何時か何処かで足元を掬われる事になるのは必至。

地球の、日本の、俺達の、そういった常識の中だけで行動するには、この世界は余りにも死が近すぎる。

こちらの世界での生活は、まるっきり死の舞踏なのだ。

痘痕面(あばたづら)や崩れた相貌の人達を見掛けないからといって、何の心配もせずに居られる様な事もあるまい。

む、なんか負の方向に向かって思考が堂々巡りしているな。


俺はポリポリとカンパン様の物を齧りながら周りを見る。

俺が考え込んで居たので、それぞれにお喋りを始めていて姦しい。

どんなに考えてみたところで、結局のところ、「生まれてみるまで分からない」、これに尽きる。

ただ兎族の女児であれば良いのだが、それ以外の姿を取った時には明らかに俺達の正体について言及が為されるだろう。

何しろ兎種と他種族の混血は、必ず兎種の女児が生まれる事になるのだから。

結局の所、為る様に為れ、と言うのが結論であるのだが、流石にそれでは無責任にも程がある。

主に俺自身の生命、身体に対する安全保障上のだが。

研究所に招くことは出来ない、ウサギさんの村には行けない、証拠隠滅を図る気もない。

と、言う訳で次善の策としては、兎種には今までの実績通りの行動(・・・・・・・)を期待しつつ、新たな拠点を築くしかないという結論に至るという事だ。

消極的妥協案ではあるが、今のところソレくらいしか動けないとも言える。


「で、だ。君達の村には行く事が出来ない。と、言うか、あの劇場(ミュゼム)に居る兎ちゃん達の中からこれだけの痴女・・・じゃなくて発情した娘が出て来たのに、村にいける訳が無い。体がもたないというか、一度に妊娠する娘が多くなり過ぎれば大混乱になるぞ。そして、俺達の村に君達を入れる事も出来ない。となれば新たな拠点を築くのが現実的なのだが。」

噛み砕いたカンパン(仮)を紅茶で胃に流し込んでから、俺はそう彼女達に話しかける。

「私達の村に来れないのは、これ以上発情されると困る、という事と貴方達の村から離れられないから、という事かしら?」

そうハンナが聞いてくる。

どうやら彼女は、研究所のメンバーのリーダー的立場に居る(と思われる)俺に最初に見初められた(競り落とされた)ということからウサギさんチームのリーダー格になりつつあるようだ。

舞台では主役のはずの赤ウサギちゃんの影の薄さが哀愁を誘う。

うう、不憫な娘であるな。

今度、重点的に可愛がってあげやう。

「そう受け取って貰って差し支えないと思う。」

と俺がそう言うとハンナは、むぅー、と不満を表すような声を出して考え込むようにテーブルを見つめる。


「先輩、何処までソレ、引っ張るんですか。」

ケンタがそう問い掛けて来る。

「あん?引っ張るって?」

何となく言いたい事は分かるが、俺はそう言って惚けてみる。

「その、相手の思考に持たせる余裕の幅を大きく取る事でミスリード(勘違い)を誘う話し方ですよ。嘘は言ってないのが性質(たち)が悪いと言いますか。」

ヤレヤレ、と半ば呆れる様な感じであるが、苦笑しつつ俺に話し掛けている。

「そうだ、嘘は言わない。だが、真実を全て話している訳でもない。そういう話方になるよう気を使っている。」

俺はそれが当たり前の事であるかの様な話し方で答える。

「やっぱり性質が悪いですよ。」

今度は本格的な苦笑でもって感想を返してくるケンタ。

「お前の十八番だと思うが。」

更に何でも無い事の様に答えてから、ちょっとワルい笑みになってるのを自覚しながら続ける。

「ま、真実に僅かな嘘を混ぜ込むと、完全な嘘よりも遥かにバレ(にく)い、とするのを埋伏型の嘘とするなら、真実だけを語りながら相手に欠けた情報の補填をさせて嘘を信じ込ませるのを、断層型の嘘と言うのだ。」

しれっとそんな適当な事を言い放つ俺。

「ズレた内容を信じ込ませるから断層型ですか。やっぱり性質が悪いじゃないですか。というよりそれ、嘘吐いてる訳じゃ無いんじゃ・・・。」

そう言ってケンタは苦笑する。


「むー、度々(たびたび)私達の知らない言葉で話しているのだけど、それも村だけのものなのかしら?」

ハンナがそう聞いてくる。

どうやらハンナ達は魔術の詠唱を聞いた事が無いか、聞いた事があっても覚えて居はしないのだろう。

「まあな。他所(よそ)で聞いた事は無いとは言え、他の村で使われていないとは言い切れないがな。」

ハンナの手を引いて俺の右腿に横を向くように座らせてやり、あやす様に髪と兎耳を撫で付けてやりながらそう答えてやる。

「やっぱり聞かれたくない事なの?」

ちょっとは機嫌が良くなったようだが、疑問は疑問で誤魔化されてはくれないようだ。

ついでに近くに座るアリスとレティの頭も撫でてやると俺の手に甘えるように頬を差し出してきたのでそちらも可愛がってやる。

「んー、それもあるが、細かい言葉の意味の違いというのがな、日常の言葉じゃないと正しく伝わらない可能性があるからなぁ。大陸語は大体話せるけど、訛り(・・)があって意味を補完してるところも多い。身内だけで話すなら俺達の言葉で話すのが一番良い。」

可愛がってるうちにアリスがハンナと向き合うように俺の左腿に座ってきた。

出遅れたレティはちょっと悔しそうだが、あくまでもそれを隠そうとしているものの、チラチラとハンナとアリスを見ているので丸分かりだ。

「それって私達は身内にはならないってこと?」

それに気付いたハンナが俺の両足を開かせ、自分の腿をポンポンと叩きながらレティを見る。

「ん、ああ、いや。それとは関係無く、話せる事、話せない事、色々あるんだよ。」

アリスは俺と向き合うように座り直して左肩に頬を預ける。

レティはちょっと逡巡するも、結局何食わぬ顔でハンナの太腿に座ってハンナ共々、俺に寄り掛かって体重をかけて来る。

「どうしても言えないというのならしつこく聞くつもりは無いわ。貴方の事を愛しているもの。だから貴方達の事を知りたいとも思っているけど、ただの重石にはなりたく無いし、貴方の事を案じてもいるのよ?それは他の娘も同じよ。」

ハンナの言葉受けて周りを見渡すと、全員が真剣な顔で此方を見ていた。

「ああ、分かっている。確かにお前達に知らせていない事も有るけど、少なくともお前達を気に入っている事は混じりっ気無く本当の事だ。そしてお前達が子を産む事を受け入れ、慈しむつもりである事も好ましいと思う。」

そこまで言い切ると彼女達の顔に期待するような微笑が浮かぶ。

「だから、その・・・アレだ。俺もお前達の事が好きなんだと・・・思う。」

恥ずかしくて照れが入りながらも、そう言い切ってハンナ、アリス、レティをまとめて抱きしめる。

きっと俺の顔は赤くなってるんじゃないだろうか。

と言うより、何でこんな場所で愛の告白なんてしてるんだ?

公開処刑かっつーの。

それでも、周りが囃し立てていたとしても悪い気分はしなかった。

恥ずかしいのは恥ずかしいが。


彼女らに話せない事や知られてはならない事は幾らでも有る。

確かに自分の子供を積極的に産んでくれようとしている彼女達には悪いんだが、自分達の命や行動の自由に関わる事だからな。

それだけでなく、ただの兎種の彼女達はそうはならないかもしれないが、子供達は誘拐や暗殺の対象にもなりかねない。

それを考えると迂闊な事を彼女らに教える事は出来ないし、知りたいという欲求を強く抱かせるのも問題ではある。

まぁ、まだ時間は有る。

今日で2日目だし、明日帰るなら話し合いの時間は十分あるのだが、ジリジリと彼女達のボルテージが上がりつつあるのを感じている。

流石に明日は買い物して帰らないと不味いから本格的(?)にお相手は出来ないんだがな。

「それで身内っつーか(つがい)っつーかで思ったんだが、兎種ってのはこんなに発情しやすいものなのか?」

こんな簡単に発情するのなら数が増えないって程でも無いような気がする。

「うーん、こんなに発情する子が出て来るなんて今までに無い事なのよね。ビックリだわ。でも、私達だけ(・・)ならそうは問題にならないと思うのよね。」

ハンナはそう言って微笑んでいるが、ナニか黒い物がチョロチョロと見え隠れし始めている気もする。

「そうそう、発情してるから可愛がって貰いたい!って気持ちで動いてるけど、普段はもっとサッパリした甘え方だし、特別な感情を持つ相手っていうのが出来にくいよね。贔屓(ひいき)にしてくれるお客さんにサービスする位の事なら有るけど。」

マリナの言うサッパリした(?)甘え方というのがどんなものか分からないが、やはり発情して番になった相手は特別なのだろうか。

「そうですねぇ、大抵の方は兎種を恋人としてお付き合いしようとする事は無いと思います。お金を払ってとか、妾としてなら喜んでお相手になってくれる方は多いですけど。無事に生まれ育ってくれる子が少ないせいか、妊娠すると私達はお相手の事よりもお腹の子の事を第一にしてその子に全ての愛情を注ぎますので。」

マリナの後を接いでアイゼルナが続ける。

種を貰うだけは有り難く貰うが、基本的には後腐れの無い関係で居る事が多いのか。

やはり番というのは特別な立場なのか、いや、これから子が大きくなるに連れてそちらに掛かりっきりになるという事も考えられるが。

まぁ、悩んでも仕方のない事かも知れん。

子供の2、3人も産めば、という話もあるしな。


後の問題は新しい拠点、かな。

出来れば研究所の全員と、ウサギちゃんが全員住めれば言う事無しなんだが。

「で、だ。この町にでも拠点を作るとしたらどういう問題が出るかな?」

そう言って話題を変えると皆が考え込んでしまう。

ちょっと漠然としているかな、とは思う質問ではある。

「先ずは彼女達が如何するか、じゃないですか?村に帰って(しばら)く帰ってこないのか、新しい拠点に一緒に住むのかですね。」

ケンタがそう言って此方を見ている。

「よしよし。お前達は如何するんだ?」

そう言って俺の両腿に座る3人をギュッと強く抱き締めると楽しそうに、キャーッ、っと声を上げて笑う。

「もう何ヶ月かは傍に居たいわね。移動が辛くなる前には村に行くとは思うけど。」

そうハンナが答えると、他の娘達も同じ気持ちのようだ。

「これはかなり大きな家が必要っすよ、先任。」

トシよぉ、お前その呼び方止めろよ、俺が仙人みたいじゃねぇか。

「とりあえずは俺達6人(・・)とウサギさんが15人か。25人くらい入れそうな家とかあんのかね?」

俺がそう言うと、

「え?」

という声があちこちから返ってきた。


あー、そう言えば他の二人の事説明してなかった気がする、かもしれない。

何人かの娘は俺を訝しむような視線を向けている。

「あー、いや、なんと言うか、他にも2人ばかり追加なんだがな。」

シレッとそんな風に話し始めるが、此処に来ていない時点で何か察するものがあるのだろう。

げに恐ろしきは女の勘というところか。

嫉妬もそうだけど。

何かばつが悪くなって紅茶を啜りつつ、如何説明したもんか悩む。

「何となく感付いてるようだが、残りの二人は女だな。俺達と同じ村のヒュ・・・デミヒューマン(ヒト)だな。」

そう言うと何故か視線が緩んだような気がする。

ハンナやルチア辺りは、そ、そうなの、とちょっとばつの悪さを隠すような苦笑いを浮かべている。

「んー?何か嫉妬のようなものを感じたんだけどなぁ?」

とハンナの頬を(つつ)いてみると、

「えぇと、私達は兎種同士で嫉妬し合ったりというのは無いんだけどね?他の種族のヒトとかはね?『番』も作らないのに一緒にっていうのはその・・・。」

何とも(しお)らしいものだな。

まぁそんな姿も可愛らしいんだが。

「あのー、何と言うか、カツトシの村のヒトだと前から一緒だったんで、私達がずっと後から割り込んだ形なんですけど、この町の他のヒトだとほぼ同じ時に出会ったという事ですから。普段、番を作ってない時はその辺り何も気にしないんですけど、いざ自分が発情してみると何かモヤモヤとしたものが。説明し難いんですけど、その・・・。」

アニアがそんな風に説明を入れてくれると、

「女のプライドが刺激される、と言った感じですかね?」

ケンタがそんな事を言って要約してくれる。

エンジェラ他、ケンタのツレは何が良かったものか、ご褒美とでもいう様にケンタに抱き付いてキスしている。


「んで、その2人が住む事も含めて、ハンナ達には何処か適当な所にそれなりな家を買うなり借りるなりして貰いたいんだが、出来るか?」

そう問いかけるとウサギちゃん達は暫く考え込んでお互いに意見交換をし始めたので、柔らかな兎耳を撫で付けながら少し待つ。

2階建てか3階建てのアパルトメント1つを丸々借りるか買えば余計なトラブルも減るだろうな、と思いながら待っていると。

「まず、大前提として、奴隷には家を買う権利は有りません。奴隷が家を借りる事も同様です。主人に与えられた家は別ですが。また、所有者無き奴隷は一人で生活する権利を有しませんので、住む事も出来ず、知った者が領主様に届ければ購入か納入の対象になります。」

流石レミーナさん、出来るメイドさん。は説明キャラもソツなくこなしてくれそうだ。

と思ったが、所有者無き奴隷ってのは何だ?と思って話の腰を折るのは分かっているが、ソレを聞いてみると。

「農地を放棄した農奴等の逃亡奴隷や所有者が死亡したが相続されなかった奴隷。他国、他領の棄民。そして、正当な理由無く籍を持たない、あるいは放棄した者。」

ぶはっ、アウトォォォォ。

レミーナさんの説明を聞いていた俺達、研究所組の全員が吹いた。

俺達の様子を見ていたレミーナさんの目が光った様な気がする。

恐らくは、俺達の存在の解釈としては、『所有者無き奴隷』に限りなく近い。

籍が無い事を領主が知り得るまでは、平民で居られるが。

こんな所で特大の地雷とか如何すんだコレ。

「誰か地雷処理班を呼んでくれ・・・。」

思わず頭を抱え、そんな呟きが漏れた。

意味は分からずとも、俺達の状態が皆にはこれ以上も無く正確に伝わったらしい。

彼女らが引き攣った顔をしているのでそれはもう明らかだ。

「ああ、その、聞きたいんだが、購入か納入って何?それに、籍の有無を証明するのってのは如何してるんだ?」

これ以上は知りたくもないんだが、仕方が無いので恐る恐る聞いてみる。

「購入は届け出た奴隷を届出者が買い取る事で、納入は領主様に奴隷を売り渡す事ですね。証明の方は各種ギルドの発行するギルドカードか、領主様の発行する身分証明書を使いますね。何れも奴隷身分に落とされない為に重要な物ですね。」

うわぁ、やっぱり予想通りだ。

秘密の暴露と奴隷落ちの両天秤か・・・。


「籍の登録は教会でやっているんですよね?」

ケンタがそんな事を聞くのだが、何か打開策でも考えてくれんもんだろうか。

「ええ、特別な理由が無ければ生まれた時に洗礼と一緒に登録しますね。」

レミーナさんは、すました顔で淡々と質問に答えていく。

「傭兵の中にはそういった身分証明を持たないのが居ると聞いたんすけど。」

代わってトシが質問をするが、確かドミトリがそんな事を言っていたな。

「傭兵は特別ね。大抵の干渉は数と暴力で跳ね()けるし、捕まえた所で戦争か重労働でしか使えないし、気を抜いてると鉱山の叛乱とか起こすし、挙句には傭兵団長の奴隷にして逃れてたりで領主様は頭を抱えてるわ。」

レミーナさんより早く、トシの隣に座るアニアが答える。

それを受けてレンティアが、トシの鼻を人差し指で突きながら続ける。

「傭兵になるのは駄目ですよ?娼婦達には嫌われていますからね。粗暴で不潔なので、余程稼ぎに困っているのでない限り相手にはされません。大抵は逃げますが、それでも運悪く捕まって無理やり相手をさせられる娘達は、一度に何人も相手にさせられて前も後ろも裂けて血が滲む程です。暫くは仕事に立てませんから、金払いが悪いのもあって何人相手にした所で赤字と言う訳です。」

あいつら、激しく奥まで突っ込めば女は感じるとか思ってる糞ばかりだ、という呟きが聞こえたんだが、ここは聞こえなかった事にするのが紳士の対応だろう。

「高級なーというか、普通、娼館なんかは傭兵が来ると閉めちゃいますー。」

トゥーラも他の娘に負けじと点数取りに来たな。

これはリオーナも負けていられないだろうとそちらを見るも一睨みされた・・・。

「あまりに性質の悪い傭兵団なんかだと、領主様によっては、領軍を出して演習と称して傭兵団の監視をしてたりしますね。『エスコート』なんて言ったりしますけど。」

その隙を突いてレンティアがスパートをかけたーっと言う事で、話が脱線し続けるのも不味いから戻すか。

結局、リオーナの出番は無かったが、もがれないよな?俺。

頼むからトシ、フォローしてやってくれよ。


「傭兵の事は置いておいて、家の方に話を戻そうか。」

そう言ってレミーナさんに視線を向けると、彼女は一つ頷き、先ほどの続きを話し出す。

「この町で家を買う者が他領の者である場合、元の住所の領主様に異動の許可を受けます。次に、この町を治める領主様に住居の異動許可を受けます。全て問題が無ければようやく家を買う事が出来ます。」

くあー、メンドクセェ。

まぁ税金が減るのを見過ごすのは面白くないから、出る方の領主は出る奴の収入とか気になるし、入る方は変な奴が入り込むと困るから余程裕福な商人でもなければ許可なんぞ出したがらない。

結論:どっちにも賄賂渡して処理を円滑に。

何か余りにもすんなり出てきたわ。

「ゴール村の方が買うとなればこの手続きが必要ですが、ミストンやクローナの方なら買うのに手続きの必要は無く買えますね。ですが、税金徴収の為に家を手に入れた者が誰かを証明書を以って明らかにする必要があります。次に、借りる場合。これは誰が借りるのも自由ですが、住み始めに誰が住むかを届け出ます。」

ふむ、借りるのは結構あっさりしてんのね。

いや、それでも届出が出来ない時点で研究所の面子(めんつ)には敷居が高いんだけど。

しかし、住み始め(・・・・)という事は後からの合流はスルーで良いのか?

「税金の徴収って、住む事に対する税金が発生するのか?」

住民税のようなものだとは思うが、人頭税の類というのは「其処に居る」事に対しての支払いになるから、俺達には支払いの義務があっても、俺達が其処に居る事を証明する書類が無い、つまりは支払う方法が無い。

それは逆に、俺達が此処に実在しても、居ない者として扱う事も出来るのだ。

徴税官とか居るんだったら、そこに居る人間に直接税金を払えってふんだくって行けば良いんだろうが、書類上では存在しない以上、徴税官の懐に入っても文句も言えないわけで。

俺達が何者かを証明出来なければ、下手をすれば奴隷にされる恐れもあるし、最悪、行政サービス(と言う程高尚なモノでは無いが)を受けられない、要は殺されようが盗まれようが相手にしてもらえない可能性もあるという事を念頭に入れておかないといけない。

「はい、住居税ですね、少額ではありますが。住居の持ち主が払う事になりますね。こういった税金は領主様次第ですね。裕福な領地はそれ程多くの取立ては有りませんが、酷い所は町の出入りだけでなく、川に架かった橋を使うにも税金を取られる事もあります。」

レミーナさんの説明聞きながらも、考えれば考えるほど自分達の立場が酷く不安定で頼りない状態にあることを認識させられる。

「俺達の状態は、貧民窟に巣食ってる奴らと大差が無い?」

そう聞いた俺に対する答えは是。

「貧民窟の住人は傭兵と同じように、暴力で不干渉を勝ち取るか、或いは奴隷にする価値すらも無いゴミと思わせるか、ですね。健康でそれなりに資産を持っているというのは・・・。因みに、奴隷には私有財産は公式に持てませんよ?自身が私有財産なんですから。服など、主人が預けた、という形では有り得ますが。」

おおう、何つー状態なんだよ、これ。

まぁ、何と言うか最悪を考えたらもっとマシな解決策は有るのは分かるんだけどさぁ。

レミーナもそれには気付いてるんだろうけどな。

気付いてる娘と気付いてない娘に差が有るな、青い顔して深刻な様子なのも居るし、ちょっと心配してるだけな感じのも居る。

俺の所の3人は其れ程に心配はしていないらしい。

撫でたりギュ―ッと抱き締めたりすると大喜びだし。


レミーナさんの説明はまだ続く。

「借りた時の届出の他は借り手が変わらない限り新たに届ける必要は有りません。その代わり何か有れば責任は借主が負う事になりますね。幾つもの部屋を借りて又貸しする所も有ります。」

此方に微笑んで、訳有りなヒトに手数料を上乗せして家賃を取るんです、と付け加えて。

なるほど、そういう抜け穴も有るのね。

まさに俺達の事なんだがな、それ。

というか、俺達が借りようとしたらそうなる、というところなんだが、ウサギちゃんを引き連れた俺達に死角は無い!

あ、違法滞在の通報だけは勘弁してください、強制送還じゃなくて奴隷落ちとかマジ助けてつかぁさい。

まぁ売家、借家なんかの、この手の歪な規則ってのは、大抵が行政側と規制対象の綱引きだの押し合いだのの結果な訳だ。

どうせ売家よりも借家の方が儲かると見た商人が、賄賂なり何なりを駆使して捻じ曲げたのが真相なんじゃねぇのかね?

そのおかげで俺達が何の苦労も無く家を借りられるんだから有り難い事だと思っておくかね。


「とりあえずは家一軒、25人程が住める所を探して欲しい。売家か借家かは、先ず問わない。金は出すが、契約は誰かに代わってやって貰いたい。」

そう言ってウサギちゃん達を見回すと、

「この条件で問題が無ければ、お前らの愛の巣が持てるんだがな?」

そう言う俺の言葉を聞いて、ウサギちゃんの顔に愛らしい笑みが広がっていく。

俺も押し倒さんばかりに抱き付いて来る3人を抱き締め返してやる。


ま、『所有者無き奴隷』の問題だけ何とかすれば、安心して拠点を持てるって事だよな。

※アルミサッシ≒サルミアッキ

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